3-6
「確かに今のは彼女達が悪いかもしれない。だけどそれにしたって、やりすぎですよ!!」
「知るか。あの時の続き、ここで再現してやろうか?」
陸島は杖を向けられている。少しでも間違えれば先にやられるのは陸島の方。
だがそれでも陸島は自分の態度を変えることはしなかった。
そんな二人の合間にはただならぬ殺気が漂う。
「もうやめてよ!」
そんな二人の間に割って入ったのは鼠川。そのまま彼は陸島をじっと見る。
「これ以上いたぶって何になるのさ!? ひどいケガをしたわけでもないのに!」
「うるせえ。お前も潰すぞ」
陸島は鼠川に十手を向け、怒りに満ちた目で睨む。
「ぐ……!」
鼠川も負けずに杖を向けようとした。
しかし目の前にいる男に、怒気と威圧を向けるその男に杖を向けても無駄。それどころか一方的に殺されるかもしれない。そんな恐怖があった。
(なんだこれ。目の前にいる人間なのか? この僕を見る目は何だ? 怒りとか憎悪とかが混じって悍ましい視線を形成して僕を貫くこの視線はなんだ? 魔術なの? 陸島君、君は一体何者なんだ?)
彼の放つ悍ましい視線に足が震え、手も震える。
鼠川が今にも潰れそうなその時。
「あ、ここにいたのね」
陸島のいた方角から、一番街の方角から誰かがやってくる。
「あ、三田川さん……」
「どうしたの一体――」
三田川がその場所を視界に入れた時、最初に目に飛び込んできたのは顔から血を流し、震えながら立ち上がる中本の姿。
「大丈夫?! 何があったの!?」
「あ……あいつに……うぅ」
鉄拳の威力が今も体に染みているのか、中本の足は震えていた。
「ああ、そいつのせいで貴方に頼まれてた例のモンブランがぐしゃぐしゃになったんですよ。小競り合いだか何だか知らないけどおかげでデザートはぐちゃぐちゃ。おまけにそいつに何があったのか聞いたらキレてきたもんでとりあえず一人倒したところです」
髪をかきむしりながら陸島は状況を説明する。
つまり中本の放った水の魔法が陸島と持っていたモンブランに命中。結果モンブランはぐちゃぐちゃになり、それについて話を聞こうとしていたところ、中本一派はこれについて謝罪する雰囲気がなかったので鉄拳制裁に踏み切ったのだという。
「……そう。確かに街中で不用意に魔法を使った彼女が悪いわ。でもこれはやりすぎ。女の子の顔を狙うのはひどいわ」
「だからでしょう?」
三田川の反論を陸島は不敵に笑い返す。
「女ですし、面狙った方が良い。調子づいてんのならここで潰す。それだけです」
「……いつかその振る舞いは貴方を滅ぼすわ」
「知りませんよ。ああ、ケーキはあきらめてください。それとそのアマ、まだ殴り足りないんで――」
「いいかげんにして!!」
三田川が叫ぶ。流山と鼠川はその大声にびっくりする。
「もう十分よ。後は私の方で聞き出すから」
「俺がやっときますよ」
「ケーキ台無しにされて『私が』怒ってるの。わかる?」
「……そうですか」
やれやれと言って陸島はその場を去った。
去っていく背中が小さくなっていく頃、三田川は杖を取り出して中本に振るう。
その様子を見て鼠川が口を開く。
「……とどめ、刺すんですか?」
「しないしない。手当よ。中本さんにも責任があるとはいえ、これはちょっとね……」
「あ、ああそっちか」
その出来事から翌日。鼠川は以下のような話を聞いた。
陸島は中本に暴力を振るった件で職員室に朝から呼び出され、あれやこれやを聞かれた。
結果として街中で不用意に魔法を振るった中本にも責任があるとして、停学は免れたが厳重注意を受けたのだという。
ちなみに中本は本日お休みとのこと。
「ったく。向こうが悪いってのになんでぐちぐち言うかねえ」
「そりゃあ顔を狙ったからでしょ?」
「なるほど。腹を狙えってか?」
「いやそういうことじゃないよ?」
授業合間の休み時間。陸島と鼠川は話をしていた。
「それで先生方はなんて?」
「ああ、今後は程々にしろってさ」
「そんなアバウトな……」
「まあいいさ。次は誰か来る前に仕留めてやる」
「なんでそうなるの?」
「そういうことじゃねえの?」
「そういうことじゃないよ!!」
鼠川の突っ込みはもっともである。
「あの……陸島君」
二人で会話している中に割り込んできたのは相原。陸島のパートナーという立ち位置で現在はいる。
「なんだ」
「……魔法は使えるの? その……ずっと一人で練習してるって聞いてて」
「ああ。邪魔しないでくれ。一人でこなすさ」
「……うん」
席は隣同士。しかし相原は陸島との距離を遠く感じていた。
「いいの? 二人で練習しなくて」
「いいさ。楽でいい」
鼠川の疑問に対する切り返しに迷いはなかった。
瞬時の回答に相原は表情を暗くした。
(かわいそう……っていっても聞かないんだろうな。彼の場合)
距離を作り、壁を立てる陸島の態度に鼠川は内心嫌気を指していた。
外はまだ日の光が差していたが、その場にはどこか暗い雰囲気があった。
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