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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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45/123

8-2

「あの……お前、何をしにきたんですか?」


 あっけにとられたのか流山も突っ込まずにはいられなかった。


「だから話は聞かせてもらったといったのさ。そしていい考えもな!」


「はあ……いちおー聞きますけどそれはまともな考えですよね?」


「おうともよ!うまくいけば陸島のハナを明かして俺の前にひざを折り、相原さんに今までの非礼を詫びさせることだって夢じゃない!!」


「そうかなあ……」


 鼠川は自信満々の鴉田に疑惑の目線を向ける。

 流山も首を縦に振ってその考えを否定する。


「鼠川君の言うとおりですよ。『流山椿に今までの非道を詫びさせて土下座させる』っていう内容がないじゃないですか!」


「そこ!?」


 鼠川、流山の強欲さに引く。


「それでだ、作戦ってのはいたって単純だ。魔術道具を手に入れることだ」


「魔術道具……?」


 鼠川はその言葉に眉を潜めた。


「ああ、魔術師見習いの俺らにも杖配られたろ?あれがそうだ。だが世の中にはいろんな魔術道具が秘密裏にあるって話だ。そこでだ。俺はその中に強力な魔術道具が……つまり陸島を一撃で仕留める可能性のある道具を見つけようってハラなのさ」


「な……なるほど」


 単純明快。

 鴉田の提案のシンプルさに鼠川は固まる。


「ああ……そーですよね。何も知らないからそう言えるんです」


「え?」


 流山はやれやれといった感じだった。


「確かに鴉田君の提案はありっちゃありですよ?でもそれはできません」


「何故だ!?ニンジャガール!」


「に、ニンジャガールって……えっとですね。一般的に魔術道具というのはある程度、信頼とか実力がないと取引してもらえないんですよ。危険なものもありますから。島のあちらこちらにも道具を取り扱っている店はあります。でも私たちみたいな駆け出しには杖とか簡易な呪文書関係しか売ってもらえないでしょうね」


「……仕方ない。プランBだ」


「切り替え早!!っていうかそれ言いたかっただけじゃないよね?!」


「まあそう言うな鼠川。もう一つもそんな難しいことじゃない」


 鴉田のプランBに二人は怪しいものを見る目で返事をする。


「俺が決闘で倒す。決闘前夜に奴の食事に下剤を使って――」


「鼠川君。帰りましょう」


「うん。鴉田君も今はいいよ。相原さんもあまり気にしないで――」


 鼠川がふと相原のいる位置に視線を移す。

 そこに彼女はいなかった。


「……あれ?相原さん?」


「シオンちゃん?……帰っちゃったのかな?この馬鹿の提案が酷すぎて」


「いや、最初の提案時にこっちに挨拶して去っていったぞ?お前らの方からじゃ見えんかったか」


 どんがらがっしゃーん。


 水属性コンビ、盛大にこける。


「先に言えこのばかー!」


「ギャース!!」


 流山、怒りの鉄拳。

 空手由来のものではない普通のパンチだ!






「いやあ昨日はひどい目にあったぜ」


「うん。で、僕は何で連れ出されたの?」


 決闘のあった週の翌日。

 その日は学校が半日で終わり、鴉田は鼠川を連れて四番街にいた。


「いやーそれがさー。最初はパートナーの外崎さんにお願いしようとしたのよ。そしたら今日は無理って言われちゃって。蛇島は燦央院さんのところに見舞いで陸島は論外。んで白羽の矢が指したのがお前」


「白羽の矢の使い方おかしくない?」


「気のせいだ」


 四番街。

 中心にアーケード街がありその周囲にもいろんな店が構えられているエリア。五番街で仕事をする者たちや住む者たち向けに料理店、服屋などが並ぶ。

 二人はアーケード街の入り口に立ち、辺りを見渡す。


「ねえ、本当に魔術道具の店がこんなところにあるの?」


「ああ、鎖野さんが言ってた。もし力を求めるのなら、アーケード街を探してみなさいって」


「鎖野さんが?意外だね」


「ああ、俺も驚いた。できれば蛇島君ともっと仲良くしてほしいってすごいにこやかに言われたけど多分俺には無理だ」


「はあ……」


 鎖野からの情報をもとに二人はアーケード街に足を踏み入れる。

 和菓子屋、串焼き、揚げ物専門店、古着屋……。

 にぎわうその様子からしてとても魔術道具のあるお店があるようには見えなかった。


「本当にあるの?ファンタジー小説ならもう不思議なペットとかほうきとか取り扱っているお店が出てそうだけど」


「ああ、一体どこに――」


 鴉田が辺りを見渡す。すると彼の首が止まる。


「……どうしたの?」


「あれだ。そういうことか」


 鴉田の視線の先には一つのビルが。そのビルの三階にある二川不動産を視界に捉えていた。


「不動産屋……?なんで?」


「いいから行くぞ」


 迷いのない足取りで鴉田はビルの三階に向かう。

 鼠川も困惑しながらも鴉田についていく。


「あらいらっしゃい……おや?貴方たちは……?」


「どうもおばあさん。こんにちは。今日はいい天気ですね」


 鴉田がドアを開いた先には一人の老婆がいた。

 室内は壁にマンションや一軒家の情報が張られており、部屋の隅には老婆が使っているだろう作業机が設置されている。中央にあるテーブルとそれをはさむように設置されたソファーの片方に老婆は座っていた。


「おやおや……もしかして噂のウォーロックかい?しかも二人か?」


「ええ。そうです」


「探しもんかい?ここは不動産屋だよ?お菓子やゲームは取り扱ってなくてねえ」


「知ってますよ。それより一つ聞きたいことがあるんですが」


 鴉田はソファーに座る。

 鼠川もその隣に座る。


「どうして不動産屋がここにあるんです?」


「それかい?ああ、『島の不動産は基本市役所がすべて管理している』って言いたいんだろ?わかるさ。家が扱ってるのはその範囲外でね。例えば燦央院家が売りに出してる家……本土とかにあるね。そういう個々の奴を仲介して取引しているのさ」


 本土という単語が出た時、鼠川は疑問に思った。


「あれ?本土ってことは島の外で……じゃあ島の中にある物件はここにないってことですか?」


「いや、あるにはあるよ。呪われた家とかね」


「の、呪われた家!?」


「例えばの話さ。アタシもこの仕事四十年以上やってるけどそういうのはざらでね。さ、今日は帰んな。高校生には家なんて買えないでしょうに」


「いいや。俺は別のもの買いに来たんですよ」


「なんだって?うちで何買おうってんだい?」


「そこの作業机にある売り物の魔術道具をね」


 鴉田はにやりと笑って室内の隅にある机の方を見る。


「え!?そんな、しまったはずじゃ!?」


「へえ。あるんですね。魔術道具」


 老婆はその時はっとなった。

 カマをかけられたのだ。


「……こいつ!」


 老婆はしてやられたという顔をしていた。

 鴉田はしてやったという顔をしていた。

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