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「それが……よく分かりません。相原さんが陸島の手を掴んだと思ったら、動きが止まって、しばらく二人ともそのまま……数秒くらいだったと思います。そしたら急に二人とも地面に倒れて――」
「シオンちゃん!!」
燦央院が状況を説明する最中、流山が倒れている相原に叫び駆け寄る。
「起きて!!しっかりして!!目を開けてよ!!」
しゃがみこんで体を揺すりながら親友の覚醒を促そうとするその目には涙が溢れていた。
「ちょっと見せて」
必死というよりパニックに近い状態の流山の近くに三田川はしゃがみ込んで相原の容体を確認する。
(これは……!)
「だ、大丈夫ですよね!?死んでないですよね!?」
「……ええ。大丈夫よ。それに死んでたら顔色はもっと悪いわよ」
「う……」
三田川の言葉には説得力があったのか、流山は押し黙った。
「それより貴方達、怪我は?」
三田川が周囲の学生達に目を配る。
皆それぞれが怪我をしていた。
「つー……そういや陸島に派手にやられたんだったわ」
脇腹を抱えつつ、痛みの熱を感じ取る鴉田。
「そうね。顔をやられなかっただけマシだったわ」
体にできた切り傷の後をじっと見る外崎。
「あ、ちょっと待っててね」
そう言って杖を取り出し、周囲に自らの魔力を送るのは鼠川。
周囲の安全を確認して姿を見せていた。
「おお、鼠川君。無事だったか!!」
「そりゃあまあずっと隠れてたし。蛇島君こそ平気なの?」
「ああ、メガネも割れてないし傷も浅い。よくもまああの状態の陸島の前で無事で……ぐう」
「はいはい手当てを黙って受けなさいな。治療が済んだらまた修行しますからね?」
「勿論だとも」
蛇島と燦央院のやりとりを見て、三田川は思わずため息を吐く。
「どうしたんです?三田川さん?」
「いやあねえ。若いっていいなって」
「おばさんみたいっすよ。それ」
「布塚。後で〆る」
「ごめんなさい!!」
ダイナミック土下座をかます布塚をよそに三田川は陸島の方を見る。
彼の顔は穏やかな表情で眠りについていた。
(眠ってる……まるでうちの小さい子のよう……いやそれはちょっと子供すぎるわね。でも落ち着いてるわ。とっても)
すやすやと眠る陸島の表情に三田川の表情には思わず笑みがこぼれた。
かくて陸島鉄明と相原紫苑の決闘より始まった一連の騒動はひとまず幕を下ろしたのである。
「う……うう」
瞼を開いた先に見えたのは、何度か見たことのある天井。
回数にしては片手の指で数える程度であるがそこにいると自覚した時、少年はベッドから起き上がった。
「ここは……」
陸島と相原の決闘より一週間後。
島内にある病院の一室にて。陸島は目を覚ました。
(病院……?何で俺はここにいる?思い出せ……今、何が起きている?いや、何が起きた?)
脳内の情報より状況を探ろうとする。
窓の外の風景は突き刺すような陽射し照らす晴天。病室の周囲を見渡すがそこには誰もいない。
「くそ……調べようにも荷物が――」
ベッドの脇に目をやると設置された台の上にカバンが置かれていた。それが自分の鞄であるとわかると彼はすぐ手を伸ばし、中からスマートフォンを取り出す。この島に来るときに受け取った魔術師見習いの自分用の高性能スマートフォンだ。
(電源は大丈夫だ。さすがに機関が作っただけのことはある。日付は……一週間過ぎてるだと!?)
ドクンと心臓が高鳴る。
相原紫苑と戦った日から日付が七日も経過していたのだ。
(決闘はどうなった?何が起きた――)
調べようとベッドから降りようとしたその時、病室のドアがガラリと開く。陸島がその方に視線を向ける。
「お前は……」
「……どうやら目が覚めたようだね。具合はどうかね?」
蛇島光がそこにいた。頬や額には絆創膏や包帯が巻かれ、怪我をしたことが窺える。
驚く彼に陸島はベッドから立ち上がって近づく。
「聞かせろ。戦いはどうなった?」
陸島が問いを投げる。
投げられた蛇島は思わず驚き、硬直した。
「覚えていないのかね?」
「ああそうだ。だから聞いてる」
「……本当にか?あの化物、精霊の事もか?」
「ああそうだよ。だから聞いてんだろうが!」
「声を荒げるな。落ち着け」
「落ち着いていられっか!!」
「ここは病院だぞ?」
「……ああそうだな」
思わぬツッコミに陸島は言葉を一瞬失った。
みなさま、病院ではお静かにお願いいたします。
舌を打ちつつ、ベッドに座り込んで陸島は蛇島から説明を聞く。
「覚えていないのなら説明しておこう。一週間前、まずあの時の戦いの中で君は相原さんと戦った。君は魔術を振るって相原さんに攻撃を仕掛けるも相原さんの放った枝によって攻撃をほぼ封じられ、さらには完全に動きを止められた。ここまではいいか?」
「……ああ」
不機嫌になりながら、陸島は説明を聞く姿勢を崩さずにいた。
蛇島は不機嫌になった彼を見て一旦説明をやめようかと思ったが、説明すべきだろうと義務を果たす意思に押されて結局は説明を続ける。
「その時だった。何か嫌な感じがしたんだ。魔力の流れというのか?あれは。それが君から発せられたと思ったら、君はその時に何か得体の知れない存在を近くに呼び寄せていた。後に聞いたが、それが鉄の精霊だと知らされたよ」
「鉄の精霊……」
「そうだ。何か覚えてないのか?」
じっと真っ直ぐに見る蛇島の視線に陸島はたじろぐ事なくこう返答する。
「覚えはある。何度も夢に出てきたよ」
「なんだと?今まであれが近くにいて何ともなかったのか!?」
「まあな。それでどうなった?」
「それでって……まあいい」
驚きにずり落ちたメガネを直しつつ、蛇島は説明を続ける。
「そいつが姿を現したかと思ったら、今度は魔女のクランが闘技場に入ってきた。エメラルド・ナイフだったか?暴走する精霊を抑えようとして立ちはだかった。何かをしようとして全員やられてしまったが、そこに三田川さんと布塚さんが来た。そこからは僕らもどうにかしようと暴走したお前を抑えるために動いたんだよ」




