六元素の試練
ついに97階。
100階まで残り3階だ!
待ち受けているのは、ドワーフの少年マールによる「六元素の実験」だった。
しかし、ハーベルは正面から挑むつもりはなかった。
アーティファクト【虹色の瞳】で法則を見抜き、《エーテリアル・エンバー》で理を書き換える。
想定外の連続に、試験官のプライドはボロボロ!?
「……ご苦労様! 97階へようこそ!」
出迎えてくれたのは、幼い少女のドワーフ。彼女はハーベルが持つ【虹色の瞳】を受け取ると、それを精巧な銀の台座に嵌め込み、一つの「モノクル」へと作り変えた。
「これを右目に。……そこに見える『真実』を活用してね」
彼女が扉を開けると、そこには二頭身ほどの生意気そうなドワーフの少年、マールが腕を組んで立っていた。
「よお、兄ちゃん。僕はマール。ここからは僕が『元素の実験』を監督しちゃうよ!」
マールが指し示したのは、二列に並んだ計200本のロウソク。
「最初の実験は『炎』。制限時間は10秒。10秒以内に、炎属性の魔法だけで全てのロウソクに火を灯してね。失敗したら……死ぬまでやり直しだよ!」
「10秒で200本!? 無理だろ!」
ブリッツが叫ぶ中、ハーベルは右目のモノクルでロウソクの列を凝視した。
レンズ越しに、ロウソクの芯を繋ぐ「魔力の流動」が線となって見える。
「……なるほど、そういうことか。――《設定》、属性:炎、形状:線状貫通」
ハーベルは《エーテリアル・エンバー》を水平に構えた。
「プシュ、プシュ!」
放たれた二発の魔弾は、ロウソクの芯の数ミリ上を「一筆書き」で掠めるように一直線に駆け抜けた。
ボッボッボッ……!!
ドミノ倒しのように一瞬で灯る200の火。
「……正解だろ?」
「……えっ。あ、ああ……合格だよ」
マールの子供らしい顔が、一瞬で大人のように引き攣った。
「チッ、次は『水』の実験! 100m先のゴールまで潜り抜けてもらうよ。水と風の属性以外は禁止だ!」
目の前に広がるのは、底の見えない巨大な水槽。
ハーベルは再びモノクルで水面を覗き込む。水分子の結合強度が視覚化される。
「潜る必要はないな。――《グレイシャル》!」
プシュ…。ズズズズ…カキーーン!!
ハーベルが銃口を向けると、水面が瞬時に分厚い氷の道へと変わった。
「なっ……潜るって言っただろ!」
「属性制限は守ってるよ。氷は水の一部だ。……さらに、ショートカットさせてもらう。《バースト・エア》!」
パキューーン!!ドガーーーン!!
壁に向かって圧縮空気の弾丸を叩き込み、外壁ごとルートを破壊。
氷の上を滑るようにして、最短距離でゴールへ辿り着いた。
「……ありなのかよ、これ」
「ありだろ、ブリッツ。効率の問題だ」
ブリッツとマールが揃って口をあんぐりと開けている。
「最後は『風』だ! 100mの絶壁を渡って……」
「モノクルで見ると、上昇気流の結節点が見えるな。……風を固めれば足場になる」
トン…トン…トン…トン…トン…。
ハーベルは崖っぷちへ歩み出ると、空中を階段でも登るかのように悠々と歩き始めた。
精霊魔法で培った「風との対話」を、純粋な魔力操作に応用したのだ。
「……兄ちゃん、あんた何者だよ」
「ただの薬剤師さ。……さて、次に行こうか、マール」
「……くそっ、次こそは絶対に泣かせてやるんだからな!」
キャラ崩壊を起こして地団駄を踏むマールを尻目に、ハーベルは98階へと続く扉に手をかけた。
その時、足元から微かな振動が響く…。
ズドドドド、ズドドドドドドドド…。
地鳴りのような、凄まじい爆発音。
モノクルをかけた右目が、階下の壁の向こうで荒れ狂う「漆黒の魔力」を捉えた。
「……レオン。あいつも、すぐそこまで来ているのか」
圧倒的な効率で元素の試練を「ハック」していくハーベル。
新武器とモノクルの相性は抜群ですね。
しかし、マールの表情にはまだ不穏な余裕が……。
元素の実験は、まだ終わっていなかった?
そして、ついにレオンとの距離が物理的にゼロになります!




