我 分からない
「なんか違う」
今日は用事があるらしく、茜は帰りが遅くなると言っていた。
なので我は留守番をしているのだけど、違和感を凄く感じる。
原因はなんなのか。その答えはきっと彼女が側に居ないことだ。しかもすぐには帰ってこないことが分かっている。
自分しか居ない部屋がこんなにも寂しいと思うのは初めてかもしれない。
我は基本的にインドアな人間で1人の時間を好んでいる。
それに大学に入ってからはずっと一人暮らしをしていたので、孤独な時間には慣れているはずだった。
そんな自分がこんな気持ちになるなんて…
寂しさを埋めるべく手元にあったスマートフォンをいじるが効果が薄い。
ああ、茜の帰りが恋しい。ふと時刻を見てみるが、まだ16時を過ぎたところで彼女の帰宅時間まではほど遠い。
後輩が帰ってくるのは23時過ぎだと言っていた。
あー、こんなに時間が早く過ぎてほしいと思うのは久しぶりだ。
子どもの頃は誕生日の前日になると、プレゼントが欲しくて早く次の日になればいいのにと思っていたことを思い出した。
あの時の気持ちと少し似ている。今の我が心待ちにしているのは子どもの時とは違ってプレゼントではないが。
茜と暮らすことが自分の中でいつの間にか当たり前のことになっていた。
いつから彼女はこんなにも我の気持ちを乱す存在になったのだろうか?
ああ、彼女の帰りが待ち遠しい。玄関のドアが開く音を、後輩の口から発せられる「ただいま」の声が無性に聞きたい。
日に日に茜の存在が我の中で大きくなっていく。自分でもこの感情をどうしたらいいのか分からない。
果たしてただの後輩に普通の先輩はこんな感情を抱くのだろうか?
分からない。いや、もしかしたら分からないフリをしているのかもしれない。今の生活を壊したくなくて。
考えたら、名前をつけたら、何かが変わってしまうかもしれなくて……そのことに恐怖を感じている自分がいた。




