第43話 念願のゼファーとかっ飛ばす!
殿下の呼び声に応じて、あたしの時と同じように上空に現れたのは、青色の光を放つ魔法陣。
そうしてそこから召喚されたのは、鮮やかなブルーサファイアのように透き通る蒼い鱗と穏やかに輝く金色の瞳が特徴的な飛竜。
「よく来てくれたシャルナーガ」
「クルァーーォオ!」
シャルナーガと呼ばれた蒼き飛竜がどうやら殿下のパートナーの飛竜らしい。
「その子が殿下の飛竜だったんですね!」
「うむ。シャルナーガはとても賢く忠実な飛竜でな。人間を脅かすことは絶対にない私の自慢の相棒だ」
この蒼い飛竜はあたしも厩舎小屋で何度もお世話している。殿下の言う通り、飛竜たちの中でもとても品が高く、動作のひとつひとつがゆったりと落ち着きのある子だった。
「それでも殿下。あたしと殿下の二人だけでなんとかなるんですか? あたし、まだゼファーに乗ったこともないし、ドラゴンライドもそんなに上手いわけじゃないし……」
と、あたしが不安そうにすると。
「リアナ」
「お父様?」
ディセイヤお父様が真剣な表情であたしを見た。
「竜騎士ひとりと飛竜一匹で千以上もの武力と呼ばれるほどでな。まさしく竜騎士というのは一騎当千、全世界最強最高の戦力なのだ」
その言葉に殿下が頷く。
「うむ、そういうことだ。というわけだからメヴィウス家の者たちは皆、今日からしばらくの間、屋敷の中で十分に施錠し、籠城していただきたい。ルドルフが戻ってきた時、私とリアナくんで対応する」
「あ、あの……リアナちゃんは本当に危なくないのですか?」
「安心して欲しいお母上。アルファリオ・ジルドワールはこの身に変えてもリアナくんの安全は第一で行動すると誓う」
殿下がサラッとそんなセリフを言うものだから、思わずあたしはまた顔が熱くなってしまった。
「さあ、リアナくん。今こそ竜騎士としての訓練を始めよう。ルドルフたちが来る前までに私がリアナくんを立派な竜騎士としてやろう」
「そ、それはありがたいですけど、ルドルフたちがいつ来るかわからないのにそんな悠長に構えていられるのですか?」
「それも安心してくれ。すでに事情を説明しておいたマデューラがルドルフのあとを付けている」
あ、それでさっきからマデューラの姿がなかったのね。
「マデューラもすでに飛竜を召喚し、ルドルフたちを上空から見張っている。何かわかれば私のもとへすぐ連絡が来るようになっているからな」
「そうだったんですね。さすが殿下です!」
「さあ、それでは始めようか。竜騎士リアナ・メヴィウスくんのデビュー戦に備えて」
こうしてあたしは本格的に竜騎士としての本格的な心構えを受けることとなった。
●○●○●
――竜騎士としての様々な訓練を教えられたその日の夜。
結局ルドルフたちがすぐにやってくることはなかった。
しかしマデューラからの連絡によると、おそらく数日以内に再びメヴィウス邸にやってくるだろうとのことだったので、それまで警戒を怠らないようにすることにした。
あたしといえば。
「つ、疲れた……」
久しぶりの実家の自室。
そのベッドの上で満身創痍に転がっていた。
「まさかドラゴンライドがこんなに大変だったなんて……」
あたしは念願のゼファーの背に乗ることが叶った。
そして殿下から飛竜の操り方を教わった。
正直それ自体は大して難しいことはない。何故ならあたしはゼファーと直接会話ができるからだ。
あたしが「こうして」といえばゼファーはその通りに動いてくれるし、あたしが落っこちそうになってもゼファーがすぐに助けてくれる。
あたしはゼファーを乗りこなし、そして二人で空高くを舞い、風になった。
本当に気持ちよくて楽しくて、時間を忘れてドラゴンライドを堪能させてもらった。
それに関しては殿下からも「さすがはリアナくんだ。これならもう、すぐにでも実戦で活躍できるだろう」と褒めてくださった。
問題はそうではなく、途中から頭がボーッとしてきてうまく思考が働かなくなってしまったのだ。
その原因が「魔力切れ」だそうで、どうやらあたしはゼファーと直接会話をすることに魔力を大幅に消費するらしい。
「魔力って大事なのね……」
魔力自体は一晩きちんと眠ればほぼ回復するらしいけれど、この疲労感は人生でも初めてくらいだ。
とはいえ、それでも初日からこれほど飛竜を操れることはまず無いそうで、普通の竜騎士は飛竜の操り方を学んで飛竜と連携を取れるようになるだけでも一ヶ月以上は掛かるらしい。
当たり前かもしれないけれど、竜騎士というのは改めて大変なのだと思い知らされた。
「へへ。でもやっとゼファーに乗れたわ」
疲れはしたが、あたしは大満足だった。
でも、一抹の不安はまだ残る。
ルドルフの奴が本当に何をしでかしてくるのか。あたしたちだけで本当にそんなヤバそうな集団からメヴィウスを守れるのだろうか。
……しかしそんな不安よりも大変なことが、翌日起きることになる。




