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第48話 新たな問題が勃発する!

 いつからだろう。

 あたしがこんな風になったのは。


 確かにあたしが前世の里亜奈(りあな)だったことが色濃く出始めてしまったのは、リンドバーグ家に嫁いでからが大きなきっかけだった。


 でも今のあたしの症状は……こんなに自分の気持ちがハッキリできないウジ虫みたいになっちゃったのはいつからなんだろう。


「アルファリオ……殿下……に会ってから、かな」


 王宮で殿下に出逢った当初はあたしもルドルフへのムカつきが抑えられなくて暴言ばかりだったけど、その後も気づけば殿下がいつも色々と支えてくれていた。


『うむ。今日からしばらくの間、私も厩舎の世話係をやってみようと思ってな』


『私は畏まったりしない、ありのままのキミが見たいんだ!』


『この大馬鹿者! 一体どういうつもりだ!?』


『リアナくん。頼む。私のこと、少しは信用してくれないか?』


『リアナくんは私の婚約者になってもらう予定なのだ』


 殿下のこれまでの言葉を思い出していると、思わず顔が熱ってしまう。


「はあー……」


 フィンと殿下と一悶着があったその日の深夜。


 あたしはメヴィウス邸の自室のベッドで転がりながら、眠れずに悶々としていた。


「フィンもまさかあんな風に思ってくれてたなんて、全然知らなかったし」


 確かにあたしがルドルフと結婚してメヴィウスを出ていくと伝えた時、必死になって止めてくれていたが、その本心がそういうことだなんて気づかなかった。


『けど、王子様を見るリアナの目にはまた別の情を感じるんだよ』


 フィンに言われた言葉。


 フィンに対する情は大切な身内に対するものだ。

 じゃあ殿下に対する情は、なんだろう。


 付き合いだってまだ浅い、ただの他人なのに。


 関わった時間だってルドルフと大差ないのに。


「……わかんないな」


 本当によくわからない。


 ただ確定してる事実はあたしが殿下と結婚しないと、漆黒の飛竜、ゼファーが再び災厄を起こしかねないこと。


 もちろん殿下があたし以外の優秀な竜騎士となれる女性と結ばれればいいんだろうけど、話を聞く限りそんな女性はほぼ現れないらしいし。


「だからこそ殿下はあたしに求婚してる。それは間違いないのよね」


 この事実と感情の問題との狭間に揺れている。


 あたしはどうしたらいいんだろう。


「あー、もう本当にわっかんねぇよぉー……」


 こんなウジウジした自分が嫌になりそうなくらい、その晩は眠れなかったのだった。



        ●○●○●



 ――更に翌日。


 早朝。マデューラからの報告によると、いまだルドルフからの動きはないとジーナさんが教えてくれた。


 あたしと殿下、それに王宮から来た御者は皆、メヴィウスのお屋敷で寝泊まりしている。


「お嬢様、朝食の準備が整っています。ダイニングへいらしてください」


 ジーナさんがあたしを呼ぶ声がした。


 寝不足のまま、ケープを軽く羽織って自室を出ようとするとコンコン、っと部屋の扉が叩かれた。


「リアナくん、私だ」


 ドキンと心臓が高鳴った。

 どうして殿下がこんな早朝からあたしの部屋に?


「な、なんですか?」


「今、少し話せないだろうか。部屋に入れてもらえるとありがたいのだが」


 ええ!? 殿下をあたしの部屋に!?


「こ、これから朝食ですよね? ダイニングで話すんじゃ駄目なんですか?」


「キミと二人だけで話がしたいんだ」


 えええ!? 改まって何々!?


「ご、ごご、ごめんなさい! 部屋はちょっと散らかってて……」


「そうか、それはすまない。では朝食を終えたあと、私がお邪魔させてもらっている客室(ゲストルーム)に一人で来てもらえるだろうか?」


「わ、わかりました……」


「うむ。ではまたダイニングで」


 殿下はそう言い残して去って行った。けど……一体なんの話をするの!? 二人きりでする話ってなんなの!?


「はあ、ああぁぁぁぁー……」


 あたしはまた朝からヘナヘナと腰を落として座り込んでしまった。


 ひとまず朝食に行こう……。



        ●○●○●



 ダイニングではメヴィウス家のみんなに加えて殿下とジルドワールから共に来た御者さんたちで一緒に食事を取った。


 その時にはルドルフに関する話や飛竜や竜騎士に関する話などの話題だけで、殿下とあたしについての話題にはならなかった。


 ちなみにマデューラはまだルドルフの動向を探ってくれているのでお屋敷にはいない。基本的に彼は魔法と魔導具を利用して殿下と連絡を取っているようだ。


「さて……」


 食事を終え、あたしは覚悟を決めて殿下の部屋の前へとやってきた。


 内心、こんなにもビビってしまっている自分が情けないと思いつつ、客室をノックする。


「あたしです」


「来てくれたかリアナくん。今開けよう」


 扉を開いてくれた殿下に促され、あたしは客室内の椅子に腰掛けた。

 殿下が紅茶はどうかと尋ねてくれたので、あたしはこくんと頷きありがたく頂いた。それから殿下も近くの椅子に腰掛けた。


「キミに来てもらったのは他でもない」


 や、やっぱり結婚のお話だろうか?


「漆黒の飛竜についてだ」


「え?」


「不味いことになった。これは脅しでもなんでもないんだが……」


 殿下は神妙な面持ちでこう続けた。


「あの飛竜がキミを求めている」



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