第9話 ルドルフさん、ぶち切れる!【ルドルフ視点】
「あれ? ルドルフ様、リアナ様は……」
「うるさい! さっさと出せ!」
僕は半ば怒鳴りつけるように、馬車の御者にそう命じた。
だがしかし、そんな程度ではこの怒りは到底収まりそうもない。
リアナの泣き顔を拝んでやろうと、わざわざ宮廷裁判所まで連行して裁判沙汰にまでしてやったというのに、この結末はなんだ!?
何故あんな女が、アルファリオ王太子殿下に庇われるようなことが起きる!?
「……ふざけている。宮廷貴族の一部は我がリンドバーグ家に大きな借りがあるはず。今回の裁判も必ず僕が勝つように買収済みであったというのに。もしや、ラファエルお父様から宮廷貴族への伝言が上手くいっていないのか?」
いや、しかしそれにしたとしてもあの殿下の反応はおかしい。
リアナの裁判官に対する態度だけでも、普通に考えればその場で不敬と処されてもおかしくないはずだ。
そもそもリアナのあの態度はなんなんだ?
初めて出会った時とうちに来たばかりの時のあの態度は多少偽りであったのはわかる。女は猫を被るものだからな。
しかし、それを度外視したとしてもあのような下民が並べるような言葉遣い、とても貴族の娘とは思えん。
メヴィウス家ではああいう教育方針なのか?
「……リアナ本人を裁けないなら」
そうだ。
この事実をメヴィウス家に訴え、奴らから多額の賠償金をせしめてやる。
元々、今回の結婚もメヴィウス家の者たちから是非とせがまれて了承したようなものだ。
確かに領地見学という名の隣接領への偵察がてら訪れたメヴィウス領という貧乏田舎領地に、あのような美人な女がいたことは驚きだった。
彼女の、サラサラなプラチナブロンドヘアーと吸い込まれるような琥珀の瞳。そして華奢で細身な割に発達した美麗な胸の形、柔らかそうな肌感は僕を惹きつけた。
「キミはこの領地の娘か?」
僕がメヴィウス領内の街道を歩く彼女に僕がそう声をかけると、
「あ、はい。あなた様は?」
「僕はリンドバーグ家の者だ。僕はキミのことが気に入った。キミのご両親に会わせてくれ」
と強引に話を持って行ったのも事実だ。
最初はリアナ本人を直接口説いてみたが、中々の堅物で彼女を落とすには家柄を使うのが一番手っ取り早いと踏んだ。
そこでメヴィウス家の当主、彼女の父親であるディセイヤ・メヴィウス男爵に会うことにした。
僕がリンドバーグ家の嫡男だと知ると、ディセイヤ殿はすぐさまこの縁談を進めるよう了承してくれた。
それも当然な話だ。
リンドバーグ家といえばジルドワール王国内でも顔は効くし、何より貿易と内政関係で大成功した超金持ちであることも有名だからだ。
縁談が決まるとリアナも大人しくそれに納得し、彼女はその数日後、僕の屋敷に来て、それから神殿に婚姻手続きの書類を出し、あっという間に結婚生活は始まった。
僕は早く彼女を僕好みの女に仕立て上げたかったからだ。
そして初夜、彼女の全てをいただこうとするも彼女は必死な抵抗をしてみせた。
あまりにも強く抵抗された為、僕も萎えてしまい。やる気がそがれた。
それからリアナはことあるごとに僕との身体の関係を拒否し続けてきた。
だから僕は仕方なく、近場の女と適当に遊んでいたのである。
それを浮気だと叫んで、勝手に大騒ぎしたのはリアナの方だ。
つまり全てにおいてあの女が悪いのである。
「僕に黙って抱かれない癖に、僕が他の女と遊んでいたら不貞行為だ、と? ふざけやがって……」
僕は僕の思い通りにならないものが大嫌いだ。
だからリアナを後悔させてやろうと思った。
裁判はうまくいかなかったが、それなら違う手を使って後悔させてやることに、今決めた。
「おい! このまま帰らずにメヴィウス領に行け!」
「え? ですがラファエル様からは裁判が終わったらすぐ帰って来いと言われていたのでは……」
「妙案が思いついた。全てはリンドバーグ家の為だ」
そう、これは僕の為ではなくリンドバーグ家の為なのだ。
メヴィウス家を脅し、様々な金銭や物資を奪い取ってやる。それをラファエルお父様に話せばきっと喜んでくれるだろう。
こうして僕は王宮を後にし、目指すはリンドバーグ領の南に位置するメヴィウス領へと赴くのだった。




