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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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55/102

10-1 戦う理由

「今更なんだけど」


「ん?」


 陸島が島を出て翌日の昼休み。鴉田と鼠川は校内の食堂にて食事を取っていた。

 鴉田はB定食のから揚げセット。鼠川は醤油ラーメン。


「なんで鴉田君は陸島君と戦おうとしているの?」


「え?そりゃあ理由があるからに決まってんだろ。しかも三つあるぞ」


「というと?」


 から揚げを一つ口に運び、呑み込んでから鴉田は戦う理由を語る。


「一つ目。あいつがモテているからだ」


「いきなりしょうもないね」


「黙れ。女装させたら人気ランキング一位」


「ははは。御冗談を」


「でだ。相原さんいるだろ?」


「うん」


「あの子があれだけ気にかけているのに陸島はツンとしてる。これだけならまだいい。最近じゃアイツが影で人気で始めたって話だ」


 人気が出始めた理由に心当たりがなく、鼠川は何か信じられないものを見る目をする。


「そんなことある?」


「ある。クールさが人気らしい。マジでざけんなカウンタープラスワンよ」


「はあ……で、残り二つは?」


「二つ目は俺より顔が良いということだ。なんだあのオールバックが似合う顔。腹立つわ。またカウンターが一つ乗ったぞ」


「ええ……そんな理由で?」


「そうだよ」


 ラーメンを口にしながらこいつは何を言ってるんだと内心突っ込まずにいられなかった。

 この間、鴉田はずっと真剣な顔だった。


「今の話聞いてると、三つめはまともだと期待していいんだよね」


「ああ、三つめか?……なんだっけ?」


「おい」


 鼠川の口からキレ気味の口調という貴重なシーンが出るくらいにはぐだぐだだった。


「まあなんだ。あれだ。あいつには協調性が欠けちまってる。今はいいがいずれトラブル起こされても困る。ってかそれで俺らウォーロックに飛び火されたら嫌だ。過去の一件でトラウマでも抱えたんだろうがそれをどうにかしないといけない。そのためにも俺が決闘に勝ってあいつには相原さんには今までの非道を詫びさせつつ、俺のパシリとして毎日焼きそばパン買ってこさせる」


「もう好きにしたらいいんじゃないかな」


 飽きた。

 鼠川の意見としてはそれ以外なかった。


「あ、そうそう。友達として改めて忠告しておくよ?」


「なんだ?俺が相原さんを狙ってるからって寝取りは良くないってか?」


 ちなみに鴉田は相原を狙ってはいない。

 マジで。


「話を明後日の方向に飛ばすのはやめようよ。陸島君も実力つけたくて本気だから鴉田君もそれなりに実力つけないとだめだよ?」


「それなら心配いらねえぜ」


 鴉田は口の端を上げてにやりと笑う。


「今日の授業中ずっと考えてたのさ。あいつの首を落とせるブツをな。だがやはり修行が足りねえ。時間が足りねえ。ぐだぐだ言っても始まらねえ。まあ見てろ。俺のスーパーな魔術道具ができたらアイツなんぞイチコロよ」


「ごちそうさまでした。夢見はほどほどにね」


「ひどい!何がひどいって満面の笑みでそれ言うんですもん!!」


 学生らしい(?)昼は過ぎていく。


 くだらない会話で日々を過ごすのも青春の一環である。







「それは本当なのですか?」


「ええ。お嬢様は明後日にも登校されます」


 レストラン『AMAMI』にて蛇島と燦央院家の使用人である吉川が食事を終えてコーヒーを飲みつつ会話していた。


「怪我の方は大丈夫なのですか?」


「ええ。家の治療できる魔女達が集まってくれたおかげで思ったより早く退院できるようで。なによりお嬢様はまだ若いので」


「なるほど。ならば次の休み明けにはまた修行ができるとみていいのですね?学校での授業でもやっていますがとりあえずは安定させていられます」


「なるほど。ブリーフ一丁にはなっていないのなら安心です」


「いやだから僕はブリーフじゃなくて……それより――」


 蛇島は視線を吉川の隣の椅子の上に置かれた四角いカバンに向ける。

 レンガのように赤いカバンは吉川がこちらに来た時に持ち込んだもの。普段は持っていないので恐らく今日のために用意されたものと思われる。


「何を持ってきたのです?」


「ああ、これですか?これはですね……」


 吉川はそれをテーブルの上に置くと中身を開く。

 そこ収められていたのは縦方向に穴の開いた金色の円柱。円柱と言うには少し内側に曲線が入っており、よく見れば縦にも線が入っており、二つに割れる仕様だった。


「これは?籠手のように見えますけど……手を覆う部分がないというか」


「こちらは魔力制御の籠手ですね。お嬢様が家から取り寄せたものです」


「魔力制御……ですか?」


 蛇島はそれをじっと見つめる。


「はい。蛇島さんが魔力の制御に苦しんでいるとの事で家の者に連絡して制御する道具がないか確認したところ、こちらが届けられました。早速つけてみます?」


「え?ああ、じゃあ早速」


 金色のそれを手に取ると鴉田はその軽さに目を丸くする。


「ああ、その金は本物の金じゃないですよ?ご心配なく」


「は、はあ。これはどっちの腕に?」


「利き手の方がよいでしょう。お手伝いしますね」


 利き手の右手を伸ばす。


「あ、いけませんね」


「というと?」


「これ、服の下からでないと効力を発揮しないのですよ。というわけで脱いでください」


「ここで!?」


 念のため伝えておくと彼らがいるのはレストランです。

 公共の場です。


「お手伝いしましょうか?」


「結構です。お手洗いで装備しますので」


「まあ大胆な」


「いや手伝いは結構ですって!」


「あら?私がいつ一緒に行くと言いました?」


 吉川はにやついていた。


「すみませんこれやっぱいらないです」


「まあ、それじゃあお嬢様が泣きますわよ?お忙しい中、家の者に頭下げて取ってこさせたというのに」


「えー……」


――このメイド、めんどくさい


 こちらも終始ぐだついていた。

 なお籠手はお手洗いで一人で付けました。


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