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第38話 ディセイヤお父様が問い詰める!

「おい! いつまで待たせるんだ! こっちはわざわざリンドバーグから来てやってるんだぞ!」


 エントランスの庭先から響く怒鳴り声が、応接室にまで届いた。


 この声、忘れもしない。

 間違いない、ルドルフ・リンドバーグだ。


「どうしましょう、旦那様」


「……向こうからやって来たのならちょうどいい、リアナの件についてルドルフのやつに問いただそうじゃないか。ジーナ、彼をここに案内しろ」


 お父様がギリっと表情を固くした。


 その時、殿下がハッとしたような表情をして見せる。


「ディセイヤ殿、それならば私に少し考えがある」


 殿下はそう言うと、とある提案を打ち出した。


 それは――。




        ●○●○●




「遅い! 一体何をしていたのだ!?」


「申し訳ありませんルドルフ殿。少々部屋が散らかっておりまして……」


「ふん。屋敷から出る準備支度でもしていたか?」


 応接室に案内されてきたルドルフはニヤニヤと、あたしのお父様を小馬鹿にしたようにそう言い放った。


「それで、本日はどのようなご用件でしょう?」


「以前に言っておいただろう。金が用意できぬなら領地と屋敷をあけ渡せとな。その様子を見に来たのだ。もう今日中には屋敷を出ていけるのだろう?」


「きょ、今日中なのですか!? それはいくらなんでも急すぎるのでは……」


「僕はこの屋敷を僕個人の別荘にすることに決めたのだ。なので今日からこの屋敷を自由に使わせてもらう。その為に貴様たちメヴィウスの人間は出て行ってもらおう」


「まだ屋敷には使用人たちも働いております。そんな急には無理ですわ!」


 ルドルフの傲慢で突拍子もないその物言いに、今度はキャスティお母様が少し語気を強めてそう答えた。


「……なんて奴なの。相変わらずあの男は性根の腐った奴だわ」


 その様子をあたしと殿下は大きな棚の裏に隠れて伺いつつ、思わずあたしの口からはそんな言葉が漏れ出す。


「我慢するんだリアナくん」


 殿下がそう諭してくれている。

 あたしはムカつきを堪えながらもこくん、と大人しく頷く。


 あたしたちはこうしてこっそりとルドルフとのやりとりを観察することにしたのである。ちなみに弟たちやジーナさんも廊下に隠れて応接室の中でのやりとりを聞いている。


「それでルドルフ殿、今一度再確認させていただきたいのですが」


 お父様が()()()()()()()に話を戻し始めた。


「あん? 何をだ?」


「いえですね、此度のトラブルに関してです。我が娘のリアナが大変な不敬と粗相をリンドバーグ家に働いたとのことですが……」


「ああそうだ。貴様の娘はとんでもない女だった。この世に存在する女の中でもトップクラスでクズ中のクズだろう。あのような人間のクズを産み育てた貴様たち両親は、本来なら死罪になってもおかしくない大罪人だ」


「そのクズだという我が娘ですが、一体どんな悪さをリンドバーグ家に働いたのでしょう?」


「ああ!? 貴様、ふざけているのか? そのことについては先日、散々に説明したであろうが!」


「ははは。それがですね、私たちも年のせいかもの忘れが激しくなりまして。私も妻もリアナの何が悪かったのかすっかり忘れてしまって。なぁキャスティ?」


「ええ、そうなんですわルドルフ様。リアナちゃんのしでかしたこと、もう一度説明してくださるかしら?」


 お父様もお母様もわざとらしくすっとぼけている。


「貴様たち……一体どういうつもりだ?」


 ルドルフの声色が変わった。馬鹿なあいつでもさすがに妙に思ったか。


「ルドルフ殿。やはり私たちメヴィウス家の者は皆我が娘、リアナのことをいまだに信じておりましてな。とてもルドルフ殿の言葉を全て鵜呑みにできんのですよ」


「なんだと貴様? それでは僕が嘘を言っているとでも言うのか?」


「はい」


 きっぱりとお父様は言い切った。


「貴様、いい度胸だな? 先日はあんなにも必死に僕へあの女を救済するよう懇願してきた癖に!」


「あの時は冷静になれていなかったのですよ。あれからよく考えましてな、やはりどう考えてもうちのリアナが意味もなく暴力を振るったりするとは思えんのです」


「ふざけるな! 貴様の娘は確かに我が母を突然殴って気絶さえ、更にはこの僕に酷い暴力を振るったのだ! この鼻の傷を見せたであろう!? これも貴様の娘がやったものなのだぞ!?」


 その傷については事実だ。

 あたしが思い切り蹴り飛ばした時の傷だ。


「そうされる原因がルドルフ殿にはなかったのですか?」


「な、なんだと?」



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