第54話 因縁のルドルフと決着へ!
あたしとゼファーはそれからほどなくして、殿下の待つメヴィウス邸の庭へと降り立った。
殿下はそれはもう大変にあたしの身を案じてくれていたが、あたしはゼファーへの誤解をしっかり解く為の説明をした。
「それでは黒竜はもう、災厄を起こすことはないと、そう言ってくれたのか?」
「あーうん、まあそんな感じ、です」
「それはリアナくんがずっと黒竜と共にいることが条件だと、それでいいという話になったわけか」
あたしは殿下に少し適当な嘘をでっちあげた。
ゼファーとの会話全てをあけすけに話してしまうのはゼファーのプライドを傷つけてしまうし、なによりあたしの気持ちがストレートに伝わり過ぎてしまうからだ。
……まだこの気持ちを彼へストレートにぶつけるには、時間が浅すぎるもの。
「そうです殿下。あたしがゼファーの竜騎士として王宮にいる限り、ゼファーは災厄までは引き起こさないって約束してくれたの。だからもう安心です!」
と、そういうことにした。
すぐそばにいるいるゼファーと目配せをして、ゼファーも頷く。
「そうか……そうなのか……」
殿下はなんとも難しい表情をしている。
「ということは……そうか……そこまでして……」
「殿下?」
「あ、いや、いいんだリアナくん。それなら良かった。それならもうキミは無理な結婚をせずともよくなったのだな」
あ、そういう風にも捉えられるわね。
「あのね殿下、あたしね……」
「うむ。大丈夫だ。キミの気持ちが一番だからな。私のことなど気にしなくていい。私のことなど……」
あ、なんか凄く落ち込んでる!?
殿下にとって、あたしと結婚しなくても災厄が起きないとわかれば、あたしと結婚しなくちゃいけない公然の理由が無くなってるわけで。
それでこんなに落ち込んでるってことはさ、殿下はあたしのことを本当に……?
や、やばい。また顔が熱く……。
『おいリアナ。ニヤけているぞ』
ゼファーがなんか言ってるけどあたしは無視した。
『全く。自分の気持ちに気付いてからは随分と小僧への想いが強くなっているな』
殿下に言葉を理解されないからって、ゼファーが言いたい放題だ。
「ど、どうしたリアナくん? なんか奇妙な表情をしているが?」
「あ、違うんです殿下。あのですね、あたしは別に殿下との婚約が嫌とかじゃ――」
って、いやいや待って。
そんなこと言ったらあたしの方が婚約したがってるみたいになっちゃう。
いえ、確かにあたしは殿下のことを慕っているけど、こんな風になんとなく伝わって欲しくないし、なんか今はまだ時期尚早すぎるって言うか、とにかくまだ恥ずかしい!
「リアナくん?」
「……」
あたしが思わず黙りこくってしまっていると。
上空からバサッバサッと飛竜の羽ばたく音がこちらに近づいてくる。
ゼファーはここにいるし、一体誰の? と、思い見上げると。
「アルファリオ殿下! 動き出しました!」
上空にいたのは赤竜の背に跨がる、マデューラの姿であった。
あの赤竜って、あたしが以前炎道の詰まりを取ってあげたあの子だわ。
「マデューラ、戻ったか。まさかルドルフか!?」
「はい! あと数時間後にはメヴィウス邸に来ると思われます。その数は17名です! それから奴らの戦力は――」
マデューラは赤竜から降り立つと、殿下の前で跪き、状況報告を続けた。
「……そうか、わかった。マデューラ、数日間の見張り、ご苦労だったな。礼を言う」
「っは! もったいないお言葉にございます」
「あの、マデューラさん。あたしの為にありがとう」
あたしはこれまでこんな奴と話すつもりなんて全然なかったけど、今回のことで尽力してくれたことには素直に礼を述べた。
「そんな、リアナ様。私などにさん付けなど畏れ多い! 私めなどマデューラと呼び捨てになさってください!」
「い、いやいや、そんなわけにはいかないわ。あなたの方が先輩で歳上だし……」
「いえ! あなた様の方が遥かにご身分が上でございますから!」
マデューラは全く譲らず、あたしへと敬服している。以前はあんなにもいけ好かない奴だったというのに。
全く、殿下のご威光というのは凄いものね。
「そんな話は後に。リアナくん、メヴィウス家の皆に話をしてこよう。そして我らは手筈通りに上空で準備を整えようじゃないか」
そう、以前殿下と話して決めた対応策。
それは、あたしと殿下は飛竜で空高く待機してルドルフたちの動きを観察し、そしてここぞというタイミングで奴らを一網打尽にする作戦である。
そしてその為の下準備はとっくに整えてある。
殿下の強力な魔法によって。
「無論、ルドルフたちがメヴィウス家に何もせず帰るのであれば我らが出ることはない。万にひとつもその可能性はなさそうだがな」
「ええ、そうですね殿下。あたしもアイツの性格上、絶対にお父様たちを暴力で脅してくると思います」
「うむ。ディセイヤ殿から合図をもらい次第、我らはすぐに降りるぞ」
「はい!」
こうしてあたしたちの本来の目的、ルドルフ討伐(?)がようやく開始されるのであった。




