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「あら貴方達も?悪いけど陸島君なら今はお客様がいらしてるから駄目ですわよ」
「いや、俺らは流山さんの見舞いに来た。野郎の寝顔なんぞ見てどーすんだよ」
「寝顔ってお前……というかもしかしてアイツ、目が覚めたのかい?」
「ええそーですよ」
驚く外崎の疑問に相も変わらず不機嫌に返答したのは流山。
「流山さん。あんまり怒ってばっかですと不細工になりますよ?」
さらにその輪に入ってきたのは木下。
思わぬ来訪者に流山は『え?』と声を漏らす。
「何故木下さんがここに?」
「ああ、親父さんの送迎をしようとしたんですが先にこちらに向かわれたとのことで。送迎を燦央院さんが従者と一緒に受け持ったみたいです。遅れてきた私はその後に鴉田さん達を見つけてこちらまで車で送ったんです。鉄明さん、目が覚めたんですか?」
「はい。先ほど。おじい様……橘樹さんと何か話があるようで今、我々は席を外しておりますの」
「……そうでしたか」
木下は沈痛な表情を浮かべる。
燦央院はその場にいた仲間全員に呼びかけるように声を掛ける。
「とりあえず移動しましょう。ここにいては病院の方に邪魔ですわ」
「ええ。そうしましょう」
すたすたと一同は病院近くに設置された食堂まで足を運ぶ。
その間に
「ところで何故、橘樹さんはこちらに来られたのです?」
「それが……ある事が分かったのです。それで今日、急ぎ鉄明さんのいる島まで来たのです」
「ある事?」
話をしながら、一行は食堂の中に入っていく。
時刻は既に昼を過ぎており、食堂内の席に人はあまりいなかった。
「先ほど話した、五年前の事件に関係する事なのですが……」
一行は長い席を埋めるように座っていき、木下は席に着いてから話を続ける。
「その際に鉄明さんと親父さん宛てに手紙が送られてたんです」
「手紙ですか?どなたからですの?」
「牙谷と言って、鉄明さんが一番、慕っていた者です。その内容が――」
木下はその送られた手紙について語りだした。
一方、陸島の方はというと龍弦とすっきりとした空間で会話を続けていた。
「それよりお前、相原紫苑という少女と決闘をしたそうじゃな?」
「ああそうだよ。それで?」
「……いいか。今から言う話は全て事実だ。木下と調査して間違いはなかった」
「なんだ一体」
それまで怒ったり、笑ったりしていた老人の顔が今度は憂いの表情を帯びていた。
陸島はその表情に思わず目を見開く。今まででそのような表情を陸島の前で浮かべる機会はなかったのだ。
「単刀直入に言う。相原紫苑はな……牙谷の娘だ」
「……何?」
告げられた事実は陸島鉄明の心に一つの大きな塊となって落ちた。
落とされた者はただその事実を耳にして茫然としていた。
「だから牙谷には娘がいたんじゃよ。アイツには家族がいた。妻がいた。そして子供もいた。そしてその子供が、娘がお前が戦った相原紫苑という少女なんじゃよ」
龍弦の言葉に陸島は声を出すことなく、固まった。
「牙谷のヤツは自分にかかった呪いのせいか、和泉島家の圧にやられていたようでな。呪いはともかく、和泉島の裏切者に関しては身動きが取れないのもうなずける。家族の安否を確かめられないのはきっと辛かったろうに――」
「いやちょっと待て。どういうことだ!?」
固まっていた陸島が声を荒げて喋りだした。
「俺はそんな話聞いてないぞ!?牙谷に家族がいた!?しかもその娘があの女ってどうなってんだ一体!?牙谷は遠くで仕事をするから離れるって言ってたんじゃなかったのか!?第一、アイツの父親は十年前に死んだんじゃなかったのか!?」
「だぁ落ち着け鉄明。混乱するのも無理はない。牙谷はお前には黙っていたんじゃ。このわしにもな」
「親父にも……?」
「うむ。まず事の発端は十年以上前の事。牙谷……いや、相原健吾がある任務に就いていた。その任務は極秘任務でな。和泉島家の主導で魔術道具の移送を行っていたらしい」
「極秘任務?移送?」
「そうだ。その任務で信じられないことが起こった。裏切りじゃよ」
「裏切りって……さっき言ってた和泉島か?」
「そうじゃ。そのせいで任務は失敗。牙谷は一旦は家に戻るはずだったが負傷した際に呪いを掛けられた。一定条件で死ぬ呪いをな」
「なんだそれ?口封じにしてはお粗末だな」
「うむ。そこがわからんのじゃが……だが相手があの和泉島ならわからんでもない。最終的に相原健吾は竹月組の本部に……つまりうちに来たというわけじゃ」
「それもわかんねえな。なんで本部に来た?」
「そこは木下が機転を利かせたんじゃ。何か秘密を握っている。機関の闇とでもいうべき何かをな。だが木下が手を伸ばせたのはそこまで。調べようにも牙谷には家族がいる。そう、相原紫苑と妻の相原涼香がな。妻の方は後年亡くなったがその時は生きてて、どうやら口封じとして二人の命を人質にしていたそうじゃ」
「それで牙谷も木下も動けなかったのか……」
龍弦の説明に陸島は少しずつだが納得の色を顔に浮かべる。
「そうじゃな。だが手はあった。牙谷の方にかけられた呪いを解除したのち、家族の方をそのまま助けに行くという方法が。もっとも呪いの方をどうにかしようとして、時間がかかってしまったがな」
「いくらかかったんだ?」
「十年じゃな」
十年という単語が陸島の耳に届いた時、彼は驚きの声を上げた。
「嘘だろ!?いや、でも呪いってそんなに解除に時間がかかるものなのか?」
「うむ。和泉島の呪いは思ったより厄介でな。解呪に加えてもう一つ手を打つ必要があった」




