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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン28【試練の塔編】

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精神の迷宮

新銃《Ethereal Ember SR99》を手に、無双の勢いで90階へと到達したハーベル。


しかし、そこで聞いたのはライバル・レオンが「二週間で一階から戻ってきた」という驚愕の事実。


焦燥の中、挑むのは第91階「精神の迷宮」。


魔法も相棒も禁じられた孤独な闇の中で、ハーベルは封印していた「前世の最期」と「幼少期の闇」を突きつけられる。

挿絵(By みてみん)


「……ついに、90階か…」

「ハーベル、顔が真っ青だぜ。一度、休もうか…」

ブリッツの言葉に従い、ハーベルは泥のように宿のベッドへ倒れ込んだ。


食堂へ降りると、給仕の少女が驚いたように声をかけてきた。


「お兄さん、10種類のアーティファクトを全部持ってるの? 凄い! ……一ヶ月くらい前かな、全部忘れて絶望してたレオンってお兄さんも、二週間で一階から戻ってきて全部集めてたわよ」

「……二週間で一階から?」

レオンの異常な攻略速度に、ハーベルの背筋に冷たいものが走る。


「……ブリッツ、悪い。すぐに行くぞ!」

「ああ、分かってる。アイツにだけは負けられねえもんな!」


91階――精神の迷宮…。

鍵となるのは【光のアミュレット】。


「ここでは魔法は一切禁止だ。ブリッツ、出口で待っててくれ」

「……死ぬなよ、ハーベル」


一人、真っ暗な迷宮へ…。


握りしめたアミュレットだけが、ハーベルの心拍に合わせて明滅している。

ある部屋に入ると、そこには巨大な「鏡」が置かれていた。


アミュレットを近づけた瞬間、耳を刺すような音が響く。


ゴトン、ゴトン、トントントン……。


「これって……分包機の音?」

記憶の底から、薬剤師時代の光景が溢れ出した。


鏡の中に映るのは、上司に罵倒され、すべての責任を押し付けられる無力な自分。


『君のミスだ。責任を取れ。許されるまで帰ってくるな!』

過労で霞む視界。震える指先。

そして――自宅のPC前で動かなくなった「俺」の最期…。


「……ふざけるな!!」

ハーベルの怒りに合わせ、アミュレットが激しく発光した。


鏡の中の「俺」に向かって、ハーベルは力強く言い放つ。

「逃げていいんだよ。責任感は大事だが、自分を殺してまで守る価値のある場所なんてない。……法的に戦う手段だって、いくらでもあったはずだ。気づけ、俺!」

鏡の中の薬剤師がハッとした顔で受話器を取る。


その瞬間、闇の記憶は霧散した。


だが、迷宮は容赦しない。

次に現れたのは【過去】【現在】【未来】と記された三冊の本。


【過去】の頁を開くと、そこには両親に捨てられ、施設でいじめられ、教師からも『クズ』と呼ばれた少年の日々があった。


「……やめてくれ!!」

涙が止まらない。

心の奥底に沈めていたドロドロとした孤独が、ハーベルを飲み込もうとする。


しかし、その闇を切り裂いたのは、今世で出会った人々の声だった。


ネル、エリス、レオン……そしてブリッツ。

「……今の俺には、守るべき世界がある。この痛みも全部、今の自分を作る糧だったんだ」


【現在】の本は眩いばかりの光を放ち、一点の曇りもなかった。


そして最後に開いた【未来】…。


アミュレットがこれまでにない輝きを放ち、ハーベルの脳裏に「予言」を焼き付ける。


高く昇る太陽と、寄り添う月。


そして――それらを囲むように浮かぶ、禍々しく巨大な「四つの黒い星」。


「あの星は、一体……」

光が収まると、そこは迷宮の出口だった。


「よっ、ハーベル! 酷い顔だぜ!」

肩に飛び乗ってきたブリッツの重みに、ハーベルは心底安堵して深い溜息をついた。


「ブリッツ…ありがとう…」



精神を削る過酷な試練。

前世の過労死、今世の孤児としての記憶。


それらを乗り越えたハーベルが見た「四つの黒い星」は、魔王軍、あるいはさらなる災厄の予兆なのでしょうか…。


ついに次は第92階、魂の強さが問われます。


物語はいよいよ、頂上へと加速します!

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