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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部 覚醒と研磨の時

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131/152

20-3

「は?爪島は心配にならないと?坊ちゃんがどうなってもいいと?」


「なぜ剣幕を交えて俺に言う!?てか前!!」


 焦る爪島が指さす先には牙谷の乗っているゴーカートが。


「おおっと!?」


 咄嗟にブレーキを踏み、ぶつかるという大事に至ることはなかった。

 運転する際は正面を見て、安全確認を怠らないようにしましょう。


「おいおい。そんなんで坊ちゃんの乗る車運転できるのか?」


 呆れた様子を見せたのは牙谷。


「そうですね。ちゃんと免許取ってからにしますね」


「え!?無免許だったのお前!?」


「あれ?言ってませんでしたっけ?」


 念のため補足しておくと羽田は運転免許を持っていない。

 そしてこれまで無免許運転はしていない。


「免許ってアレ、魔女でも取った方が良いんですか?」


「当たり前だよ馬鹿野郎!あの暴虐の英雄ですら取ってるんだぞ!?」


「マジですか!?」


 牙谷のツッコミに羽田は驚く。


「そういや坊ちゃんは?」


 先に進んでいたはずの陸島の姿が見えず、羽田は前方の方を見渡すが陸島の姿は見えなかった。


「こっちー」


 だが声は聞こえた。

 正面ではなく後ろから。


「ふえ!?」


「おお、もう乗りこなしたんすか坊ちゃん。流石っす!!」


 変な声を上げて驚く羽田。親指を立てて喜ぶ爪島。

 そして、陸島のアクセルべダルの踏み加減を見てにやりと笑う牙谷。


「そう。その通りですよ鉄明坊ちゃん。車というのはただアクセルを強く踏むだけじゃない。カーブや曲がり角ではブレーキを踏んで適格なスピードに入ることが大事なんですよ。ちょうどこんな風にね」


 そして披露するは長年の陸島の送迎にて蓄積された運転テクニック。

 山の上にある家から学校までの合間、牙谷はその運転に手を抜くことはなかった。当たり前ではあるが。

 ブロロロ……ききー……がん。


「あ」


 なんということでしょう。

 実際の車の運転をしている牙谷牧久。キメ顔でコース内輪に設置された柵代わりのタイヤにぶつかったではありませんか。


「ださ!!」


「それはださいっすよ……牙谷さん」


「いや違うんだって。この車オートマだし――」


「家の車もオートマっすよ」


 爪島の言葉が焦る牙谷の心を抉る。


「ぐぅ……」


「ダサいぞ牙谷ー」


 そう言って牙谷の横を颯爽と駆け抜ける陸島。

 他の客も乗っている中で華麗なテクで一陣の風のように車を動かす。


――おお、流石っす坊ちゃん。


――すご!!将来は私も坊ちゃんの乗る車に乗せてもらおうかしら


――こんな才能があったとは。俺の運転スキルの賜物……じゃないよな。


 その様に従者三人はただ驚き、じっと見ていた。

 制限時間いっぱいまで、彼らはゴーカートを楽しんだ。

 そして次のアトラクションに乗る最中で、陸島はあるものに目を奪われた。


「あれなんだろう?」


 陸島が見た先にあったのは一つのお店。

 その店では地元とのコラボでかつて使われていた道具や食べられていたお菓子の販売をしていた。


「ああ、地元の名産品とか昔使われていたっていう道具の販売やってるみたいですね。刀とかないかな」


「牙谷さん。それはくるま――」


「しーっ。坊ちゃんに聞こえたらどうすんのよ」


「ああ悪い。でも流石に刀はないと思いますよ」


 一行は店の中に入る。

 他の客もいくらか入って人気のある中で、陸島はそれに目を向けた。


「これは……?」


 陸島はそれを手に取る。

 それの長さは持ち手含めて成人男性の手のひらより一回り大きな棒で、さらに曲がった短い板のようなものがついていた。


「ああ、これは十手ですね」


「十手?」


「ええ。江戸時代の役人さんが持っていたもので、悪い人を捕まえる仕事をする人……今でいう警察官が持っていたものですね。どうやら、説明見た感じだとこの遊園地の近くにそうした人が務めていた場所があったみたいですね」


 牙谷が指さした先にあった十手について説明する看板には、この遊園地近くにあった与力や同心といった十手持ちの人達が集団で家を建てていたらしく、その縁で販売していた。


「へえ……警察か……」


 陸島はその十手を手に持ってじっと見つめる。

 十手の棒は金属でできており、店内の光によって、十手を見つめる陸島のまっすぐな目がそこに映っていた。


「坊ちゃん、それ欲しいんですか?」


「え?ああ、うん」


「じゃあ一つ買っておきましょう。なあに今日の記念品ってことで良いですから!」


「……ありがとう」


 ふとこの時、陸島は何か強いものに後ろから引っ張られる気分だった。

 それは迫る牙谷との別れを不意に思い出したからである。


(……そうだよな。いなくなるんだよな。牙谷は)


 牙谷は陸島の手に持っていた十手を優しく取り、さらに周囲にあった土産のお菓子を数点手に取ってそれらを買い物かごに入れるとそのまま会計を済ませる。店内にいた二人もそれに気づき、一行はそのまま店を出た。


「ちょっとこれ車に積んでくるわ。さっき飯食ったところで待っててくれ」


「了解っす」


 牙谷は三人にそう言うと一人で車の方へ戻っていった。

 陸島、羽田、爪島の三人は先ほどお昼ご飯を食べていたフードコートへと向かう。


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