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第58話 竜騎士の力でぶっ飛ばせ!

「す、好きにしろ、だって? 僕が本当に殺せと言う指示を出さないと思っているのか!?」


「知らん。だが、私は黒薔薇たちを逃すつもりはないし、ルドルフ、貴様たちの拘束も解くつもりもない」


「ふ、ふざけやがって……。じゃあもういい! 黒薔薇ども、騎士たちを殺して、ついでに殿下も殺せ! 魔力値500超えの力を見せつけてやれ!」


 ルドルフはついに一線を越えた命令を下した。


 クズだクズだとは思っていたけれど、まさか本当にここまで堕ちるなんてね。


「殿下……」


 あたしが不安そうに殿下を見ると、殿下は優しく微笑んで頷いてる。

 言葉はなかったけど、あたしはそれだけで安心できてしまった。


「少々手荒な真似をさせてもらうぞ!」


 殿下は黒薔薇たちにそう言い放ち、両手にそれぞれ魔力を込め始めた。


 と、同時に黒薔薇たちはルドルフの命令に従って、騎士たちの首を掻っ切った。


「ぐあああああーッ!」


 血飛沫と断末魔が上がり、あたしは思わず目を背けようとした。


 しかし、直後。


「……!? な、なんだこれは?」


 黒薔薇たち三人が驚きを口にしている。


 何故なら首を掻っ切ったはずの騎士たちは、血飛沫を上げた直後にその全身が茶色くなりドロドロに溶けて、地面へと流れてしまったのである。


「はぁ……はぁ……。さ、さすがにこの魔法はしんどいです殿下。私にはもうこれが限界です」


 そう言って地面に倒れ込んだのはマデューラだった。


「よくやったマデューラ第二星団員。貴様のフェイク人形は相変わらず素晴らしかったぞ」


「あ、ありがたき……お言葉、です」


「貴様は少し休んでいろ。あとは私がやる」


 驚いたことにあの騎士たちはその全てがマデューラの作った魔法人形だったのだ。

 そのことまでを知らなかったあたしは、これにはさすがに驚きを隠せなかった。


 人質はいなくなったが、黒薔薇たちは直後にターゲットを殿下へと移した。


 三人の男たちが一斉に殿下へと襲い掛かる。


「ふむ、なるほど。全員魔力で身体能力を強化しているな。基本は強化された肉体からの物理攻撃か。()()だな」


 襲い来る三人からの鋭いナイフを、殿下はいとも容易く華麗に回避していく。


 しかし殿下は攻撃をかわし続けるだけで反撃はしていない。


「危ない殿下!」


 黒薔薇の一人が背後から殿下を襲った。

 あれはもうかわせない! と、思ったのだが。


「なっ……!?」


 黒薔薇の鋭いナイフの刃を、殿下は素手で受け止めたのである。


「リアナ様。殿下は大丈夫です。ああなった時の殿下は、敵無しですから」


「え? ちょ、ちょっとマデューラ、どういうことか説明してよ!」


「殿下が一番得意なのは、実は殿下の飛竜が傍にいる時に使うフィジカル系魔法なのです。両手だけでなく、全身の筋肉を強化していますから、あの状態の殿下相手では例え名剣であっても殿下の身体を傷つけることなど不可能でしょう」


「パートナー飛竜がいるとそんなにも違うのね」


「ええ。今の殿下の魔力値は推定でも軽く1万は超えています」


 なんてことだろう。殿下は本当にバケモノだわ。

 と、あまりに強すぎる殿下に対し、感心を飛び越えて良い意味で呆れてしまった。


「少しお遊びが過ぎたな」


 と、涼しい顔で殿下は黒薔薇たちを素手の手刀で一撃。


「ぐはッ!」


「おぶぇ!」


 あっという間に二人の黒薔薇が地面へと倒れた。


「っぐ……ならば!」


 殿下の攻撃をかろうじて回避し、残った最後の一人の黒薔薇はなんとあたしの方へと走り寄って来たのである。


「リアナくん! 黒竜だ!」


 直後、殿下が叫ぶ。


 あたしはこの場面になってしまった時のことだけは、しっかりと殿下から教わっていた。


 あたしが万が一狙われてしまった場合の対応について。


「ゼファー! ファイアブレス!」


 あたしは上空に向かってそう叫ぶ。


「なん……!?」


 間髪入れずに上空で待機していたゼファーが黒薔薇の一人に向かって、超高速の火球を吐き出した。


「ぐわぁああああぁぁぁぁーッ!」


 一瞬で黒薔薇の男はその全身を獄炎に包まれ、絶叫している。


「ゼファー! 消炎ブレス!」


 今度は大量の湿度を帯びた冷却ブレスを黒薔薇の男に吹き付け、そして男は焼け死ぬ前に炎を消され倒れこみ気絶した。


「や、やったぁ! うまくできたわ!」


 あたしはあたしの魔力を通じてゼファーの魔法ブレスを操れるのだと殿下から教わっていた。何度か練習していたが、本番でもしっかり成功できて一安心である。


「さすがは黒竜とリアナくん。完璧で見事な連携だ」


「素晴らしい御業(みわざ)にございますリアナ様!」


「え、えへへ。そうかな……」


 あたしは褒められたことが嬉しくて、思わず照れ笑いしてしまった。


「と、いうわけで黒薔薇は全員片付けた。観念せよ、ルドルフ」


「ば、馬鹿な……こ、こんな、こんなことが……。精鋭の暗殺集団であるはずの黒薔薇たちが……」


「ルドルフ、竜騎士の力を甘く見すぎだ。我ら竜騎士は元々の能力に加え、パートナーとなった飛竜からも恩恵を受けていると知らなかっただろう?」


「な、なんだと?」


「竜騎士が世界最強の戦力の本当の意味はな、飛竜の力も取り込んでいるからなのだ。だから我ら竜騎士は普通の騎士の何倍もの魔力とフィジカルがある。これがジルドワールが誇る最強戦力だ」


「そんな……ただ竜に乗ってるから、強いだけなのかと……」


「愚か者な奴だ」


 なす術をなくしたルドルフはうな垂れて、反論する気力すらも失くしたのだった。



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