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第46話 話を聞かない殿下にぶっ込む!

「……」


 フィンはあたしへとその胸の内を告白したあと、ジッとあたしの目を見つめている。


「あ、あの、ね、フィン。あたしは……」


 どう答えるのが正しいのか、あたしにはわからない。

 フィンの気持ちはもちろん嬉しい。


 いくらメヴィウス家で貴族としての振る舞いを学んで来たとは言え、あたしみたいなガサツで大して可愛くもない女を好きだなんて言ってくれて、嬉しくないわけがない。


 そもそも前世じゃあたしに色恋沙汰なんて皆無だったんだから。


 でも、あたしは……。


「ありがとうフィン。うん、あたしは昔からフィンのこと、大好きよ。でもそれは……」


 と、そこまで言った時。

 ガタガタガタッ! 大きな物音がガゼボ付近の背の高い垣根から響いた。


「な、なに!?」


「あー……」


 あたしが驚くのと正反対にジーナさんは変な顔をしている。


「誰かそこにいるの!?」


「あ、あのですねリアナお嬢様。実はですね、これは私が考えたのであって、決して殿下のせいではなくてですね」


「……?」


 ジーナさんが妙な困り顔で意味不明な言い訳をし始めた。

 すると。


「え、え、えええ!? で、殿下!?」


 垣根の隙間から這い出てきたのは、まさかのアルファリオ殿下だった。


「う……す、すまないリアナくん……」


 頭から全身に掛け、木の枝と木の葉をあちこちに纏いながら、殿下は渋い顔をしている。


「何をやってるんですか!?」


「すまない……私は卑怯者だ……」


「はい?」


「私はキミの返事が待ちきれなくて、侍女であるジーナくんにキミが私のことをどう想っているのか聞いてもらうよう頼んだのだ」


 と、殿下が言うとすかさずジーナさんが割り込んで、


「違いますお嬢様! 私めが提案したのです! 決して殿下はそのような……」


「いいんだジーナくん。どちらにせよ、今の私では、このままでは駄目なのだとよく理解できた。そこのフィン殿のおかげでな」


 殿下がフィンの方を見やった。


「な、なんなんだお前は!? 突然現れて……なんかめちゃくちゃ高貴そうな服装をしてるようだが、リアナとどういう関係なんだ!?」


 フィンも困惑している。


「初めましてフィン殿。私はアルファリオ・ジルドワール。ジルドワール王国の王子だ」


「……は? おう、じ?」


「うむ。竜騎士団の特異星団員という肩書きの竜騎士でもある。よろしく頼む」


「な、なーにが王子で竜騎士だよ。そんなデタラメ信じられるか! そんなお偉い王子様がこんなところにいるもんか!」


 フィンの反応は至極当然だ。こんなど田舎の貧乏領地に王太子殿下が、しかもこんな頭から草だらけになった状態でいるなんて誰が見ても信じないだろう。


「それがフィン様。本当にこちらのお方はジルドワール王太子殿下、その人でございます」


 ジーナさんが補足したので、


「ええ、そうなのフィン。この人は本当に王太子殿下なのよ」


 あたしも同じように言うと。


「な、なな……え? う、嘘だろ? はは、王子様みたいな人がこんなところにいる、わけが……」


「すまないが、本当だ」


「〜〜〜……ッ! と、とと。とんだご無礼を、申し訳ございませんでしたぁ!」


 さすがのフィンもあたしたちが冗談で言っているのではないと気づき、頭を下げた。


「いや、いいのだフィン殿。それよりもフィン殿は私のライバルであることが判明してしまった」


「え……? え……?」


「フィン殿、実は私はリアナくんを妻に迎えたいと思っていてな。今、リアナくんからの返事待ちだったのだ」


「んっな!? なんだって!?」


「だが、どうやら私の負けのようだ……」


 殿下は妙にしゅんとして肩を落としている。


「リアナくんはフィン殿が大好きだと、さっきハッキリ聞いてしまった」


 やっぱりさっきの話を盗み聞きして、それで驚いて出てきちゃったのね。


「殿下! それは違うわ! あたしは確かにフィンとは幼い頃からの仲良しでもちろんフィンのことは好きだけど、それはね――」


「やはり好きなのだな! そうか、そうか……では今回の話はやはり全てなかったことにするしかない……」


「いやいや、話を聞いてくださいよ殿下。あたしはね、確かにフィンのことは好きだけど」


「あああーッ! そんなに何度もフィン殿のことを言わないでくれ!」


「だから話を聞けッ!」


「もう駄目だあ……この世の終わりだぁ……。今回の話は全て無かったことにしよう……泡沫の夢だったことにしよう……」


「こ、こんの馬鹿殿下ァ!」


「あいたァー!?」


 あたしはあんまり話を聞かない殿下の頭に、思わずゲンコツをくれてしまった。


「なんで話を聞かねーんだテメーは!?」


 そしてあたしはまた、最近出やすくなってしまった自我のせいで、暴言だけに留まらず殿下の胸ぐらまで掴み上げてしまうのだった。



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