我 抱き枕になる
「ふぁー」
ふかふかのベッド上で我はゆっくりと目を覚ました。
そして若干の息苦しさと、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
ああ、またか。我は寝ぼけた頭でそう思った。
何が起こっているのかといえば、茜に抱きしめられて身動きが取れなくなっているのだ。
これも最近よくある光景の一つだ。彼女はどうやら我を抱き枕のように抱きしめて寝るのがお気に入りのようで、我はなすがままになっている。
別に問題はないのだけど、強いと言えば少し熱い。
それにこの状況から抜け出すことはなかなかに難しい。
華奢な見た目に反して後輩の力が強いのか、それとも我の力が無くなったのか。
どちらせよ自力で脱出することが出来ないのだ。
なので開き直って彼女の可憐な寝顔を堪能させてもらう。
この距離で茜の寝顔は見れるこの場所はなかなかな特等席だと思う。
にしても、こうやって間近で見ると改めて思う。
まごうことなき美少女だと。二重で大きな瞳に薄桃色にぷくりと膨らんだ唇、筋が通った小さい鼻。芸能人かと見間違えるほどの可憐な容姿をしている。
きっと我とは違って、さぞかしおモテになる人生を送ってきたのだろう。
まあ、美少女ゆえの苦労も当然のことながらあったのだろうけど。
茜と初めて会った時も男たちにナンパをされて困っていたし。
そんなことを考えながら彼女を見ていたら、まつ毛の長い瞼がゆっくりと開いた。
どうやら茜も起きたみたいだ。もう少し茜を見ていたい気持ちもあったのだけどしょうがない。
「おはようございます…先輩…」
意識が覚醒したばかりだから、寝ぼけ目で声も出ていない。そんな姿も可愛くて、なんだか愛おしく感じる。
「おはよう」
愛おしい? 我は今まで彼女にそんな気持ちを向けたことがあっただろうか?
ふと、頭の中に浮かんだワードに引っ掛かりを覚えた。
そして寝ぼけた頭で少し考えて、考えるのをやめた。
そもそも寝起きで脳があまり回転してないので上手く思考できない。
まあ、そんなに深く考えるようなことでも無いし問題ないだろう。
我は無意識のうちに思考をシャットダウンした。




