アーティファクト
連続戦闘に次ぐ戦闘…。
Lv.30に到達したハーベルの前に現れたのは、塔の過酷さを忘れさせる「休息の街」。
しかし、ただ休むだけで終わらないのがハーベル。
一匹の白猫に導かれた先で出会ったのは、塔の真実を知る(?)謎の老婆と、およそ実用性ゼロに見える奇妙な遺物「アーティファクト」。
一方、先行するレオンは圧倒的な破壊力で階層を蹂躙し、すでに50階へと到達していたが……。
「……まだ、30階か。さすがに堪えるな」
「ハーベル、肩の力抜けよ。ここの空気、今までと違うぜ」
ブリッツに促され顔を上げると、そこには石造りの建物が並ぶ賑やかな街が広がっていた。
30階ごとに設置された中継地点。
ドワーフたちの住まう休息の街だ…。
宿屋に向かう道中、ハーベルは一匹の美しい白猫と目が合った。
「ふふ…可愛いな…うん?」
スッと逃げるその影を、本能的な予感に従って追う。
辿り着いたのは、街外れにぽつんと建つ古びた一軒家だった。
「お邪魔します……」
「……おー。よくここが分かったのう、むにゃむにゃ……」
部屋の奥、ロッキングチェアに揺られていたのは、今にも眠り落ちそうなドワーフの老婆だった。
「婆さん、ここをクリアした奴はいるのか?」
「いまだにおらん……。クリアした者が現れれば、他の挑戦者は強制的に元の場所へ戻されるじゃろうな。……ところで、そこの杖。邪魔じゃから持っていけ…むにゃむにゃ」
老婆が指差したのは、古びて苔むした巨大なスタッフだった。
「デカすぎだよ。要らないよ、そんな邪魔なもの」
「おいハーベル、そこは貰っておけよ!」
ブリッツのツッコミを無視しつつ、ハーベルは名案を思いつく。
「あ、そうだ。作ればいいんだ。《設定》開始――ターゲット、この革袋」
老婆から譲り受けた古ぼけた袋に、薬剤師時代の知識と魔導を流し込む。
「定義:内部空間の無限拡張、および時間停止。……よし、《無限収納袋》の完成だ」
「……え、何それ。ルール違反だろ!!」
絶句するブリッツを余所に、ハーベルは巨大なスタッフ…、
―アーティファクト【呪われた杖】ー
を袋に放り込んだ。
さらに道中で手に入れていた「時の砂時計」や「霧の指輪」など、用途不明のガラクタたちを整理していく。
「婆さん。これ、全部で何種類あるんだ?」
「……10か20か……忘れたわい。むにゃむにゃ……」
ハーベルは直感していた。
この「一見役に立たないアイテム」を10種類集めることこそが、最上層へ至る真の鍵であることを…。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
一方、ライバルのレオンは凄まじい速度で塔を駆け上がっていた。
すでに50階…。
休憩など不要と言わんばかりの猛追である。
「レオン、全然休んでないけど大丈夫?」
「ああ。早くクリアした方が、ハーベルを驚かせるからな」
相棒のミーシアが心配する中、レオンは50階の試練「無限ゾンビビル」に直面していた。
閉鎖空間に溢れ出す死者の群れ。
チマチマと倒すことに飽きたレオンは、ビルの外壁を蹴って一気に地上へと飛び降りた。
「……面倒だ。まとめて消えてもらおうか…」
途中手に入れた愛用のセプターを天に掲げる。
「ヴォイド・コラプス!!」
極小の闇の球体が着弾した瞬間、ビルの下層階を飲み込むほどの重力崩壊が発生した。
ピッ…ズドドドド…ドキャーーン!!
支柱を失った巨大なビルが、轟音と共に垂直に崩落していく。
「レオン、無茶苦茶ね……」
「効率がいいだろ?」
不敵に笑うレオン。しかし、彼はまだ気づいていない…。
ハーベルが街で「白猫」と出会い、塔の真の攻略法に一歩近づいたという事実に…。
爆走するレオンと、寄り道でフラグを回収するハーベル。
現在、レオンは50階、ハーベルは30階。
数字の上ではレオンが圧倒していますが、ハーベルの手元には5つの「アーティファクト」が集まっていました。
塔の難易度が激変する後半戦。
二人の進む道が、ついに大きく交差します!




