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「……その奇襲任務とやらに参加するにはどうすれば?まさか志願するだけで参加可能と言うわけではないですよね?」
「ええ。勿論です。やはり実績を求められますね」
実績と言う言葉に陸島のスマホを持つ手の力が強くなる。
「いつその任務は発行されますか?」
「そうですねえ。上の話だと……二週間前後かと」
「二週間前後……」
陸島は部屋のカレンダーを見る。
日付を見るに研修の最後の日に近いということはわかった。
「何分、奇襲任務ですからね。やるかどうかもわかりませんがあるのであれば緊急任務として発行されるでしょう。必要でしたら上に私が――」
「結構です」
肇の提案を陸島は即座に蹴った。
「実力さえあれば参加できるんですよね?」
「ええ……そうですね。それでいて魔女機関が首を縦に振るかですね。貴方はウォーロックです。その事を覚えておいてください。ああそうそう――」
電話の向こうで肇は慌ただしく紙の音を立てる。
そして紙の音が止むと陸島にある情報を伝える。
「組織ですが……どうやら向こうにもウォーロックがいるようです」
「なんですって!?」
「ええ。どうやって確保したのかはわかりませんが……。情報はうちの諜報部隊が取得したものですから間違いはないでしょうね」
「……ウォーロックが向こうにいる」
ウォーロックと言う存在がどれだけのものかは陸島自身がわかっていた。
わずかな期間で組織の魔女と対峙できるその成長性と秘めたる力。それが敵にいるという事実が陸島にとって改めて重くのしかかる。
「とはいえ、だからといって組織を恐れる必要はありません。奇襲任務には魔女機関でも手練れの魔女が集まるでしょう。陸島さんもエース部隊とまではいきませんが、部隊の一つとして戦いに赴き、仮面の魔術師について情報を直接取りに行けるかもしれません」
「エース部隊というと……三田川さんのような方が来るとか?」
「ああ、暴虐の魔女はしばらく玉之江島で待機ですね。何分、島の方にも警備というか、戦力は必要なので」
「一人だけで足りますかね?」
「御心配には及びませんよ。島にいる者はいずれも強者。二川さんや塩野さんといった魔女をはじめ、眷属も上澄みが多いので」
「なるほど。考えてみれば魔女の島ですから」
「そう言う事です」
玉之江島は政府と協力する前から、魔女の住まう島としてずっと栄えてきた。
魔女がより自らを鍛えるために。魔女をよりよく支えるために。
「陸島さんの当面の目標はそうなると……」
「奇襲任務への参加。その為にもっと組織の魔女を狩る必要があるという事ですね」
「そうですね。貢献度を高めるのが良いでしょう。魔女を狩る以外にも以前のような移送任務などもありますのでそう言った任務でも積極的にご参加ください。任務の好き嫌いはできればなしでお願いします」
「わかりました」
そしてしばらく雑談後、陸島は電話を切った。
スマートフォンを机の上に置き、一息つく。
(奇襲任務か……。確かに受けられればヤツに近づける――)
仮面の魔術師が脳裏に浮かんだ時、陸島は拳を握りしめた。
(上手くいけば奴を殺せるまたとない機会。だが相手は相当の手練れだ)
机の上で視線を動かし、写真立てを手に取る。
そこには幼い陸島と従者三人の姿が映っていた。
「もう少し待ってろ。片を付けてやる……!」
「ええー!?僕がですか!?」
「そうですよ。鼠川さんも結構強いんじゃないかって向こうじゃ話題ですから」
その頃、朝食を終えた学生一同は芽川を中心にトークタイムを過ごしていた。
内容としてはウォーロックの四人について。最初に話題に上がったのは鼠川。
「だって塩野さんを単独で倒したって話ですよ?あの人、割と問題児ですが実力は確かですから」
「いやあれは……なんと言っていいのかわかりませんが、多分芽川さんの想像とは違いますよ」
「えー本当ですか?」
芽川の期待の瞳に鼠川は困った顔を浮かべる。
「というかなんでまたそんなことに?」
そう言ったのは流山だった。
「……なんでだろうね」
遠くを見る鼠川の瞳は虚ろだった。
――何があったんだろう……
一同はその瞳の色合いがとても心配になった。
「……あ、ああそうそう。蛇島さんとかの話も聞いております」
「え?僕ですか?」
慌てながら芽川は話題を振った。
「ええ、魔術による攻撃力に関してはとんでもない出力を誇るとか渡された情報には書かれてましたね」
「それですか……。実はそれ、単に制御が上手くいかなくて。威力はあれど……と言ったところなんです」
「そうですか。出力制御に関しては見習い魔女にはよくある話ですから。あまり気を落とさないでください」
芽川はやんわりとした笑みを浮かべながら、蛇島を元気づける。
彼女の笑みに蛇島はドキッとしたせいで反射的に首を下に下す。視線の先に見えたのは半袖のYシャツからやんわりと出ている彼女の豊かな胸。
「あなた。どこ見てますの」
「うえ!?」
冷たい声が耳元にそっと届く。
燦央院だった。
「あ、いや何でもない。魔力制御……上手くいくかなと心配だったんだ」
「確かにな。下手を打ったら全裸オチだもんね!」
突然の鴉田!
蛇島の反撃!
「あの……蛇島君、ドレッサー・ドレッド相手に全裸になったって本当なんです?」
「いやあれは事故ですよ!!故意にやったわけじゃないんです!!」
地べたに転がる鴉田を踏みつけながら、蛇島は必死に弁明する。
「あはは……まあ、無事……ならいいかと」
芽川は正直何と言っていいのかわからなかった。
とりあえず鴉田について話すことにした。
「ええとその……鴉田君についてですが、彼も魔女機関から結構高い評価をいただいてますね」
「え?このボロ雑巾がですか?」
蛇島は力を込めて踏み込む。
足元のボロ雑巾は『ぐえ』と悲鳴を上げる。
「は、はい。魔術の腕もさることながら、作って来た魔術道具に関しても結構注目されているみたいで……。いずれは機関直々のご依頼とかがあるやもしれません」
「むう……馬鹿と天才は紙一重ということか」
「ただ、素行が気になるようで……島の校長先生が色々心配なさっているようなんです」
「……ああ、そうですか」
踏み入る力がさらに増す。
ボロ雑巾は一度高い声を上げた後、ついに声をあげなくなった。
「どうしてこんなのがウォーロックなんだろうね」
そうぼやいたのは彼のパートナーである外崎。
足元の鴉田を冷たい目で見ていた。
「それはわかりませんが……。本当になんでウォーロックが四人も出たんでしょうね?」
「それはアタシが知りたいです。芽川さんは何か聞いてないんですか?」
「うーん……特には」
芽川はしばらく脳内の過去の記憶を漁ったが、それらしい記憶はなかった。
「こちらに来る前ですが魔女機関の人にウォーロックと言う存在自体、機関発足の頃から記録が全くないそうなんです。トップシークレットとかかもしれないんですが……。すみません」
「そうですか。魔女機関の人でもわからないことってやはりあるんですね」
「ええ。ああそうそう。最初に見つかったっていうウォーロックの陸島君ですが――」
陸島の話題を振った時、流山は嫌な顔を浮かべる。
「あのインケンが何ですって?」
「ええと……資料によれば高い戦闘能力があるようで、この橘樹邸で修行したと記録があるようですが……?」
「あ、それなんですけど」
手元のタブレット端末を操作しながら芽川は確認を取ろうとする。
その確認に相原が言葉を述べる。
「陸島君、どうやら師匠にあたる人がいるみたいなんです。何か記録はありませんでした?」
「それは……うーん。ちょっとわかりませんね。木下さんや橘樹さんではなさそうですが」
芽川は首を捻る。
鼠川はふと気になった。
「……何者なんだろうね。陸島君の師匠って?」
「さあ?ろくでなしなんじゃないんですか?あのインケンに武術を教えるから…。単なる物好きかもしれませんよ?」
「物好きって言うと……オカマとか?」
「おかま!?」
鼠川の思わぬ発言に一同は爆笑の嵐に包まれた。
そうして和やかな時間は過ぎていく。




