我 変化を感じる
すっかりと日も沈みあたりが暗くなってきた頃、我はリビングでいつものごとくゴロゴロとしていた。
テレビで撮り溜めたアニメを見ながらお菓子を食べるという至福の時間である。
最近は毎クール毎クールアニメの数が多くてセレクトするのが大変だ。
嬉しい悩みではあるのだけど、ついアニメを撮り溜めてしまう。
「せーんぱい!」
「むぎゅっ…!」
そんな風に過ごしていたら、急に近寄ってきた茜に後ろからいきなり抱きしめられた。
「あー、生き返るー! 仕事で疲れた体に楓ニウムが効きますわー」
今日の後輩は朝から机で作業をしていたので疲れが溜まっていたのだろう。
我をぬいぐるみのように抱きしめることで彼女が回復するのなら好きなだけ抱きしめればいい。
茜にはその権利がある。
「うーん、スーハースーハー。今日の充電完了!」
「満足した?」
彼女がそう言ったので、我はもう大丈夫なのか確認する。
「やっぱりもう少しお願いします」
すると続投の返事が返ってきた。本当のところ我も、もう少し抱きしめられていたかったのでよかった。
「了解」
「スーハースーハー。あー、生き返る!」
この家に来て最初の頃は、抱きしめられて匂いを嗅がれるという行為をされることに対して引いていたが、近頃の我はそれに順応してきているように思う。
むしろ彼女が喜んでいる姿を見て嬉しくなっている自分の姿がある。
抱きしめられているから茜の表情を見ることが出来ないのだけれど、彼女の反応を想像して温かい気持ちになる。
茜のことを考えているだけで楽しいし、触れられると嬉しい。彼女が笑ってくれると自分のことのように喜びを感じる。
こんな風に茜のことを思うことは最近までなかった。
この家に住むようになってからだ。我はこの変化を悪いことだとは思っていない。
だって前よりも毎日が楽しいのだから。
今の環境を失いたくない。ずっと茜と2人でこの生活をしていたい。
我は強くそう思った。




