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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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104/128

16-2

「よし。これなら戦えそうね」


 根岸は確信を持てた。だが冷や汗は流れる。


(相手はあの呪われし精霊の使い手。まだ地上に顕現して間もないとはいえ、鉄の精霊に関しては情報が少なすぎる。元から考えるならさっきみたいに刃を振るったり他には鉄を媒介にしたなんらかの魔術だろうけど……一体何をする気なの?)


 陸島の頭上で怪しくゆらめくその姿に根岸は胸のざわめきを隠せずにいた。


(油断すればやられる。それは間違いない)


 根岸は自分の武器を、マギアブレードを手にして意を決する。


「さっきも言ったが責任は私が取る!!罪悪感に囚われたくないのならこの場から帰っても良い!!」


「帰りませんよ!私たちは!!」


「はい!そうです!!」


 エメラルドナイフのメンバーが根岸に戦う意志を伝える。


「よし。それじゃあ行くわよ!!」


 再度根岸は周囲の仲間と連携し精霊と陸島に攻撃を仕掛ける。

 精霊はこれを迎撃するために陸島と共に反撃を始める。

 両者の戦いはまだ始まったばかり。


「シオンちゃん!」


 大蝦蟇に飛び乗って相原の元に馳せ参じた流山。

 汗を流しながら相原の元に駆け寄り彼女の安否を確かめる。


「大丈夫ですかシオンちゃん?さあこっちに!」


「だめ。このままじゃ陸島くんが死んじゃう……」


「大丈夫ですよ。あの人達に、おそらく本土で戦っている魔女の方々ならきっと――」


「そうじゃないの!」


 相原は流山に向かって叫ぶ。


「あのグループのリーダーが私に言ったの。最悪、陸島君を殺すって」


「それは……確かに穏やかじゃないですね」


 飛び出た言葉に流山は目を見開いた。だが少しして流山は相原に向き直って自分の意見を伝える。


「でも今のシオンちゃんに何が出来るんです?ここは退きましょう。最悪殺すというのなら最悪にはそう簡単にはならないはずです。第一、目の前にいるアイツが、陸島がそう簡単に殺されると思いますか?」


「でももし――」


「いいから。ボロボロだってこと忘れてませんか?」


「そうですわよ相原さん」


 その場にさらに燦央院が駆け寄る。さらに蛇島、鴉田も続く。


「大丈夫かね?怪我は?」


「うわ。ありゃやばいな。俺たちも退こうぜ!」


 鴉田が指差した先では精霊とそれによって操られている陸島とグループ『エメラルド・ナイフ』の戦いが繰り広げられていた。

 無数の鋼鉄の刃の群れ。これに対し振るわれる突風の刃が互いにぶつかりかい、そして近づく陸島がメンバーの一人の首を刎ねようと刀を振るう。これを割り込むようにして止めに入るのはリーダーの根岸。精霊はその間に何かを詠唱しようとするもそれを止めに入るグループのメンバー達。両者以前として動きを止める気配はなかった。


「だね。そうした方がいい」


 その戦いを見てさらに駆けつけた外崎が首を縦に振って相原を背負おうとした。


「な、なんで」


「いいから。流山さんの意見に従いな。でないとあいつに殺されるよ。大事な人なんでしょ?」


「だけど殺されちゃうのにーー」


「今はあの人たちを信じて!」


 外崎が相原の否応無しに彼女を背負ってその場を後にしようとする。

 その光景を陸島は見ていた。


「……ウウ」


「む?」


 一方暴走する陸島とエメラルド・ナイフの戦いの最中、鉄の精霊は異変に気付く。


(こやつ意識が……まあいい。今はこちら側の内にある。自由にさせるべきか。先ほどの戦いの決着をつけたいのだろうな)


 無数の刃が肉体に刺さっていた陸島はその場で獅子のように叫ぶ。

 するとどうしたことか、彼に突き刺さっていた刃たちはまるで何かに引っ張られるかのように彼の体から引き抜かれていく。


「ウソでしょ?!」


 根岸は驚く合間に陸島は全身に魔力を集め出す。

 今度は刺さった刃の後に魔力が集中し、痛ましい傷の周囲に傷が集まって彼を癒した。


「あの状態で魔術を振るった?どうなってるのよ一体!?」


「わかりません。根岸さんこのまま戦っていいんですね!?」


「いいわ。彼を――」


 金島に指示を出そうと一瞬陸島から目を離した途端だった。

 陸島は根岸に向かって突撃したのだ。


――ここで突撃?どういうこと!?


 咄嗟に構える根岸だったが彼の勢いある突撃は別に彼女に向けられたものではなかった。


(避けた?私を?)


――いや違う!後ろの彼女だ!


 振り向いた先の相原に向けて陸島はその両手に魔力を集中させて襲い掛かろうと勢いをつけていた。


「グオォォォォッ!!」


「みんな逃げてーっ!」


 相原達に向かって叫ぶ根岸。


「させるかーっ!!」


 暴走する陸島に向かって一人の男がトンファーを構えて正面から突撃する。蛇島だった。


「正気に戻れ!陸島ーっ!!」


 陸島が走ってくる彼の突撃に気付き、すぐに両手に爪を形成する。凶爪が彼の指から伸び、蛇島を切り裂こうとする。両者がぶつかる瞬間はすぐそこまで来ていたその時。


(……ここだ!!)


 走る蛇島は一段階自身の速さを上げ、陸島の攻撃よりも一歩早くトンファーを叩き込む。陸島による凶爪の一撃が振るわれることはなく、彼は来た道を吹き飛ばされるかのように転がり倒れる。


「やりますわね蛇島君!」


「ああ。修行の成果だ!」


 燦央院が蛇島の迎撃を勢いよくほめる。

 蛇島も手応えありとトンファーを強く握って笑った。


「ヒュー!むっつりもやるじゃねえか!」


「ははは。次はお前だ」


「なんで!?」


 蛇島と鴉田のくだらないコントを外崎はふふっと笑って見ていた。

 だがそれで終わりではなかった。


「げ。まだ動けるの?」


 外崎の声で周囲は陸島に視線を向ける。

 陸島がゆらりと立ち上がり、全身からドス黒いオーラを周囲に溢れさせ、紅くぎらつく瞳が戦いにさらなる緊張をもたらす。


「どうやらまだ戦い足りないらしいねアンタ」


 次に彼に攻撃を構えるのは外崎。

 マギアブレードを構え、膝と腰を曲げてこちらを見る陸島に向けて仕掛ける。


「いいさ、やってやるよ」


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