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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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65/128

11-6

 あほみたいな出来事から翌日。その放課後。

 二人は二番街の北にある森の入り口にいた。さらに周囲には決闘を見に来た蛇島、鼠川を始め、ウォーロックのパートナーを務める四人の少女が見に来ていた。


「さて陸島、懺悔の用意はできているか?」


「よくあれだけの攻撃を食らって立っていられるな」


 陸島は彼の図太さとしぶとさを皮肉交じりに称賛する。


「へっ。そんなシニカルトークも今日の内だぜ。昨日はお前の姑息な手にボコボコにされたが、今日はそうはいかねえぜ!」


――自爆しただけじゃん


 決闘を見に来た鼠川の声なきツッコミはきっと周囲の賛同を得られただろう。


「昨日のあれは自爆でしょ」


「流山さん。言わなくてもみんな共感してるから」


「そーですね!ドアホウの言う事なんて所詮ドアホウです」


 水属性コンビの意見に周囲はうんうんと首を縦に振る。


「き、昨日のアレはいいから!それよりこれはどうなってるの?」


 慌てふためく赤い頬の相原は周囲を見る。

 決闘というからには舞台はいつも通りの決闘場……と思われたのだが。


「確かにそうだな。決闘というならあのコロッセオのような場所で繰り広げられるのではないのかね?」


 蛇島の疑問に答えるのは燦央院。


「ああ、それでしたら違うこともありますわ。それこそ今日のように森だったり、島の外でも可能ではあります。事前に申請さえして、決闘する両者が合意すればこのような形の戦いもあり得ますわ」


「そうだったのか……しかし鴉田のヤツ、いきなり陸島と戦うとは。正気か?」


「もちろんだともムッツリ坊や!」


「誰がむっつりだこら」


「となるとオープンスケベメガネになりますがよろしいでしょうか?」


「よろしくないわ」


「あーはいはい。くだらない会話はそこまでにしてくださる?」


 幼稚な喧嘩を燦央院が呆れ気味に抑える。

 まるでつまらない作品から目を背けるがごとく。


「で、勝てるのお前?」


 外崎が鴉田に問いかける。

 問いかけた時の表情は真剣にものを見る目である。


「ああ、やれることはやったさ。後は戦うだけだ」


「それでは両者ともに準備はよろしいでしょうか?」


 審判を務める女性が陸島と鴉田の前に現れる。


「構わん」


「いいぜ」


「それでは両者、指定の位置に向かってください」


 審判の指示で二人はそれぞれ他の審判の女性に連れられて森の中に入っていく。


「ええっと……今回の決闘ってどうなってるの?」


「あ、シオンちゃんはまだ目を通してなかったようですね。これですよ」


 流山は自分のスマートフォンを操作して画面を相原に見せる。


「これは……」


 相原は今回の決闘に関するルールについて確認を取った。

場所:島の北部にある森林の一部を使用した戦闘エリア

終了条件:通常の決闘と同じく、片方が戦闘不能とみなされた場合に終了とする

武具の持ち込みについて:自由とする。ただし魔術道具以外の銃火器などの通常兵装はなしとする


「これって場所が違うだけで他はいつも通りってことなのかな?」


「そーみたいですよ」


「それじゃあ皆さん、決闘に関しては決闘場のモニターから見れますのでそちらからお願いします」


 審判の女性の一人が周囲に声をかける。


「じゃあ行きましょ。あいつらもこっちがついた頃には決闘が始まっているはずです」


「……うん」


 相原は心臓の鼓動が強くなる中で陸島たちが入り込んでいった森林を見る。

 既に二人は奥の方へ進んでしまい、人影はもう見えずにいた。


(大丈夫かな……)


 ぬぐえぬ不安が体に絡みつく。

 ウォーロックとウォーロックのぶつかり合い。どんな状況が生まれるのか相原には想像もつかなかった。何より陸島の身をあれだけ冷たくされても、心配になっていた。







「こちらでしばらく待機をお願いします」


「ああわかった」


 森林エリアの一部にて審判の女性に案内されて陸島はその場所で待機していた。

 辺りには陸島の背を軽く超える木々が生い茂っており、道なき道のそこは訪れるものを迷い込ませるには十分な不変たる光景が広がっている。

 女性はスマートフォンを取り出して他の仲間に連絡した後、陸島の方を向く。


「戦闘開始の合図はスマートフォンに連絡が入ってからです。それまではこちらで待機をお願いします」


「はい」


「質問や不明点などはございますか?」


「であれば聞きたいのですが、今回の決闘は模擬戦と聞いております。対象の敵を見つけ出して撃破でよいのですね?」


「はい」


「ならいいです」


「それとエリア外に出ようとするとスマートフォンが鳴りますのでご了承ください」


「わかりました」


「では健闘をお祈りします」


 女性は陸島に丁寧なお辞儀をしてその場を去っていった。

 陸島はその間に持っていた刀を少し抜いて刃の具合を確認し、今回の決闘について思案を巡らせる。


(ふむ……あの男。俺に決闘を申し込んだということは何か企みがあるな。小細工で何であれ仕掛けるなら仕掛ければいい。人質でないということは確かだろう。それならば今頃警告が来てるはず。そうでないのなら何かを掴んだということになる。昨日のあの下らん騒動と言い……相手は俺と同じウォーロックだ。チビやお嬢様とはわけが違う。手練れとして戦うべきだろう)


 刀を鞘に納め、時が来るのを待つ。

 森の木々は陸島に何も語らず、風に揺れてただ葉を揺らして自らの新緑さをアピールするばかり。


「……来たか!」


 スマートフォンが震えて合図が来たのを陸島は確認する。

 今回の決闘においてスマートフォンにはある機能が追加されている。それは敵との距離を教えてくれる機能。スマートフォンの画面に映った情報には今回の戦闘エリアのマップデータと敵の座標が表示される。


(敵の位置は……ここから北部の山のエリア)


(なるほど。高いところから仕掛けるつもりか。この森の木々では高い個所からならある程度視認が効くと見たか。だが――)


 陸島は周囲を見渡し、木々の密度の深い場所を見つける。


「こういう場所からなら視認から外れるだろう」


 木の張る根に足を取られぬように彼はその場所へと踏み込む。

 先ほどより足場は悪く、凸凹とした地面にぬかるみが陸島の足をじっくりと掴もうとする。


「さて、敵はどう動くかまずはしばらく待機するか、それともこういう視認性の悪い場所を渡っていくか……いやしかし慎重に動く意味はあるのか?突っ切っても問題ないと思うが相手はあのバカだ。それがこうも易々と攻略できる戦いを仕掛けてくるか」


 作戦を練る陸島。

 これまでの戦いとは違う要求が彼に突き付けられる。耳が森に聞きなれぬ音が拾う。


「ん?」


 ふと上を見る。

 一機のドローンが陸島の視界に入る。


「あれは……?」


 黒いフレームに四枚のプロペラ、望遠レンズを搭載したその機械は陸島をレンズという目でじっと見ていた。


(ドローンだと……?そういえば使うとヤツが言っていたがどうする気だ?ドローン経由で魔術を使うとでもいうのか?いやそんな事はできるはずない。いや今は身を隠さないと――)


 身を隠そうと深いエリアに潜り込もうとしたその瞬間。陸島の前に閃光が走る。


「な――」


 轟音が響き、辺りの木々を吹き飛ばす。


 咄嗟に構えるも、陸島はその衝撃を抑えるには至らず――


「うおおぉぉぉっ!?」


 豪快に後ろに吹き飛び、無様に転がる。

 這いつくばる姿勢で辺りを見る。


「な……なんだ今のは?」


 周囲の木々は折れ、爆発の中心は抉れて焦げた香りで辺りを包む。

 爆発が起きたと陸島は理解した。


――何が起きた!?どうなっている!?


 冷静さを失った陸島には立ち上がって周囲を見渡してもなお、その全貌を理解できなかった。

 一方で森林エリアの高所にて一人の男がしてやったという顔を作る。


「へへ……どうだ見たかい陸島さんよぉ!!」


 そばに置いたパソコンの画面の中、焦りを見せる見渡し方をする陸島。それを見る鴉田春一のには両手黒く輝く長い銃身が握られていた。


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