我 覚悟をする
あの日の出来事から色々と考えた。正直なところ考えたくないことばかりが脳内に浮かんで苦しい時間だった。
そうやって悩みに悩んだ。でも、考えたところで答えが出るわけではなくて。
結局、我は気になっていることを本人に直接聞くことにしたのだった。
「あ、茜って……付き合ってる人いる…の?」
覚悟を持って彼女に聞いたはずなのに心臓の音がバクンバクンとうるさいぐらいになっている。
それでもちゃんと言うことが出来た。途中途中で噛んでしまっていたけれど。
「え、付き合っている人ですか? いませんけど…急にそんなこと聞くなんてどうしたんですか?」
確かに茜からしたら、いきなりそんなことを質問されるとは思っていなかっただろう。
なんでそんなことを聞かれるのかと疑問に思ってもしょうがない。
我が逆の立場でもそう思う。
「この前、異性と楽しそうに歩いているのを見たから」
「異性? あー、多分それは兄のことですね」
「兄…?」
「そうです。久しぶりに会ってきたんですよね」
「そうなんだ。お兄さんだったんだ」
そっか。
全部、我の考えすぎだったんだ。
「はい。いきなりそんなこと聞いてくるなんて先輩…もしかして焼きもち焼いちゃいました?」
焼きもちなんて可愛い感情だけじゃなくて、あの日も次の日も色々なことを考えた。
「うん。茜の彼氏かと思って凄い焦った」
「え……?」
でも、茜のお兄さんのおかげでモヤモヤとした気持ちが吹っ切れた。
「でも彼氏じゃないなら気兼ねなく言えるね」
我は心の底から茜が好きなのだと。仕事をしている時の真剣な表情、我を着せ替え人形にしている時のはしゃいでいる顔、お互いの体が触れた時の体温、我の名前を愛おしそうに呼ぶ声。
語り出したらキリがない。
彼女の全部が大好きだ。
「何をですか…?」
もう茜がいない日々なんて想像できない。
もう彼女を誰かに取られるなんて考えたくもない。
もうこの好きという感情を抑えることが出来そうにない。
「貴女のことが大好きです。我と恋人になってくれませんか?」
そうして、我はついに自分の気持ちを茜に伝えたのだった。
これでもう後に戻ることはできない。




