真の試練
圧倒的な速さで塔を蹂躙し、ついに89階へと到達した天才・レオン。
しかし、ゴールを目前にした彼を待ち受けていたのは、あまりに無慈悲な「仕様」の壁だった!?
一方、寄り道を楽しみながら60階の街に辿り着いたハーベル。
彼はそこで、一人のドワーフの少女と、運命を変える「未完成の武器」に出会う。
効率か、探索か…。
二人の差が、ついに残酷な形で現れる!
塔に挑み始めて一ヶ月…。
「ゴールデン・オブリビオン!!」
チッチッチ…チチチ…。
ギョエェェェェ……!!
レオンは驚異的なスピードで89階の敵を殲滅していた。
「……千年迷宮に比べれば、歯応えがないな」
エーテルウィスパーを軽く振り、最後の一体を消滅させる。
だが、レオンの心には拭えない違和感が、喉に刺さった小骨のように残っていた。
「レオン、さすがに90階で一度休みましょう」
相棒ミーシアの勧めで宿をとったレオン。
食事に降りると、店主のドワーフが気さくに声をかけてきた。
「よお兄ちゃん、すげえな。ここまで来るのにアーティファクトはいくつ見つけたんだ?」
「……アーティファクト?」
レオンの動きが止まる。
「なんだ、知らないのか? 30階や60階の街でいくらでも情報は転がってただろうに…」
「まさか……兄ちゃん、まさか…0種類ってことはないよね?」
配膳をしていたドワーフの女の子が、お皿を洗う手を止めて聞き返してきた。
「0だが。……それが何か?」
レオンが平然と答えた瞬間、食堂の空気が凍りついた。
「えっ………。」
「……兄ちゃん、ご苦労さんだったな」
店主が憐れむような目でレオンの肩を叩く。
「……ちょっと待て。どういうことだ?」
「どういうことも何も! 91階から始まる『真の試練』は、10種類のアーティファクトを捧げないと扉すら開かないのよ!」
女の子が机をバシッと叩いて詰め寄ってきた。
「寄り道もせず、情報収集もせず、ただ階段を昇ってきただけですって!? あなた、一階からやり直しよ!」
「……マジか…」
「マジよ!!」
天才・レオン、痛恨のミス…。
レベルやトークンは引き継げるとはいえ、また一階からフラグを回収し直さなければならない。
「ミーシア……やっちまった…」
「レオンとしたことが……。でも、今のレオンなら一瞬で戻ってこられるわよ」
落ち込むレオンは、苦い食事を終えると、再び一階へと戻る決意を固めた。
「ちっ…リタイア!!」
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
一方その頃、ハーベルは60階の街をのんびりと散策していた。
「これでアーティファクトは8種類か。あと2つだね、ブリッツ!」
「【真実の花】に【虹色の瞳】……相変わらず使い道は謎だがな……」
ハーベルの手元には、老婆から譲り受けた【呪われた杖】を筆頭に、着実に「鍵」が集まっていた。
「ブリッツ、武器屋に寄りたいんだ。銃……みたいな射撃武器があればいいんだけど…」
街を歩いていると、一軒の鍛冶屋の前で、一人のドワーフが複数の男たちに絡まれていた。
「キャー!」
「うるせえな!!」
「おい、やめろよ!」
見過ごせずに割って入るハーベル。
「うるせえ人間が口出しするな!」
襲いかかるドワーフたちを、ハーベルは軽く宙を舞ってかわすと、着地ざまに全員をドミノ倒しにした。
「大丈夫か?」
ハーベルが助け起こしたのは、顔に傷を負ったドワーフの少女だった。
「レストレーション!」
ハーベルが優しく手をかざすと、彼女の傷跡が瞬時に消えていく。
「あ…ありがとう。私はドリッシュ。
……武器を探してるの?」
「ああ。少し特殊な注文なんだけど、できるかな?」
案内された店は、お世辞にも立派とは言えないボロ小屋だったが、ハーベルの目は一点に釘付けになった。
奥に置かれた、金属製の柄を持つ斬新なフォルムのスタッフ。
「……いいセンスだ。ドリッシュ、この柄の作り、君がやったのか?」
「ええ、私の自信作よ! ……本当は別のものを作るつもりだったんだけど、失敗しちゃって…」
「いや、素晴らしい。ドリッシュ、この技術があれば……『銃』が作れるかもしれない」
「銃…って何?」
ハーベルの「転生薬剤師」としての知識と、ドリッシュの「鍛冶」の才能。
塔の半ばで、最強の魔導兵器が生み出されようとしていた。
最上階目前で「詰んだ」レオンと、着実にフラグを回収し、新武器の作成にまで漕ぎ着けたハーベル。
明暗がはっきりと分かれました。
しかし、レベル90のレオンによる「一階からの超特急・回収劇」もまた見ものでしょう。
ハーベルが提案する「特殊な武器」とは?
そしてドリッシュの鍛冶師としての意地が爆発します!




