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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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24/118

4-3

「内容をまとめるとこの国には魔女に関する組織があり、トップには魔女機関がいて、その下にはいくつかの派閥がある。そういうことですね?」


「ええ。正解です」


 話をしていると車はある建物の近くで止まる。

「あれ? ここって?」


 鼠川は車の止まった周りを見渡す。

 道路沿いに止まった車のすぐ近くには大きな建物が一つあった。


「ああ、ここは二番街にある女子寮ですね」


「女子寮? なんでこんなところに止まるんです?」


 陸島は顔をしかめた。

 一方で鼠川は車の窓から見える女子寮の建物の大きさに驚く。


「うわあ、大きいなあ。高級ホテルくらいはあるんじゃ?」


「ええ。生徒たちの部屋だけでなく、生活においても風呂場や娯楽施設……まあラウンジや図書館に映像室といったくらいですが。露天風呂とかもあるんですよ。おまけに地下には――」


 佐藤市長が説明をしていると車に二人組が近づいてくる。


「あれは……」


「あ、流山さんに相原さん?」


「市長、一体どういうことです?」


「ああ、今日の案内ですが校長先生がどうやら彼女たちにもお願いしたみたいで」


「そうですか。俺から言って帰ってもらうようにしますんで」


「いえどうかお願いします。このままだと私、明日にはゴミを漁って生きる羽目に――」


 また大の大人が泣き出した。


(校長……そんなに人を脅して動かすのが好きなんか?)


 陸島の校長に対するイメージにまた一層、陰りが差す。


「ああ、じゃあ私が助手席に移りますので」


 市長はそう言って助手席の方に移った。

 流山と相原もドアを開けて彼らのいる後部座席に乗り込む。


「げ。やっぱりいる」


「お? 死ぬかクソガキ」


 しょっぱなからこれである。


「やめて二人とも。ツバキちゃんもいつまでもそういう喧嘩腰じゃダメだよ?」


 二人の合間に相原が入り込む。


「だってこいつ嫌いなんですもん」


「ほう」


「二人とも、市長さんが何かぼやき始めてるからその辺で」


 鼠川が止めに入ったとき、陸島と流山が市長を見た。


「ごみあさり……ああでもカニでもいいかもなあ……アハハ」


――なぜそこでカニ!?


「ていうかカニってこの辺いるの?」


「さ、さあ?」


 鼠川の疑問に流山は回答できなかった。


「それじゃあミロク以外の個所を回りましょうか。ルートは中学の時とほぼ一緒ですので」


「ミロク? ミロクって……なに?」


「ミロクというのは三番、六番、九番街の縦三つのことです。いずれも回ろうにもあまり面白い場所とかないんですよね。まあ三番街には農家の直売所とかはあるんですが……一日で回るスケジュールの都合上、八番街にもある方でもよいということですし」


 鼠川の疑問に流山が答える。


「あとは単に時間がないだけですが。それじゃあ出発しましょうか。夕方までに三か所、回ります」


 市長の指示のもと、車は二番街から五番街を抜けて四番街へと進む。


「五番街のタワーは夕方にしましょう。最初は四番街のアーケード街です」


「アーケード街?」


 陸島が車窓から風景を見ると、アーケード街の入り口の門が見えた。

 車は四番街にあるアーケード街付近の駐車場に止まる。


「このアーケード街にはいろんな店があります。服屋、雑貨店、駄菓子屋などとまあ学生さんにはちょっとじじくさいかもしれませんがね」


 陸島と鼠川はアーケード街に入る。

 屋根に覆われた活気ある通りはそこかしこから店員の元気な呼び声や中高年の客達の賑やかな雰囲気で溢れていた。新しい陶器の食器を見てはその出来を微笑み、駄菓子を買って頬張っては美味しいと笑ってたり。喫茶店からはコーヒーの香りが立ち、年老いた女性達がテーブルを囲って昔話に花を咲かせていた。


(なるほど。確かにじじくさい。だがこういう雰囲気は悪くはないか。喫茶店で読書というのも悪くない)


 アーケード街の雰囲気を陸島は気に入ったようだ。


「あの駄菓子屋の饅頭上手そう……あっちの精肉店、まさかの串焼きやってる。奥の方にはお好み焼き屋? 食べ歩きしようかな」


 一方、鼠川はアーケード街の食品を中心に目を奪われていた。


「そんなに食べたら太っちゃいますよ?」


「え? そんな簡単に太るかな?」


「……ほう」


 鼠川の返答に流山は目を細くした。背中に何かピリピリした雰囲気を漂わせながら。


「ああ、そうそう私が長いこと世話になってるカフェがあるんです。豆を買ってるんですよ」


 咄嗟に声を上げたのは市長の佐藤。それを聞いて鼠川は興味を持つ。


「わぁ……すごい本格的ですね」


「ええ。豆から入れたコーヒーというのは中々に良いものです。豆を挽いている時間、香りが広がる瞬間は私の数少ない娯楽の一つですから。それにここで買ったカステラをつまんで休憩するのが日々の癒しなんですよ」


「おおー……大人ですね」


「いや大人ですよ!」


 流山のツッコミは至極全うだった。

 市長はそのやり取りに笑わずにはいられなかった。


「ハハハ……さてそれじゃあ次に参りましょうか。次は七番街。多分皆さんが興味あるとしたらこっちかもしれませんね」


「七番街? 何があるんです?」


「娯楽エリアですよ。こことは違って若者向けの施設が多いんです」


「というと……ボウリングとか?」


「ええ。他にもいろいろ……まあ行ってみましょうかね」


 一同は車に戻る。

 相原は集団から遅れてついてくる。


「なんだ? 疲れたのか? 帰りたいなら帰ってもいいぞ?」


「あ、違うの。考え事してただけ」


「もー! 口曲がってるんですかお前―!!」


「陸島君……そんなに冷たくしなくても」


 周囲の意見もどこ吹く風か、陸島は車の後部座席に一番に乗る。


「ほう……あれが所謂ツンデレというやつですかね?」


「絶対違います」


 鼠川は市長の意見をバッサリ切る。ツンデレはもっと違うのだ。

 車は七番街にある、とある場所を目指す。


 時刻はこの時、十一時を指していた。


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