我 無理みたいだった
夕飯を食べてお風呂を済ませたあと、寂しい気持ちを紛らわすためにソファで推しの配信を見ていると、一通の通知が届いた。
それは茜からのメッセージだった。
『起きてますか先輩? もうすぐ家に着きますんで、いい子で待ってて下さいね〜』
その文章を見ただけで心が躍った。後輩からのもうすぐ帰るというメッセージを見ただけで、さっきまでの鬱々と気分が吹き飛ぶ。
我ながらなんと単純なことか。
『起きてる。了解』
我の気持ちとは裏腹に短い文章での返信。全くもって素直ではないし、可愛げがないなと自分でも思う。
でもそんな簡単に茜に対して今の気持ちを表現することはできない。
いくらなんでも恥ずかしすぎる。我はそんなストレートに自分の感情を出すタイプではないのだ。
・・・
茜からのメッセージを見た我は彼女の帰りを待ちきれず、リビングでソワソワしながら後輩が帰って来るのを期待して待っていた。
そうやって過ごしているうちに時間が経過し、ふと玄関の方で音が聞こえた。
耳をすませばドアの開く音が聞こえる。
ようやくだ。
我は連絡が来てからずっと彼女が帰宅するのを心待ちにしていたのだ。
ああ、早く彼女に会いたい。
でも、急いで玄関に向かうような事はしたくはなくて。リビングで茜が入ってくるのを期待し、静かに待機していた。
そして、ついにその瞬間がやってくる。ドア越しに後輩の姿が見えたのだ。
「ただいま帰りましたー」
「おかえり」
「遅くなってすいません」
「別に問題ないよ」
本当はもっと早く会いたかった。
「いい子でお留守してましたかー?」
「子どもじゃないんだから大丈夫だよ」
全然大丈夫じゃなかった。
「でも先輩。私が居なくて寂しかったでしょ?」
「別に。もっと遅くても大丈夫だった」
本当は寂しかった。茜がいないだけでこんなにも喪失感を感じるなんて想像もしなかった。
「うー、先輩がそっけない」
ああ、やっぱり茜が好きだ。
我が彼女に向けている感情は友情ではなく恋心だ。
気づかないフリをしようとしたけど、どうにもそれは無理みたいだ。




