16-3
「いくよ」
外崎がマギアブレードを陸島に向けて詠唱を始める。
すると彼女の周囲に優しい風が生まれ、それは周囲を駆け巡り出す。
「出た!外崎さんのマジックコン――」
「手ェ動かせ」
「大丈夫だ!もうやってる!」
こんな時でもいつもの調子に鴉田に外崎は突っ込みを入れる。
鴉田は笑って右腕に構えていた黒のレールガンを指差す。前回の製造したレールカノンに比べて威力は抑えめだがそれでも確かな威力はある。その威力を発揮するのに必要な充電率は既に八十パーセントを超え、もう少しで撃てる状態まで入っていた。
「よし。後に続いて!!」
「あいよ!!」
外崎の周囲を巡っていた風は身を倒す暴風となり、その合間よりバチバチと電気が生まれ、それもまた成長して電撃となる。
「行くよ!」
外崎が最初に放ったのは勢いある暴風。
襲いかかる暴風というのは凄まじく、現実でも車を吹き飛ばすほど。
「ガアア……!」
それによって立っていられなくなった彼はそのまま地面に這い、蔦を地面から生やして全身に固定する。蔦も風の方向に向かって勢いよく揺れて陸島を縛るにはややその細さでは厳しかった。
「もう一丁!」
さらに外崎が魔術を放つ。
先ほどの風を産む際に生まれた電撃だ。避けることは叶わず、それは陸島に命中。
「グオオオオオオ!!」
「よし!!ここで俺よ!!」
そして満を持して鴉田お手製の魔術搭載レールガンが陸島に向けて発射。
放たれた一撃は大地を抉りながら勢い衰えることなく彼を貫こうとする。
「これでどうだ!」
「あまい」
その時、大地より生まれたのは鋼鉄の壁。電撃の弾丸は壁を貫くことはなく、壁にぶつかったその場所で勢いをなくし、その場で消える。陸島に届くことはなかった。
「何!?」
「中々恐ろしいものを作ったな。だがそうはさせんぞ」
向こうで笑っていたのはエメラルドナイフと戦っている鉄の精霊。
精霊は相原達学生に攻撃を仕掛けようとしていたが、そこにエメラルド・ナイフの面々が割り入って彼女たちと戦っていた。
「嘘だろ?結構な威力をしてたんだぞ?」
その妨害に鴉田が苦虫を噛み締める。
再び陸島と燦央院達のぶつかり合いは再開する。
「そんな!戦いの最中で!?」
「我を舐めるなよ?魔女ごときが」
根岸が驚く間に精霊は次の手を放った。
精霊の周囲に黒い霧のようなものが生まれ出す。
「何?あれ……」
根岸がそれを注視する。同時に脳裏に鉄の精霊がその属性に基づいて操れる物で霧に該当するものが何かを探る。
――霧状、砂状、砂……砂鉄!
「砂鉄だ!こっちに飛ばす気だ!迎撃しろ!」
「フフフ……出来るかな風の魔女達よ」
呼び出された砂鉄の群れは大地に沈んでいく。
「何?」
「こういう使い方もあるのさ。これは迎撃できるかな?」
不敵に笑う鉄の精霊。
そして彼の魔術は行使される。次の瞬間、大地は無数に引き裂ける。
「うわぁっ!!」
「んなぁっ!?」
エメラルドナイフの面々は足元の周囲にできた振動と裂け目、揺れによってバランスを崩し、殆どが立っていられなくなった。
この時、鉄の精霊が振るった計略は先ほどの砂鉄の群れを地面へと沈めさせることでその砂鉄を持ち上げる際に周囲の土を持ち上げ隆起させるほか、大地そのものを引き裂くという技を見せたのだ。
「全員飛べ!」
そんな中でも根岸は的確に指示を出してグループメンバーはそれにすぐに従う。勢いよく彼女達の足元では、既に無数の鉄の刃が裂け目より勢いよく出現し、その身を紅く染め上げる勢いであったがそうはならなかった。
(ふう危ない。でも精霊の方はまだピンピンしてる。遊ばれてみるみたいでムカつくわ……!)
根岸の胸中に怒りの火が灯る。
一方で、精霊はケタケタと笑っている。それに何処か不気味さを覚えたのは金島。
(おかしい。精霊の類を名乗っているのなら、既に私達は死んでもおかしくはない。さっきから攻撃を仕掛けてこない。揺れとかそういうのはともかく。本当に何を狙ってるの?)
そのままメンバー達が飛んで鉄の精霊を見下す程の高さに差し掛かった頃、根岸は周囲に新たな指示を出した。
「全員、封印魔術の準備を!これ失敗したら終わりだと思え!」
「了解!」
金島はスーツの上着にある内ポケットから一枚の木製の札を取り出す。
続く周囲もそれを取り出す。
「ほう。この場に固定するか。我を」
「そうでもしないと死人を出すハメになるからね!」
「やってみろ。我を殺すよりも容易いというのならな!」
精霊は封印に対し不敵に笑った。
各々は真剣な眼差しで札に魔力を込め始める。魔術の式が組み込まれたそれは各々の魔力を注がれてそれぞれが光出す。その合間に根岸はずっと精霊を見ていた。
(ええそうね。封印自体は魔術の詠唱を行わないといけない。そして最終的に出来上がる箱の中にこいつを封じる。それができれば精霊に憑かれて暴走してるあの子も止められる。殺さずに生かすっていうのがどれだけ難しいことか――)
「あの者を殺した方が早かったのではないか?」
メンバーと共に周囲に結界を張り、詠唱を始める根岸を揺さぶるように精霊は囁く。
「ええそうね。単純な人ならそう考える。でもこっちはそうも言ってらんないのよ!」
「そうか」
周囲を囲う者達は抉れ、裂けた大地の上で詠唱を続ける。
鉄の精霊の周囲には魔術の奔流によってできた流れが見え始める。それは精霊を囲うとさらに一つ、また一つとその流れは生まれ出る。
「風の魔術による結界での封印。それで貴様らが動いたわけか」
「ええ。風の魔術と地の魔術は相反する。その流れの向かい方も本質も。だから――」
直後、精霊の黒いモヤに包まれた体は宙に囲う流れと共に浮かぶ。重力に逆らってそれは一定の位置まで浮かぶと、今度は囲う流れより電気が生じる。
「アンタみたいな大地の親戚には相性抜群ってことよ」
根岸が周囲のメンバーに目を配る。
どうやら封印の為の結界はそこに生まれたようで札を構えた者達は首を縦に振りつつも警戒を解いてはいなかった。
「では次は封印を解いてもらうとしよう」
鉄の精霊は笑った。その日一番に大きく口を開けて。




