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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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57/107

10-3

「何でってそりゃあ探しものさ。相原さんも放課後からずっとこっちにいたの?」


「え?……あ」


 図書館の時計の針は既に五時を回っていた。

 窓の外は六月半ばのせいか、まだ明るかった。


「図書委員の方ですよね?」


 鴉田は干木の方を向く。彼女の胸元には図書委員のバッジが付けられていた。


「え?あ、はい。探し物ですか?」


「はい。魔術道具に関する本を探しているのですが……どの辺にあります?」


「であればあっちに……案内します。どんな本を探しています?」


「そうですね。駆け出しの魔術師にふさわしい書物を」


「わかりました。では案内しますね」


 鴉田は干木に案内されて魔術道具に関する本が収められているエリアに向かった。

 干木はその前に相原にぺこりと頭を下げていた。


「鴉田君……どうするんだろ?」


 相原紫苑には鴉田は何を考えているのかわからなかった。

 魔術道具を手に入れる。それはわかっていたがどんな道具を手にしようとしているのかまでは見えなかった。


(中学の時に学んだけど、魔術道具というのはある程度成績や成果がないと取引してくれない。今の鴉田君が手に入れられるとしても杖とか結晶、後は……護符に宝石くらいかな?でもそれらを手に入れたとして鴉田君はどうするんだろう?)


 しばらくそれについて考えたが答えは見えず、相原は借りていた本をもとの位置に戻す。

 そして帰りの準備をする。


(あれ?受付でも本探しは手伝ってくれるはずだけど……?)


 ふとそんな疑問が浮かぶ。


 そして彼女は入り口近くに設置された受付まで向かう。すると――


「どうですか、この新作。主人公の欲望が如実に、鮮明に表れててすばらしいでしょ?」


「ええ本当ね。さすが鎖野さん。よくもこれだけの新作から一番を選べるのね。」


「ウフフフフ。それほどでも」


「フフフフ……」


 鎖野と受付の女性図書委員が新作のBL本で盛り上がっていました。


「……そういう事ね」


 溢れる欲望の渦に相原は引きながらも彼女は図書館を後にする。

 その間、受付からは時折歓喜の声が漏れていた。

 余談ですが皆さん、図書館ではお静かにお願いします。







「なんだその本の山?」


「これか?魔術道具に関する資料さ」


 夜。男子寮にて。

 鴉田が借りてきた本の山を不思議そうに見る蛇島。本はいずれも魔術道具に関する記述のあるものばかりである。


「魔術道具も色々あってな。杖にしろ、護符にしろ。だからその中で使えそうなモノを探してんのさ」


 鴉田は本をめくりつつ、その横に置かれていたノートPCにカタカタと文字を打ち込んでいく。


「パソコンは何に使うんだ?」


「これか?メモさ。気になった道具あったらこうやってリストにどの本の何の道具かを記録してその中で使えるのをさらに絞るのさ」


「……スマホでよくないか?」


「お、なんだ?現代っ子マウントかこんにゃろー」


「いや君も現代っ子だぞ」


 鴉田春一、蛇島光。

 ともに思春期真っ盛りの十五歳です。


「それで何か見つかったのか?」


「さあな。だが時間がない。早くしないとばーさんに呆れられちまうしな」


「そういえば魔術の方はどうなったんだ?」


「ほい」


 鴉田は右手で瞬時に電気の渦を作り起こす。

 渦は安定しており、一定のリズムを刻んでいた。


「おお……両手でも同じなんだよな?」


「もちろん。課題だった五分もあっという間にクリアできそうさ。だから次を見ないとな」


「早くないか?」


 魔術の修行のノルマ達成にかなり近づいている。

 それは理解できた蛇島だったが流石に次のステップに進むには早いのではないかと不安であった。それに対し、鴉田はこう述べる。


「確かにそうかもしれないな。焦ってるともいえる。とはいえ時間がないのは確かだ。でも目的の為に逆算して分かったがこうでもしないと間に合わなくてよ。だから今できることをあれやこれや進めてるのさ」


「いったい何を考えてる?」


「それはだな……」


 少し間を置いて鴉田は口を開く。


「秘密だ」


 不敵に笑う鴉田にこれ以上何を言っても無駄だと理解した蛇島。


「そうか。ギブアップしてもいいがその分ならまだ続きそうだな」


「ばかいえ。夏休み前までにはかっこよくアイツに勝って、それで夏休みの予定を女の子と遊ぶ予定で埋め尽くす俺の計画はそう簡単には折れないさ」


「そんな不純な理由で戦うのかね君は?」


「不純とは何だね君。さては自分には燦央院さんがいるからって余裕ぶっこいているな?」


「違うわ!彼女とはそういう関係にはならんわ!!」


「お、言ったな?なら俺が彼女とひと夏の――」


「いいから修行しろ。間に合わなくなってもしらんぞ」


「ウス」


 修羅のごとき蛇島の表情の前に、鴉田は再び自己研磨に戻る。

 そして彼は黙々と修行を続けた。陸島が出発してから三日目。彼の電気の制御はかなり上達していた。驚異的な成長速度にパートナーの外崎も驚いてたようだが彼女は終始ポーカーフェイスを貫いていた。鴉田は制御をさらに上達せしめんとする傍らでパソコンに魔術書から読み取った情報を入力、整理していた。


――集めた情報を精査して結んでいくんだ。そうすれば今の自分がどんな魔術道具を手に入れるべきかが見えてくるはずだ


 さらにこの時彼は裏で一つの計画を密かに進めていた。

 そうして彼は自らの求めるものの輪郭を少しずつ露わにしていった。

 その日の夕方。一つの連絡が入る。


「陸島君、任務で負傷したから一週間は不在ですって」


「え!?」


 男子寮にて三田川より受けた連絡に男子三人は固まる。


(あの陸島君が負傷!?大丈夫かなあ。組織の魔女ってそんなに手ごわいのか……?)


 鼠川は陸島を心配しつつ、組織の魔女の強さを改めて認識した。


(陸島のヤツ、大丈夫か?これに懲りたら一人で行こうなんて考えるなよ)


 蛇島は彼の身を案じつつ、彼を叱りたい気分だった。


「で、原因は?」


 それはともかくとして怪我した理由を聞こうとしたのが鴉田。


「心配じゃないの!?」


 とツッコミを入れるのは鼠川。


「そりゃあまあ。でもアイツが怪我するなんて考えにくい。そりゃあ相手は組織だ。多分相手が強かったというのもある。でもあいつがもし弱点を突かれたとしたら?」


「弱点?」


「そう、弱点。アイツにとって魔術としてか何らかの弱点があるのなら俺はそれを全力でそこをつつくだけさケケケケケ!」


――うわぁ


 ドン引き待ったなし!

 正直鼠川はその時の邪悪な笑みを浮かべる鴉田と友達にはなりたくなかった。


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