幸運な未来へ
燃え盛る都、暴走する魔鉱炉。
滅びゆく【ムーンヘブン】の上空で、四人の若き英雄たちが手を取り合う。
「時間」を巻き戻し、「幸運」で上書きする前代未聞の禁術。
因果の果てに、彼女が見た景色とは――。
「……本当に、ひどい有様ですね」
空中を舞うオウカが、眼下に広がる廃墟を見て悲痛な声を上げた。
「時間がない、作戦開始だ!」
リーダーシップを執るレオンの指示で、四人は爆心地の真上へと陣取った。
ハーベルがオウカを、レオンがクラリッサを支え、魔力をダイレクトに流し込む。
「いきます……! 《テンポラル・リワインド・エンシェント》!!」
オウカの絶叫と共に、真っ白な光のドームが国全体を飲み込んだ。
破壊されたビルが組み上がり、噴き出す炎が吸い込まれ、流れた血が消えていく。まるで映写機を逆再生するように、壊滅した都が本来の「銀色の輝き」を取り戻していく。
「すごい……本当に戻ってる……!」
クラリッサが感動に震えるが、ハーベルとレオンは必死に魔力を注ぎ続けた。
「オウカ、持ちこたえろ! 限界まで魔力を送るぞ!」
「……今です! クラリッサ様!」
「任せて! 《ラックシャード・デスティニー・ブレッシング》!!」
巻き戻された「過去」という不安定な世界線に、クラリッサが「幸運」という楔を打ち込む。
これで、魔鉱炉が再び爆発するという「運命の収束」は断ち切られた。
そして最後――。
「ネクスジェン・クロノ・ジャンプ!」
自身の「眠り」を回避するため、オウカは数年後の未来へ自らを飛ばした。
激しい閃光が収まった後…。
そこには、十代だったはずの姿から、二十歳ほどの美しい大人の女性へと変貌を遂げたオウカが立っていた。
長い黒髪が風に棚引き、その凛とした佇まいに、ハーベルとレオンは思わず目を奪われる。
「……オウカ、なのか?」
「はい。少し、君たちよりお姉さんになっちゃったね!」
悪戯っぽく微笑む彼女。
その美しさに、クラリッサが頬を膨らませてレオンの脇腹を小突いた。
「ちょっとレオン、見惚れすぎじゃない?」
「あ、いや……これはその、びっくりしただけで……!」
一行は、復元されたばかりの市街地へ降り立った。
そこへ、一人の男が慌ただしく駆け寄ってくる。
「貴様ら、何者だ! 侵入者か!」
「マルスさん……!」
ハーベルが声をかけるが、そこには記憶のズレがあった。
今のマルスにとって、彼らは「襲撃前の平和な時に突然現れた不審者」でしかない。
話が通じず、衛兵を呼ばれた一行は、一旦【ルミナラ】へ撤退することにした。
【ルミナラ】にて、リーフィア師匠との再会。
「……オウカ、立派になったわね。今のあなたなら、私の術も使いこなせるわ」
「はい、師匠。これからも精進します!」
一方、ハーベルは呆然としているメルキドと、泣き崩れていたリナに告げた。
「メルキドさん、リナ。……【ムーンヘブン】は元に戻りました。マルスさんも、生きています」
「本当……本当に!?」
リナとメルキドは、転移装置に飛び込み、自国へと舞い戻った。
そこには、何事もなかったかのようにそびえ立つ魔鉱炉と、平和な街並みがあった。
「メルキド博士! リナ! どこへ行っていたんですか!」
駆け寄ってきたマルス。
リナはなりふり構わずマルスに抱きつき、その胸で大声を上げて泣きじゃくった。
「えっ、ちょ、リナ!? 博士の前だぞ、不謹慎な……!」
顔を真っ赤にするマルス。だが、それを制したのはメルキドだった。
「……いいんだ、マルス。今は、好きなだけ泣かせてやりなさい」
メルキドは静かに目を閉じ、一筋の涙を流した。
「……失って初めて気づくことがある。傲慢だった私を、彼らが救ってくれたのだな…」
独裁者の心に、初めて「感謝」という灯がともった瞬間だった。
奇跡の因果逆転、大成功!
代償を背負い成長したオウカという新たな戦力に加え、偏屈だったメルキドもついに心を開きました。
これで四聖獣の神器を携える王たちが、真の意味で一つになります。
魔王軍との最終決戦に備え、ついに全国家が公式に同盟を締結。
ハーベルが提案する、前代未聞の「魔導同盟」とは!?




