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第39話 あたしの家族がかっ飛ばす!

「うちのリアナが手を出すほどまでに激怒する、その原因はなんだったのです?」


 お父様は冷静に淡々とルドルフへ問い詰める。


「だからそれも先日伝えたであろうが! 貴様の娘は素行が悪すぎるから僕と母で説教をしたのだ! そうしたら突然癇癪を起して僕たちに手をあげたのだ!」


「素行が悪い、ふむ。ですがリアナは正当な理由もなく他者に手をあげるような不届者ではないはずです」


「そんなこと知るか! 確かに貴様の娘は暴力を振るったのだ!」


「ですから、そうなる原因があったはずです。ルドルフ殿は何か身に覚えはないのですか?」


「そんなものあるはずがなかろう!?」


「実はですね、とある旅のお方からこんな話を聞いたのです。リンドバーグ家のご令息が結婚後も他の女と夜な夜な遊び歩いている、と」


「なっ……!?」


「もし不貞行為が元凶で娘が暴力を振るってしまったのなら、一方的にリアナだけが悪いというのはおかしな話でしょう?」


「貴様……!」


「どうなのですルドルフ殿?」


「ぐ……! そ、そんなことは関係がない! 何を言おうと貴様の娘が王宮裁判にて裁かれ、重罪となったのは紛れもない事実なのだ! 本来なら死罪だったのを僕が口利きしたからこそ、貴様の娘はまだ生きながらえているのだぞ!?」


「では娘は何故、帰ってこないのです? 刑を軽くしてもらえたのなら、我がメヴィウスに帰ってきても良いのでは?」


「ふん! いくら刑を軽くしてもらったとはいえ、まだリアナは王宮にて投獄されているからな。それが何を意味するかわかるか? つまり、貴様たちメヴィウスからの財産を僕がもらわない限り、いつでもリアナの命運は変えられるんだよ!」


 そう、ルドルフは知っていたのだ。

 あたしが王宮からメヴィウス領へ帰ってきていないことを。


 おそらくルドルフはあたしが竜騎士団に入団し、王宮で暮らしていることをどこからか知ったのだ。騎士団に入団した者は基本的に一ヶ月間は王宮を出ることはない。


 だからこそ、一ヶ月が経過するその前にルドルフの奴はメヴィウス領を手に入れようと動いてきたのだろう。


「いいか? 僕の言うことに逆らうんなら、今度こそ本当にリアナを死罪にしてもらうしかなくなるぞ?」


「つまりルドルフ殿、それはリンドバーグ家が我が娘をダシにして脅迫していると認識してもよろしいですかな?」


「なん……ッ!?」


 ルドルフの顔色がわかりやすいぐらいに紅潮し、怒りをその表情へと露わにした。


「だってそうでしょう? 我が娘を救うか、財産を渡すかの二択を迫られているのです。これが脅迫でなくてなんだと言うのです?」


「ふざけたことを! そうか、なるほどよくわかった! 僕は今から王宮に戻り、リアナの罰を元通りにさせてくるぞ!」


「ええ、どうぞ。できるものならご自由に」


「ぐ、ぐ……ッ!」


 そうは言ったものの、ルドルフはその場からすぐに動こうとはしない。


「メヴィウス家の貴様たち全員が後悔することになるぞ!? いいのだな!?」


「それはどのように、でしょう?」


「貴様、一体何を知っている!? 何故そんなに悠長な態度でいられるのだ!?」


 馬鹿なルドルフでもさすがにお父様たちの態度がおかしいことに勘づき始めた。


「私どもは何も知りませんよ。ただ、理不尽には屈さないと誓ったのです。それが我が娘、リアナから教えられたことですから」


「……ッ! ……ッ!」


 ルドルフは憤怒の表情でお父様を睨み続けている。


「……」


 しばらくの間、お父様とルドルフの睨み合いは続いた。


 やがて。


「……いいだろう。貴様たちがそういう態度ならこの僕にも考えがある」


「ほう? それはなんでしょう?」


「貴様たちをここにはいられなくしてやる!」


「契約もなく、そんなことはできませんぞ?」


「ふん! じきにわかる! せいぜい震えて過ごすがいい! 貴様の娘も貴様たちも地獄行きだ!」


 ルドルフはその捨て台詞を吐いて、ようやくあたしのお屋敷から出て行った。


 アイツが屋敷から完全に離れていったことを窓際から確認して、あたしたちも応接室に戻る。


「素晴らしい対応だったわ、お父様」


「うむ。毅然とした態度、感服させられた」


 あたしと殿下がそう言うと、


「はあぁあぁぁぁー……。こ、腰が抜けてしまった……」


 まるでさっきまでとは別人のように、へなへなと肩を脱力させた。


「気持ちはわかる。メヴィウスにとったらリンドバーグは大変身分が上だ。あのような態度、普通であれば許されるものではないからな。だが私の指示通りよくやってくれたディセイヤ殿。感謝する」


 殿下はそう労った。


「はい……殿下の仰る通り、可能な限り反発してルドルフ殿を煽りました。しかしこれにはなんの意味が……?」


「うむ。これでおそらくルドルフは尻尾を出すはずだ」


「尻尾、とは……?」


「実はな、これはまだ極秘だったのだがルドルフには国家転覆罪の疑惑が掛けられているのだ」


「え、ええ!?」


「ジルドワール国内の機密情報を、実質敵対国でもある西側諸島のアリストレア皇国へと流しているようなのだ」


「まさかルドルフがそんなことまで……」


 さすがのあたしもその内容には驚きを隠せずにいた。

 いくらあの男がクズであったとしても、まさかそんな犯罪行為に手を染めているなんて。


「中々尻尾を掴ませなかったが、ここ最近になって大きく事態が動くことがあった。それがリアナくんとルドルフの離縁問題だ」


「ええ!? あ、あたしが関係しているの!?」


「うむ。リアナくんは巻き込まれた、という方が正解だがな。少し長い話になるが、もはや詳細を話すべきだろう――」


 そう言って殿下はあたしたちに、今回の一件に関する全ての流れを語り始めた。



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