ジリ貧
「俺、Lv.1だった!」
ドラゴンを倒したものの、己の脆弱さを再確認したハーベル。
次なる試練は「拳闘士の間」。
乏しいトークンをやり繰りし、装備を整え、文字通りの肉弾戦に挑む。
一方、先行するレオンの前には、自身の写し鏡である「銀のスライム」が立ちはだかり、命の魔力をじわじわと…。
試練の塔、本格始動!
ハーベルは光のエスカレーターを昇り、次なる階層へと足を踏み入れた。
そこは、荒々しい熱気が漂う「拳闘士の間」。
「おい兄ちゃん、丸腰じゃ死ぬぞ。ここで武器を買っていけ!」
ドワーフに連れられ入った武具屋。
棚には様々なナックルが並んでいるが、どれも溜息が出るほど高価だった…。
「残高はどうなってるかな……お、増えてる!」
スマホを確認すると、前回の報酬でトークンが補充されていた。
ハーベル ♂ Lv.2
魔力:1500(伸び率がおかしい)
トライアルトークン:2000
魔法属性:光2 / 水2 / 風1……
「ハーベル、これなんかどうだ?」
ブリッツが指し示したのは、青白い火花を散らすナックル。
『ボルトストライク』R
「雷属性か。しっくりくるな!」
2000トークンをタッチ決済(?)で支払い、全財産を投じて装備を整えた。
「よっしゃ、ブリッツ。魔力を分けておくよ」
相棒の宝石に魔力を注ぎ込み、準備は万端。
扉の先で待ち構えていたのは、巨大なアイアンゴーレムだった。
「はあああ! 喰らえ、《雷神拳》!!」
ハーベルが拳を突き出す。……しかし、何も起きない。
「あ、れ? まだレベルが足りなかった……」
バシュ…ドガーーーン!!
硬直したハーベルを、ゴーレムの鉄拳が容赦なく弾き飛ばした。
「ぐはぁっ! 痛ってぇぇ……まだ使えないのかよ!」
壁に激突しボロボロになりながらも、ハーベルは即座に立ち上がる。
突進してくるゴーレムを紙一重でかわし、その腕を掴んだ。
「これならどうだ! 《ボルトストライク》!」
ナックルから放たれた高圧電流がゴーレムの巨体を硬直させる。
「仕上げだ! 《ライトニング・ショット》!」
電撃を纏った拳を振り抜くと、雷の塊がゴーレムの頭部を直撃。
鉄の巨躯が熱でドロドロに溶け落ちた。
「ふぅ……。ブリッツ、回復お願い!」
「任せな! ナイス根性だぜ、相棒!」
尻尾でハイタッチを交わし、ハーベルは着実に「拳」の練度を上げていった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
一方、レオンはすでに五階へと到達していた。
「ここが最初の中ボスだ。……気をつけろよ」
管理人のドワーフが扉を開く。
そこにいたのは、銀色に輝く小さなスライムだった。
「これが、中ボス……?」
拍子抜けするレオンだったが、スライムに触れた瞬間、戦慄が走った。
銀色の流動体はもごもごと形を変え、レオンと全く同じ姿、同じ装備へと変貌したのだ。
「レオンだ! レオンが二人いるわ!」
相棒のミーシアが叫ぶ。
スライムはレオンの動きを完璧にトレースし、ブラッディーナイフでの格闘を仕掛けてきた。
キンッ、キンッ…キンキンキンッ!
激しい火花が散る。
攻撃を当ててもスライムは無傷だが、レオンは微かな掠り傷から魔力を吸い取られていく。
「レストレーション!」
レオンが回復魔法を唱えれば、スライムも同時に回復する。
まさに鏡写しの死闘…。
「……なるほど。僕の動きをなぞるだけなら……」
レオンはナイフを収め、静かに命じた。
「ミーシア、お前の番だ。爪攻撃!」
「分かったわ!」
ミーシアが空からスライムへ襲いかかる。
スライムは微動だにせず、なすがままに引き裂かれていった。
「やっぱり……トレース対象以外の介入には対応できないのか。ミーシアがいなければ、魔力が尽きるまで削られる『ジリ貧』の戦いになるところだったよ…」
レオンは安堵の溜息をつき、魔力増強のために風魔法で体を浮かせたまま(空中浮遊修行)、次なる階層を見据えていた。
二人とも順調に階段を昇っていますが、塔の本番はここからです。
レベルアップによるステータス上昇、新たな武器、そして「自分を超える」試練。
次なる階層では、失われた古代の遺物――「アーティファクト」が彼らを待ち受けています。
最強の薬剤師と天才魔導師、その差が少しずつ開き始める……!?




