インターミッション:四人のウォーロックについて
四人のウォーロックが玉之江島に集まってから何日かが経過したある日の午後。
玉之江島の魔道学園、会議室にて。
「では会議を始めます。議題はウォーロックについてですね」
開始の合図を出したのは魔道学園の教頭で男性の荒川。
彼は会議室に設置されたスクリーンの近くに設置した台の上にあるパソコンの前にいた。集まっていたのは学校で教師を務める者たち。男女入り混じってそれぞれが席について話を聞き始める。
「ウォーロックという存在が一人ではなく四人も来たという異例の事態。こうして確認の場を開かせていただきました。校長先生も来ていただいてありがとうございます」
「いえいえ。私もこういうの初めてですからね。それに頭の固いしわの多い連中と話しているときよりもこれからを担う若い男たちの話の方がテンションが上がるというものです」
「……はあ」
校長の言葉に言葉を失う教頭。
後ろに座っている教師たちからは笑い声が聞こえる。
「それじゃあお願いしますよ」
「はい。四人確認されたウォーロックですが一人ずつ確認していきましょう。まずは一人目、陸島鉄明ですね」
教頭がパソコンを操作すると、スクリーンには陸島鉄明の写真と説明が映る。
「記録上は百年以上いなかったとされるウォーロックでしたがこの節目の年で最初に発見されたウォーロックですね。適正魔法は大地の魔法と聞いております。パートナーは相原紫苑で既に魔法の適性もかなり高く、先日には決闘にて流山椿を下していると」
「そうですね。実力は確かでしょう」
校長先生はうんうんと頷く。彼の実力を認めているのだ。
しかし、はにかんでいるように見えた笑みが瞬時に真顔に切り替わる。
「しかし長所は良くてそれだけしょうね」
「と、言いますと?」
「彼、積極的に誰かと関わろうとしないのです。それもあってか基本授業や交流においてもここ数年はずっと孤独だったようで……おまけに優しく接しようとする人たちにも噛みつこうとしているのですから困ったものです」
「そうなのですか?でも魔法に関してはどうなのです?相原さんがつきっきりでいたから彼の魔法能力は高いのでは?」
「それがそうでもないのですよ。独学であの領域にたどり着いているのですから」
「独学で……ですか?」
教頭は目を見開く。
「ええ。どうやら彼は学園図書館にある魔術書を日ごろから読んでいたり修行に明け暮れていたりで。朝早くに起きては日課の修行に魔術書による魔法の勉強、学校が終わったら夜までこれまた修行。絶え間ない努力が彼の実力を形成しているのです」
「それはまた……でもそれだけであの流山椿に勝てるものなのですか?」
「武道の経験があるようで。五年前の事件より、ずっと己を鍛えているようなのです。全ては殺された彼にとってかけがえのない者達の仇を取るために」
「仇……ですか」
「そうそう。彼は頻繁にひらさきに行ってるそうですよ。店長さんが言ってました。ざるそばしか頼まないし無表情だけど悪い子じゃないだろうって」
「うーん。総じて渋い子ですね」
「でしょ?橘樹の家の人間らしい」
「え?」
橘樹という単語が出た時、辺りにざわめきが走る。
「今、橘樹って言いました?」
「言いましたよ。彼はその家で育ったようで。どうやら、彼が生まれた年に彼の母親が家に来てこの子を引き取ってほしいと当主に頼んで迎えさせたとかで。そのあとは当主のもとですくすくと成長……というわけにはいきませんでしたがそれでも彼は元気に育ってはいますわね」
「ということは彼は橘樹の家が何をしているのかわかっているのでしょうか?」
「現当主に確認を取りましたがどうやらちゃんとした説明はしていないとのことですわね。でも近いうちに説明はするでしょうね。陸島君はうすうす気づいているでしょうしそのうち自分で確かめに行くでしょう」
「ちなみにその母親は?」
「亡くなりましたね」
場には重い沈黙が走った。
――橘樹ってことは……校長先生にとってはいろいろ思い入れのある場所では?
沈黙の中で誰かが思ったこと。しかしそれを口にするのはできなかった。
しばらく誰も何も言えなかったが校長が手を叩いて沈黙を破ろうとする。
「彼の当面の課題はコミュニケーションを取ってもらう事でしょうね。過去の事件が大きく彼を支配している。喪失が、怒りが、悲しみが。いつまでもそのままじゃダメです。復讐にしろなんにしろ人は多い方がいいのですから」
「そ、そうですね。では次に参りましょうか」
どこかトゲの残る言い方であったが、教頭はパソコンを操作して次の人物をスクリーンに映す。
映ったのは鼠川淳吾。二人目のウォーロック。
「二人目に発見されたウォーロックですね。特徴としては男子にしては小柄で女子からの人気も高いと聞いております」
「まあこの容姿でしたらわかりますわね。可愛いですもん」
校長が鼠川の容姿を褒める。
教頭は『ええ……』と言いつつ、目を細める。
「……それで、適正魔法は水。パートナーは流山椿が担当しております。魔法技術に関してはまだまだ修行が必要とのことですが最近では上達してきていると報告が上がっております」
「あら、それはよかった。パートナーの流山さん、陸島君に負けて落ち込んでなければよかったのですが」
「どうやら彼に負けたのが聞いたらしく、今は初心に帰るという意味合いで修行を一緒に行っているそうですよ」
「それはよかった」
校長はにっこりと笑う。
「当面の課題は魔法の習得となるのですが、どうやら彼にはもう一つ悩みがあるみたいで」
「悩みですか?」
「ええ、どうやら彼は進路で悩んでいるそうです」
教頭の言葉に校長はなるほどと頷く。
「進路……なるほど。戦いに赴くか、日常の中で過ごすかで悩んでいると?」
「そうですね。魔術師じゃない私が言うのもなんですが、彼自身の適性は高いとは思っているのです。戦いとなるとやはり厳しいのでしょうか」
「そりゃあ戦いですからね。自分だけじゃなくて仲間も死ぬかもしれない。それに彼にとってはなじみのない世界ですから。陸島君とは違って彼は平穏な世界の住人であるのは確かですし」




