召喚の間へようこそ!
Lv.1へのリセット。
それは、これまで積み上げてきた「暴力的なまでのステータス」に頼らない戦いを強いる試練。
一方、別のルートを進むレオンもまた、新たな相棒と共にその天才的な戦闘センスを発揮し始めていた。
「あ、危ねぇ……。Lv.1だったのを忘れてたよ」
瓦礫の中から這い出し、ハーベルは苦笑いしながら土埃を払った。
「ワンパンで即死したかと思ったぞ! ハーベル、そんな余裕あんのかよ!」
肩に乗ったブリッツがハラハラと叫ぶ。
ドラゴンの右拳が再びハーベルを押し潰そうと振り下ろされる。
ブオォン!!
だが、ハーベルの瞳は冷静に敵の動きを見切っていた。
「グレイシャル・スピアー!」
最短の詠唱。
地面から突き出した極太の氷槍が、ドラゴンの右掌を串刺しにして地面に縫い止める。
ぐおぉぉぉぉーー!!
ブオォン!!
狂ったように左拳を叩きつけるドラゴン。ハーベルは紙一重のバックステップでそれをかわすと、すかさず二発目を放った。
「《グレイシャル・スピアー!》……二連。逃がさないよ」
左手もまた、氷の楔によって地面へと固定される。
ウギャァァァーー!
身動きを封じられ、悲鳴を上げるレッドドラゴン。その眉間に向け、ハーベルは高く跳躍した。
「これで終わりだ。《グレイシャル・ハンマー》!」
頭上に巨大な氷の質量を顕現させ、一気に叩きつける。
ズドドドド…ドゴン!!
轟音と共に、ドラゴンの巨体が床に沈み、意識を失った。
「……殺さないのか?」
「ああ、必要ないだろ。試練は突破したんだ」
ハーベルが微笑むと、どこからか「合格だ」と声が響き、二階へと続く扉が開いた。
「ブリッツ、回復を頼めるかな。Lv.1だと、今の魔法三発で魔力が底をつきそうだ」
「任せな! お前の魔力で完全復活した俺の力、見せてやるよ」
ピカーーン!
ブリッツの虹色の宝石が輝き、温かな光がハーベルを包み込んだ。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
一方その頃…。
レオンもまた、《シャドウ・クエスト》の試練に臨んでいた。
傍らに従えるのは、漆黒の羽を持つ霊獣「レイブンシャドウ」のミーシア。
「ミーシア、行けるか?」
「ええ、レオン。影を縫い、隙を作るわ!」
ドラゴンの猛攻に対し、レオンは顎に手を当てた「思考中」のポーズのまま、無駄のない動きで翻弄していた。
右拳を振り抜かれればその拳の上に飛び乗り、振り払われれば伸身の宙返りで軽やかに着地する。
「なるほど。ステータスはリセットされても、僕自身の身体能力までは奪えないらしいな」
冷徹な観察眼…。
レオンはドラゴンの懐へ潜り込むと、指を鳴らした。
パチンッ!!
「ミーシア、今だ!」
「シェード・スネア!」
ミーシアが放った影の魔法が、ドラゴンの足元の影を虎バサミのように噛み砕き、その動きを完全に止める。
「上出来だ。――《エボンレイ》!」
レオンの指先から放たれた漆黒の光線。
魔法の威力こそ低下しているものの、針の穴を通すような精密射撃がドラゴンの眉間を正確に撃ち抜いた。
「ふぅ……精度さえ維持できれば、Lv.1でもやれるな」
レオンは翼を休めるミーシアの頭を撫で、自らのステータスを確認した。
レオン ♂ Lv.1
魔力:1050
霊獣:ミーシア(魔力 500)
スキル:解析、分解、破壊、精製、合成、構築
「効率よく魔力量を増やすか……」
レオンは節約と増強を兼ね、風魔法で床からわずか1cmだけ体を浮かせたまま、次なる階層へと歩き出した。
ハーベルとレオン。
正反対の戦い方をする二人の「天才」が、塔の第一層を突破しました。
しかし、塔はまだ始まったばかり。
レベルアップの恩恵が薄いこの異次元空間で、彼らを待ち受けるのは「リソース管理」という名の過酷な現実でした。
限られた魔力、限られたトークン。
一歩間違えれば詰む、究極のサバイバルが始まります!




