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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン28【試練の塔編】

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マールの罠

第97階…。


マールによる「元素の実験」はさらに陰湿さを増していきます。

ヒントが見えるアーティファクト【虹色の瞳(モノクル)】の没収、そして破壊。


「これがないとクリアできない」と高笑いするマールに対し、ハーベルが取り出したのは魔法の杖ではなく……まさかの「塩酸」と「炎色反応」!?


知識という名の最強の武器が、ドワーフの常識を覆す。

挿絵(By みてみん)


「……おい、マール。それはズルだろ!」

「うるさーい! この実験からはモノクル禁止でちゅ!」

ブリッツの抗議も虚しく、ハーベルは右目のモノクルを没収されてしまった。


マールが提示した次の課題は「土の実験」。


広場に立つ女神像と「全く同じもの」を、魔法で隣に作成せよというものだ。


「これ、モノクルの透視機能がないと素材が分からないやつだろ!」

「フフフーン、さあ、どうするのかなぁ?」

マールが鼻歌まじりに見守る中、ハーベルは女神像をまじまじと観察し始めた。


「……見た目は石膏だが、この重量感。……マール、少し削るよ」

「お好きにどうぞぉ!」

ハーベルは像の裾をわずかに削り、小瓶に取り出した。


まず、魔法で生成した「塩酸」で粉末を溶解。そこに「塩化バリウム」を滴下し、白い沈殿を確認する。


(……硫酸カルシウム。やはり主成分は石膏か…)


さらに、像の奥に隠された金属の破片を、銃口から放った青い炎の中へ振りかけた。


一瞬、炎が鮮やかな「緑色」に変わる。


「……なるほど。芯材は『銅』、表面は『石膏』か」

ハーベルは《設定》スキルを使い、まずは純銅で像の骨格を練り上げ、その上から硫酸カルシウムを均一にコーティングした。


「……どうかな?」

「……っ! ちっ、正解だよ!」

マールが苦虫を噛み潰したような顔をした。


魔法のヒント(モノクル)を無視し、未知の「化学」で正解を導き出した男に、マールのプライドはズタズタだった。


「マール! 悪ふざけが過ぎますよ!」

虚空から響いた凛とした声…。

階層管理者アウリエルの叱咤だった。


「だってアウリエル様、コイツ全然モノクル使わないんだもん!」

「いいから返しなさい。さもなければ……」

「わーかったよ! ほら、返すよ!」

投げ返されたモノクル。


しかし、マールは密かに指先を弾き、モノクルを石畳の上へと叩き落とした。


パリーーン……。


冷たい音がして、虹色のレンズに大きなヒビが入る。


「ああ、ごめんよぉ。手が滑っちゃった」

「テメェ……わざとやりやがったな!」

ブリッツが毛を逆立てるが、ハーベルは静かにその壊れたモノクルを拾い、再び右目に装着した。


「……いいよ。マール、ありがとう」

「次は『光』の実験だ。……鏡の角度を調整して、的の中心を射抜け。もうモノクル(ヒント)は壊れてるけどね!」

部屋中に配置された無数の鏡。


光を一回反射させるだけでも至難の業だ。


ハーベルは《エーテリアル・エンバー》を構え、まずはスタート地点から赤いレーザー(低出力魔力)を放った。当然、光は明後日の方向へ消えていく。


「ハーベル、こればっかりは計算じゃ無理だぜ!」

「……いや、計算する必要はないよ。――『逆』にすればいいんだ」

ハーベルはゴールである「的の中心」の前に立った。


そして、的からスタート地点の鏡に向かって光を照射する。


ピュン、ピュン、ピュン……!


光は鏡を逆走し、スタート地点の鏡の上に一点の「赤い印」を刻んだ。

「ブリッツ、そこをマークして!」

「お、おう! 了解だぜ!」

ハーベルはスタート地点に戻り、ブリッツが指し示した「逆算の到達点」に向けて引き金を引いた。

放たれた光軸は完璧な軌跡を描き、迷うことなく的のド真ん中を貫いた。


「……正解。……もういいよ、勝手に行けよ!」

マールは投げやりな態度で背を向け、地駄を踏んだ。


ハーベルはヒビの入ったモノクルをかけたまま、微かに笑って次の扉へ。


その時…。


壁の向こうから、階下を文字通り「破壊」しながら登ってくるレオンの咆哮が微かに聞こえた気がした。

「……レオン、もう少しだな。俺も負けてられない」



モノクルがなくても、現代知識(化学と逆算)で無双するハーベル!

薬剤師らしい「炎色反応」の活用が光りましたね。


マールの嫌がらせを涼しい顔で受け流す姿は、まさに強者の余裕です。


ついに98階…。

100階を目前にして、この塔最大の「壁」が崩壊します。

そして、ついにあの男と背中合わせになる時が――。

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