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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン28【試練の塔編】

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魂の試練



精神の迷宮を突破し、次なる舞台は第92階「魂の試練」。


かつて大魔導師の魂を呑み込み、忌み嫌われる遺物となった【呪われた杖】を浄化せよ――。


不気味な洋館で出会う「ずぶ濡れの女」の正体と、最深部で待ち受ける老魔導師の正体とは?


ハーベルの「天然」と「キレ者」の両面が炸裂する!

挿絵(By みてみん)


「……次が92階か。休む暇もないな」

「ハーベル、ここの番人は少し癖が強そうだぜ」

ブリッツが警戒する中、入り口に立つドワーフが威圧的に問いかけてきた。


「おい、貴様。【呪われた杖】は持っているんだろうな?」

「ああ、これのことだろ」

ハーベルが《無限収納袋》から巨大なスタッフを取り出すと、ドワーフは目を丸くした。


「……まさか、本当に持っていたとはな。いいか、ここは【魂の試練】。かつて伝説の変幻杖【マーキュリアルスタッフ】に魅了され、魂を奪われた大魔導師を救い出すのが目的だ」

ドワーフの祈りを受け、ハーベルは重厚な扉を潜った。


扉の先は、冷気に包まれた古びた洋館だった。

「……うう、嫌な予感がするぜ」

肩に乗ったブリッツが身震いする。


「うう…うう…うう…グシュン…」


薄暗い廊下の先から、女のすすり泣く声が聞こえてきた。


ある部屋の扉を「ギギギ……」と開けると、そこには真っ白なドレスを着た、ずぶ濡れの黒髪の女性が立っていた。


「あの……大丈夫ですか?」

恐る恐る声をかけるが、返事はない。

立ち去ろうとした瞬間、冷たい右手がハーベルの腕を掴んだ。


「……待ちなさい」

ゆっくりと振り向いたその顔は、水でふやけ、キャッチャーミットのように膨れ上がっていた。


「私……キ……レ……イ……?」

いつものハーベルなら絶叫して逃げ出すところだが、彼はその瞳の奥にある深い悲しみを見逃さなかった。


「あ、ああ……(まあ、個性的だけど)」

「じゃあ……結婚してえええええ!!」

一瞬で顔面スレスレまで迫る女。


ハーベルは覚悟を決め、その冷たい身体をぎゅっと抱きしめた。

「す、すみません! 俺、既婚者なので結婚はできましぇん!!」

噛みまくった拒絶に、沈黙が流れる。


「……ぷっ、あははは! 『できましぇん』って何よ、それ!」

女の顔が元の美しい姿に戻り、楽しげに笑い出した。


彼女は裏切りによって入水し、誰にも見つけられぬまま彷徨っていた亡霊だったのだ。


「少し、心が軽くなったわ。……ありがとう、薬剤師さん」

アミュレットをかざすと、彼女は希望に満ちた笑顔で光の中に消えていった。


杖の呪いが、一つ解ける。


さらに、進むと最深部の地下室。

そこには長い髭を蓄えた、いかにも「賢者」然とした老人が待っていた。


「よくぞ来た。若き挑戦者よ、私の汚れを払ってくれ……」

「具体的にどうすれば?」

「その杖を……私に返してくれればいい。そうすれば私は天に昇れる」

老人は涙ながらに懇願するが、ハーベルは違和感を覚えた。


これまでの亡霊たちは、最後は杖に触れるだけで満足そうに消えていった。

だが、この老人は「杖そのもの」に異様な執着を見せている。


「どうぞ、お返しします」

ハーベルが杖を差し出した瞬間、老人の目がゾンビのように血走った。

「早くよこせ!! それは私のものだ!!」

猛然と飛びかかってくる老人。

しかし、ハーベルは寸前で杖を引き戻し、その額に杖の石突を一発お見舞いした。


「痛っ……何をするんじゃ!」

「杖を奪って完全復活するつもりだったんだろ。……あんた、天国に行く気なんてさらさらないね」

「……バカめ! 気づくのが遅い!」

老人が強引に杖を奪い取り、高笑いと共に呪文を唱えようとした。


その時、杖が眩い黄金の【マーキュリアルスタッフ】へと変貌を始める。


「これで私は全盛期の力を――《マーキュリアル・シフ……》」

「はい、そこまで」

ハーベルが電光石火の速さで杖を奪い返し、杖先を老人の口に突っ込んだ。


「もがっ……げほっ、ぺっ、ぺっ!」

「悪いけど、悪党に貸す武器はないんだ。《マーキュリアル・シフト》!」

ハーベルが逆に詠唱を放つと、老魔導師の身体が煙に巻かれ、一匹の老犬へと姿を変えた。


「キャンキャン! ワンワン!」

何か喚いているが、ハーベルは無視して肩をすくめる。


「……さて、相棒。伝説の杖も手に入れたし、次に行こうか」

「ハーベル、お前……時々本当に容赦ねえな…」

ブリッツが呆れながらも笑い、二人は93階への階段を駆け上がった。



まさかの「呪われた杖」が「伝説の変幻杖」にランクアップ!

狡猾な老魔導師を老犬に変えてしまうあたり、ハーベルの容赦なさが光りました。


残る試練はあとわずか。


しかし、塔の最上層では「レオン」がさらに不穏な動きを見せています。


塔に隠された「もう一つの時間軸」が、二人の運命を交錯させます。



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