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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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インターミッション-2

 校長の意見に教頭の荒川は頷く。


「ですな。無理にとは言いません。それに平穏な世界で魔術師として生きていくというのも悪くはない。むしろ良いことかと」


「でしょ?死んでしまうよりはましですから。それでは次をお願いします」


「はい。三人目は蛇島光。眼鏡をかけ、正義感のある顔つきですねえ」


 スクリーンには蛇島の写真と説明が写る。


 その際に校長が噴き出した。まるで何か変なものを見たかのように。


「ど、どうしました校長先生?」


「ああ、いいえ。気にしないでください」


 心配する教頭をよそに校長は体勢を立て直す。


「ええっと。説明をさせていただくと後に紹介する鴉田君と同期で順番としてはこっちが先でしたが入学は同時なんですよね。特徴としては真面目なところでしょうか。初日の自己紹介で大分いじられていましたが、それはまあそれとして勉学に関しては成績優秀で掃除なども率先して行っているとかで。性格も厳格なのか一度請け負ったことはきちんとこなすと彼の父親から伺っています」


「父親ですか。そういえば彼の父は警察に務めているとかで」


「ええ。父は現在警察の捜査三課に所属しているとか」


「三課ですか?」


「はい。主に窃盗などの犯罪を中心に捜査しているとの事で。詳しいことはまた後程」


 捜査三課。

 主な仕事は空き巣やひったくりなどの窃盗に関する犯罪を中心に調査する部署。

 盗犯とも呼ばれる人たちで構成されている。


「そんな父がいるのか真面目さが受け継がれており、また武道の心得もあるとの事です」


「ええ。鴉田君が二度、空を舞っていましたもんね……クク」


「ああ、それで笑ってたんですか。いやまあアレはどっちかと言えば鴉田君が悪いというか……コホン」


 場の空気がどうにも緩んでいたので咳を一つ払って教頭は仕切り直しを図る。


「それで現在は炎に適性があるとの事で燦央院さんが自らパートナーを志願しました。実際彼女も炎に関しては一年の中では高い適性もありますし悪くはないかと」


「でしょうね。それで課題の方はどうなんです?」


「どうやら魔力の制御ができないようで……」


 教頭は説明を緩やかに止めた。


「おや?どうしたのですが教頭先生?」


「それが魔力の行く先が分散してエネルギー体になって彼自身の服を破いたと報告にあるのですが……そんなことあります?」


 一同、その状況をイメージ中……。


 結果、大爆笑。


「いや……まあそんなことはありえなくはハハハ!」


「校長先生。これ割とマジでヤバイ案件では?」


「でしょうね。魔力の行きつく先がどうにもばらけているのと開始から終わりまでに何らかの問題が生じているのでしょう。服が破けるなんて……アッハッハ!!」


「校長先生。彼が聞いてたら泣きますよ?」


「ええ。ごめんなさいね。校長ともあろうものが……」


 校長先生しょんぼりと反省中。


 そりゃあそうだ。


「……で、現在はそれをどうにかしようとしていると?」


「はい。進路に関しては機関に属するために燦央院家の仲間入りをする予定らしいです」


「なるほどね。では四人目を」


 教頭先生がマウスを動かしてスクリーンを切り替えた。

 四人目のウォーロック、鴉田春一が映る。


「最後に四人目のウォーロック、鴉田春一ですね。問題児その二といったところでしょうか?」


「ですね」


 ちなみに問題児その一は陸島鉄明。


 そりゃあそうだわな。


「性格は良くも悪くも思春期男子そのものでしょうかね。あの自己紹介を見る限り」


「ええ。若かりし頃の教頭先生もあんなんだったんじゃないですか?」


「いやいや私はあそこまでひどくはないですよ……」


 真顔で否定する教頭。


「そこまで否定しなくても……ナンパしてたとかはないんですか?」


「しませんよ。魔女の眷属のために修行やら勉学やらでそんな暇なかったんです」


「へえ。じゃあ彼にはぜひ彼女を作ってほしいですね。九人ほど」


「校長先生。ここ日本ですよ」


「冗談ですよ」


 校長の冗談に場が笑いに包まれる。

 結構インパクトあったらしい。


「あ、説明続けますよ皆さん。適性は風で……え?パートナーに外崎菖蒲?」


「そうそう。それは校長である私から勧めましたよ」


「なぜそんなことを?」


「彼女、外崎さんはああ見えて優秀ですからね。ちょっと気まぐれな猫さんみたいなところはありますけれど」


「はあ……サボり魔と聞いてましたから意外ですね」


「ちゃんと彼に魔術を教えられるならサボっている件には目をつむると言ったら快く引き受けてくれましたよ?」


「……それ、大丈夫なんですかね?」


 教頭の頬に冷や汗が流れる。


「ああそうそう彼なんですがね。調べて驚きましたよ。ベルウィンググループの関係者らしくて」


「ベルウィンググループ?あの世界的大企業の?それはどういう意味です?」


 校長は眉をひそめた。

 ベルウィンググループ。日本に本社を置く世界的な企業で名を知らぬ人はいないとされるほど。


「はい。ベルウィンググループの中心であるベルウィング前々社長、鴉田時久の孫にあたるとかで……あれ?これ話してませんでした?」


「え?ええ!?そういえば確かに鴉田って――」


 校長は素っ頓狂な声を上げると同時に、周囲にざわめきが走る。


「鴉田という名前なんだったかなあと思って私の方で調べたのですが……十五年前の事件で自ら社長を辞任してからは全く違う人になってまた変わったせいで切り替わってで覚えている人もいませんが」


「……まさか御曹司ってことじゃ?」


「ああえっと。鴉田時久は今は一線を引いているようで両親、つまり彼の息子夫婦がグループで重役にいるそうですよ。十分裕福な家庭であるのは間違いないかと」


「おお、そうだったのですか」


「まあベルウィンググループの話はここまでにして……彼、どうやらその生まれでありながら機関側の魔術師として戦いに臨むと言っておりますね」


「うーん……ベルウィンググループの重役の息子であればある程度後ろ盾は得られるかもしれないとは思いますが……まさかね」


 校長は写真に写った鴉田春一の顔を見る。


「校長先生も気にしているかもしれませんがあの陽気さはどこから来てるんでしょうね?」


「ええ。それはとてもとても気になりますね。それで修行は?」


「まだこれからとの事です。燦央院さんとは違って外崎さんとはまだ出会って間もないとの事で」


「仲良くやれると……いいですね」


 水と油。


 校長には鴉田と外崎の二人の関係が一瞬それに見えた。


(でもそういうのに限って、意外と仲良くなったりするんですよね)


 校長は心の内で笑った。

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