表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/60

第7話 飛竜、かっ飛ばす!

 ジルドワール王国は、小さな列島からなる島国だ。


 幼い頃にこの国の地図を両親に見せてもらった時、すぐに前世の『日本』を思い返した。

 そして同時に当時のあたし、特攻服(とっぷく)を着て道路をかっ飛ばしていた頃のあの頃を思い返していた。


 あの頃、あたしは何をしていても満たされなかった。


「てめぇに食わせる飯なんかねぇんだよ! てめぇの食い扶持くらいてめぇでなんとかしてこい!」


 これが前世の親から一番掛けられた言葉だった。

 貧乏暮らしで不仲の両親。日常的に暴力を振るう父親。あたしに無関心な母親。そんな場所から逃げる様に家を出て、そして邪の道へと外れていく。


 自分でバイトして貯めた金で買ったバイクに跨って、仲間たちと共に風を感じている時が一番幸せだった。


「理亜奈! 今日はどこまで突っ走んだよ!?」


「ああ! 今日は横浜まで行こうぜ!」


「マジか!? あっちはあたしらの縄張りの外だぜ!?」


「構うこたぁねぇよ! 邪魔する奴ぁぶっ飛ばすだけだ!」


 仲間と愛車がいれば無敵だった。

 唯一心許せる仲間たちと、あたしの相棒、愛車である漆黒のカワサキのゼファー。

 これがあたしの家族だった。


 そんな最中、あたしは事故で死んだ。


 ところがあたしは新たな世界で、新たな人生を歩ませてもらうことが叶った。まるで夢のような話だ。


「リアナちゃんは本当に賢くて大人しくて素晴らしい子ね」


「リアナはもの凄い魔力の才能を持っているな! お前は将来、立派な人の妻になれるぞ!」


 こちらの世界の両親はあたしにたくさんの愛情とぬくもりをくれた。

 だからこそ、あたしはこの世界で以前の、前世の時のあたしを出すことなんてなかったし、その必要性もなかった。


 それがリンドバーグ家に嫁ぐことになり、そこで過ごしたたった僅かな期間であたしは『あたし』に戻ってしまった。


 けれど、あたしはこれが間違いだとは思っていない。


「あ……あたしの……ゼファー……」


 そして今。

 あたしは目の前でかつてのあたしの相棒、漆黒のバイク、ゼファー400x(カイ)にそっくりな飛竜がそこにはいた。


「グゥルルル……」


 ゼファーのボディの、パールパープリッシュブラックマイカのような、漆黒なのにキラキラと輝くような光沢の塗装に近しいその飛竜のボディにあたしは目を奪われていた。


「ゼファー? とはよくわからないが、この飛竜の前でとある試験を受けてもらいたい」


 アルファリオ殿下はそう言うと、あたしに透明で透き通るような手のひらサイズの宝玉を手渡す。


「それを手に持ったまま、この飛竜に挨拶を交わしながら、そっと触れてみてくれ。その時の飛竜の対応次第でキミの適性がわかる」


「ふーん。そうなんだ」


 眼前に佇む飛竜を改めてまじまじと見つめ直すと、もの凄い威圧感だ。

 その大きさも去ることながら、威風堂々とした佇まいが何よりもこの生物をより高尚な存在に見せつけた。


「……お前の瞳も真紅なんだな」


 あたしのゼファーもボディの一部に真紅の塗装が施されていた。


「見れば見るほど、お前はあたしのゼファーの生まれ変わりみたいだ」


「グゥルルル……」


 あたしはそっとこの漆黒の飛竜に指先を触れる。


「あッ!?」


 瞬間、その先端からほとばしるような閃光とまるで電撃が身体を貫いたような衝撃を受けた。


「グゥアアアーッ!」


 同時に飛竜も天に向かっていななく。


 そして次の瞬間。


「キャアッ!?」


「リアナくんッ!!」


 飛竜はその大きな左手で瞬時にあたしの身体を鷲掴みにしてきた。


「くそ! まさか防衛反応を起こすとは! やむをえん、ここは……」


「待って! 待ってくれ!」


「待てだと!? 私が何をしようとしたかわかるというのか!?」


 あたしは鷲掴みにされたまま、飛竜の眼前に持ち上げられて睨まれている。

 だが、あたしはこの飛竜から一切の敵意を感じ取れなかった。だから、今アルファリオ殿下がやろうとしたことを本能的に止めた。


「あんた、今この飛竜に攻撃しようとしたんだろ? 大丈夫だ! この子はあたしを取って食おうとか、そんなつもりじゃないから!」


「なんと……リアナくん、まさかキミは飛竜の言葉がわかるのか!?」


「いや、言葉まではわかんねぇけど――」


 あたしがそこまで言いかけた時。


『舐められたものだな。我が汝を喰らわないと何故思う? 馬鹿にするのも大概にせよ、ニンゲン風情が』


 唸るような低い声が頭の中に響く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ