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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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47/107

8-4

「俺に魔法を教えてくれ!!」


「いきなり何さ……っていうか道の真ん中で堂々と土下座すんな」


 一方、鴉田は和菓子屋近くのテーブルに座っていた外崎を見つけると彼女に魔法の修行に付き合ってほしいと懇願していた。周囲に人のいるさ中で堂々と土下座する鴉田に外崎は内心引いていた。


「あの、鴉田君。それは目立つというか…こっちまで恥ずかしくなるんだけど?」


「鼠川。お前も土下座しろ」


「なんで僕まで!?」


「魔法をもっと上手くなれるかもしれないんだ!やってみる価値ありますぜ!!」


「いやそれ君しか得しないじゃん。僕に何のメリットが!?」


「あーはいはい。とにかく立って」


「ありがとうございます外崎様」


 鴉田はすっと立ち上がる。


「それで……何があったのさ?」


 耳にさしていたイヤホンを外し、外崎は鴉田の方を向く。


「実はかくかくしかじかで――」


 数分後。

 外崎は鴉田の話を一通り聞いた。陸島を決闘で打ち負かすために強力な魔術道具を手に入れるという目的を。


「それで今すぐに稽古をつけてもらって欲しいと?」


「そうだ。一週間以内に何とかしたい」


「……はあ。わかった。じゃあ教科書を一通り読んでて。明日から一対一でやってあげる」


「まじで!?ありがとうございます!!」


「ただし条件を付ける」


 外崎は真剣な目で鴉田を見る。


「なんだ一体?俺にできることがあれば何でもやるさ!」


「一週間後、ばーさんに認められなかったら……何も道具を買えなかったら陸島との決闘は諦めな」


「え?」


「陸島は強い。元からの戦闘センスもあるけど魔術師としての腕も高い。あんたのやる気を確かめる意味がある。はったりかどうか確かめさせてもらう」


「いいぜ。俺の本気、しかと目に焼き付けさせてやるよ!」


 鴉田は笑って見せた。

 外崎はやれやれという顔で見ていた。


(大丈夫かなあ……まあウォーロックなら何とかなるのかも?)


 鼠川は鴉田を心配そうな目で見ていた。

 外崎は鴉田を疑う目で見ていた。







 その日の夜。

 男子寮のラウンジにて。


「ってことがあったんだ」


「へえ。あの鴉田がね」


 鼠川と鴉田は食事の中で今日の出来事を語っていた。


「燦央院さんはどう?具合は?」


「ああ、近いうちに退院できるそうだ。そしたらまた修行だと言ってた。その間はひたすら教科書を読んでおけだそうで」


「教科書ねえ」


 鼠川は老婆に言われたことを思い出した。

 駆け出しの魔術師に必要なのは教科書を読み漁ることだと。


「基本が大事ってことなのかな?」


「恐らくはな。ところで鴉田はどこ行った?」


「それがカップ麺ぱぱっと食べたら自分の部屋に籠っちゃった。なにかしようとしてたみたいだけど……」


「うーむ……」


 蛇島は考え込む。


「何か気になったの?」


「鼠川、鴉田は陸島に勝てると思うか?」


「え?ああ……うーん」


 蛇島の質問に鼠川も考え込む。


「そうだなあ……『すごい魔術道具』っていうのがあれば勝機はあるとは思うよ?でもあのおばあさんがそれを売ってくれるかわからないし……それに売ってくれるにしろ、いくらかかるのやら」


「まあ鴉田には微塵も期待してはいないが……というより決闘で彼を打ち負かすのは僕だ」


「修行、上手くいくと良いね」


「ああ」


 そして二人はまた黙々と食事を続けた。


「あれ?そういえば陸島君は?」


「……どこだろうか?」


 二人は不思議に思った。

 時刻は八時を回ろうとしていた。







 一方その頃。

 男子寮裏手の山中にて。


「あんたがウォーロックの陸島かい?」


 山道の半ばにある休憩所。

 陸島がそこで修行の休憩を取っている最中、一人のスーツを着た女性が話しかけてきた。


「誰だ?」


「あたしは青釜っていうクランから来た矢野。後輩が世話になったみたいでね」


「後輩?」


 陸島には心当たりはなかった。

 矢野の後ろには上田、中本、下村と三人の女生徒が陸島をにやけた目で見ていた。

 上田が前に出て陸島に話しかける。


「燦央院を倒してさぞ鼻が高いでしょうね?」


「どうだろうな」


「ウォーロックというのは成長が早くてうらやましいですわね」


「勉強してるだけだ」


「随分鼻に着く態度ですわね」


「ああすまんな。周囲の殺気が随分濃いもんでな」


「な……」


 陸島は気づいていた。

 周囲を囲う者たちの気配に。


「で、何の用だ?勧誘か?」


「そんなところだ」


「ちょっと矢野さん。本気なんですか?」


「三人は下がってな」


 矢野に言われるがまま、三人は後ろに下がる。

 陸島は引き続き周囲を警戒しつつ、刀を構える。


「燦央院百合香を決闘で倒した魔術師……是非欲しい逸材なのさ。どうだい?悪いようにはしないさ」


「断ったら?」


 その時、水流が陸島の持っていた刀を襲い、刀は宙に舞い上がって陸島の後ろに落ちる。

 矢野は既に杖を構えていた。


「そうだねえ……ちょっと痛い目見てもらおうかなってさ」


「群れで行動するってのは便利なもんだな。だから裏切りに気付かない」


「何?」


 矢野は周囲を見渡す。

 裏切りという言葉が妙に胸をざわつかせる。


(どういうことだ……?裏切りだと?)


 不意打ちに気を配るうちに心音が高鳴る。

 しかしそんな気配は見えなかった。


「そぉら!」


 陸島は思いっきり地面に蹴りを魔力を込めて叩き込んだ。

 周囲に強烈な揺れが走る。


「うわぁっ!?」


「きゃあっ!」


 陸島の周囲を囲っていた青釜の眷属、魔女はその揺れでバランスを崩すものもいればしゃがんでやり過ごすものもいた。


(周囲に八人。正面に四人か。そうなると――)


 地面に落ちていた刀を拾い上げ、転んでいた一人の魔女に向かって抜刀して斬りかかる。


「ひとつ!!」


「ひぃっ!」


 魔女はどうにもできないと悟ったのか、目をつむった。

 斬撃が彼女を襲うことはなかった。


「……え?」


 陸島と魔女の間には老婆が立っていた。


「全く……貴方達は」


 そこにいたのは陸島達の通う学校の校長、佐倉京香。

 陸島の斬撃を校長は自身の持っていた杖で防いでいた。

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