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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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11-1 ウォーロックVSウォーロック(前編)

「……なんだこりゃ」


 世間が休日の朝、陸島鉄明は玉之江島に戻っていた。

 朝早くに島に向かう潜水艇に乗り、橘樹家の使用人である木下とは別の時間に向かうようになっていた。なお、そうなった理由は木下が橘樹家で報告書の作成などの仕事を橘樹家の現当主である橘樹龍弦の代わりに行うためである。

 さて、陸島はと言うと今現在、男子寮の前にいた。

 そしてその近くに見慣れる建物がいつの間にか建てられていたのだ。


(いつの間にこんな物が……?こりゃプレハブ……いやコンテナってのか?)


 男子寮近くに立っていたのは一件のプレハブ小屋。

 少しぐるりと見て分かったのは、高さは二メートル以上で奥行きは三メートルほど。幅は陸島が十歩以上歩いたので大きく見積もって八メートル前後と推定する。


「ドアに何か書いてあるぞ」


――鴉田万能研究所(仮)


「……バカの根城か?」


「バカの根城とは失礼な!」


 ドーンと勢いよくドアが開かれ、そこにはグレーの作業用つなぎを着た鴉田の姿が。

 陸島の姿を見て鴉田は目を見開く。


「おや?陸島君じゃございませんか。いつ戻られたのですか?」


「なんだその口調は。というかなんだこの小屋。いつの間に建てた?」


「玉之江島のある人物にお願いして建ててもらったのさ。どうよコレ?」


 羨ましいだろ?と鴉田の表情が語る。

 馬鹿馬鹿しい、と陸島の表情が語る。


「それでこんなの立ててどうする気だ?」


「いやあ持ちたかったのよ。秘密基地っての」


「子供かお前は」


「十五だからまだ子供だぜ」


 間違ってはいない。


「……そうかい」


「あー待て待て。せっかくだから一つ質問だ」


「なんだ」


「お前は決闘って挑まれたらどう考える?」


 鴉田から投げられた質問に陸島の思考は止まる。

 質問の意図が呑み込めずにいたのだ。しばらくして陸島は口を開く。


「どういう意味だ?」


「どうも何も……俺が将来決闘挑まれたらさ、どうすべきかなって。例えば蛇島当たりに。お前だったら戦うって即答するか?条件とか気にしないでさ」


「条件ってのはなんだ?『勝ったら潔く死ね』とか『魔法使うな』とかか?」


「いやそんなんじゃなくて例えば持ち込み自由ってあるだろ?俺が決闘挑まれて相手が魔女をもう一人連れてこられたらきついわけよ。要は二対一でも戦えるかってことで……」


「くだらん。相手の条件はある程度聞いてやるさ」


「マジで?お前の事だから魔法使うなって相手に要求しそうなんだが?」


「なんでそうなる……」


 陸島は呆れていた。

 目の前のベラベラとしゃべるアホに。


「で、それだけか?」


「うんそれだけ」


「そうかい」


 陸島は彼に背を向けて男子寮に向かった。

 その間に鴉田はプレハブ小屋に戻る。


「なるほどなるほど……これなら外崎さんの言うようになるかもな」


 にやりと笑った。

 そして小屋の中心には作業机の上に置かれた魔力を込められた結晶がきらりと輝き、その周囲にはパソコンや電子部品、金属パーツなどが壁や壁近くに設置された引き出しに収納されていた。







「あ、陸島君?おはよう」


 ふああとあくびを放ちながら、寝間着姿のままでラウンジに出てきたのは鼠川。

 眠気の残る顔で陸島に挨拶をする。


「あらおはよう陸島君。鼠川もどうやらここでの生活に慣れてきたみたいね」


 キッチンの方から三田川が笑顔で挨拶してくる。


「おはようございます」


 陸島は無表情で返す。


「ああ、そうそう――」


 三田川はキッチンから朝食を並べつつ陸島に質問を投げる。

 鬼の形相で。


「布塚のヤツは来てないの?」


「ヒィッ!!」


 眠気が月まで吹っ飛ばされた鼠川。

 普段の和やかな態度と笑顔から一転、顔つきは恐ろしく、ナイフは逆手に持っていたものだからアサシンが迎えに来たのかと思うくらいの状況がそこにあったんすよ。


「来てませんが……なんでも事後処理だの次の任務がどうこうとか」


 陸島は席について並んでいた料理に両手を合わせる。

 この日は白米に味噌汁、焼き鮭にたくあんだった。


「そうなの……ニゲヤガッタナアノヤロウ」


「あわわわわ……」


 終始スマホのバイブのように恐れ震える鼠川。

 


「で、ケガの具合はどうなの?」


 鬼の形相から一転、今度は心配そうな目で陸島を見る。


「問題ありません。あれだけ休まされれば大丈夫です」


「休まされたって……?」


 言い方に疑問を覚えたのか、鼠川は質問した。


「任務の最中に頭にがれきの破片が当たった。んでその場に倒れた。出血とかはしてないけど念のため検査して来いって木下と布塚さんに病院にぶち込まれた」


「あ、ああそうだったんだ……ってことはもう大丈夫なの?」


「ああ。魔法も何も問題ない」


 話し終えると、陸島は出された料理を口に運びだした。


(じゃあ任務中に大きなけがをしたとか失敗したとかじゃないんだ。でもガレキって何だろう?どこでどういう任務受けたんだろう?)


 鼠川は食事の合間に更なる疑問が浮かんでいた。

 その間にラウンジに鴉田がやってくる。


「あ、おはよーございます三田川さん!」


「おはよう……ってそのつなぎどうしたの?」


「これですか?作業用にって持って来たんですよ」


「へえ。いいじゃない。似合ってるわよ。でもちょっと匂うわね。汗とかで」


「そうっすね。このままだとアレなんで、風呂入ってからメシにしますんで。そいじゃ」


 入ったかと思えば今度は風呂に入った後の着替え一式を取りに二階へと向かった。


(何かとせわしないやつだ)


 鴉田の行動を見つつ、陸島は焼き鮭を丁寧にほぐす。


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