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第34話 メヴィウス家に帰ってきた!

 殿下からの唐突な告白への返事はしばらく保留にして、あたしたちはようやくメヴィウスのお屋敷前に到着した。


 メヴィウスのお屋敷は今の所、まだ何も変わりなく存在してくれていたことに安堵した。


 あとは皆がちゃんといてくれればいいのだけれど……。


「あれ? ま、まさか、お嬢様!?」


「あ、ジーナさん! ただいま!」


 昔からメヴィウス家に仕えてくれている侍女のジーナさんがちょうど庭先にいてくれた。


「一体どうしてリアナお嬢様が!? と、とにかく中へお入りください!」


 あたしたちはジーナさんの案内のもと、メヴィウス家へと足を踏み入れた。


「ふむ、これがリアナくんの生家か」


「王宮に比べたらボロくて小さな田舎のお屋敷です」


「そんなことはない。外観を見ただけでもわかるくらい手入れがよく行き届いている立派なお屋敷だ。きっとここに住まう者たちの人柄が出ているのだろう」


 殿下にそう言われ、まんざら悪い気はしなかった。


 しかし今考えても不思議な状態だ。

 ジルドワール王国の王太子殿下をあたしのお屋敷に招き入れると言うのだから。


 なんて考えながら、あたしと殿下はジーナさんに案内され、応接室へと辿り着く。


「お嬢様、しばらくお待ちください。今すぐ旦那様たちをお呼び致します!」


 ジーナさんは慌てたように小走りで行ってしまった。


「そんなに時間は経ってないけれど、懐かしい気がするわ。それにしても応接室がこんなに片付けられて物が無くなってるなんて」


 手紙にあった通り家財を片付けているんだわ。

 早く誤解を解かなくては。


 ややもすると、あたしの家族たちが揃いも揃ってバタバタと足音を立て、


「リアナ!」


「リアナちゃん!」


「「リアナ姉様!」」


 ディセイヤお父様、キャスティお母様、それに弟のルキアと妹のレイラが声を荒げながら応接室の中へと飛び込んできた。


「一体どういうことなのだ!? リアナ!?」


「リアナちゃん無事だったのね。良かった……良かった……うぅ」


「姉様に限って処刑されるなんてあるわけないと思ったんだよ! ありゃあルドルフのデマなんだろ!?」


「リアナ姉様ぁあー! うわぁぁん! 良かったよぉ」


 やっぱりあたしの家族は騒がしいけど、温かい。

 あたしはみんなの顔を見て改めてそう感じた。


「みんな、ごめんなさい。色々迷惑かけちゃって。これからゆっくり説明するから、ひとまず落ち着いてね」


 メヴィウス家が勢揃いしたところで、あたしはこれまでリンドバーグ家であったことを説明していった。

 そしてルドルフの件を話していくと、家族みんなの顔色がみるみる変わっていく。


「そんなことが……まさかあのラファエル卿のご一家がそんなご家族だったとは……」


 ディセイヤお父様は怪訝な表情で呟く。


「ううん、違うわお父様。リンドバーグ家で唯一、ラファエル様だけは、おそらくあたしの味方でいてくれたの。だからこそ救われたのよ」


「な、なに?」


 あたしは王宮でかけられた裁判で処刑とはされなかったことを話した。


「……なるほど。ラファエル卿がエルドラド陛下に無罪を陳情してくださり、アルファリオ王太子殿下が裁判官殿に話しを通してくださっていたのだな」


「ええ。本当に救われたわ。陛下と殿下にはすごく感謝してるの」


「しかしそうなるとルドルフ殿の話は何もかもが違うということに……」


「そうよお父様! あの男、ルドルフはとんでもない奴だったんだから!」


 あたしは堰を切ったようにこれまでの苦々しい思い出をぶっちゃけていった。


「ということはリアナを救う為の示談金1000ジルド金貨というのは……」


「ルドルフの嫌がらせに決まってるじゃない! そんなもの、ビタ一文払う必要はないわ」


「ぬうぅ、そうだったのか……」


「やっぱりおかしいと思ったのよ。私はリアナちゃんがそんなことするはずないと思っていたもの」


 ようやくディセイヤお父様もキャスティお母様も納得してくれたようだ。


「ねえリアナちゃん? あの優しくて争い事が嫌いなリアナちゃんが暴行を働いた、なんていうのも嘘なんでしょう?」


「う……」


 それについては口ごもってしまった。


 何故ならあたしはメヴィウス家で生を授かってからというもの、家族の前で一度たりとも暴力的な行為や発言をしたことがないからだ。


 前世なら俄かには信じがたいことだが、この世界の家族……いえ、メヴィウス家に従事してくれている人たち全員が優しくて、あたしは本当のあたしを剥き出しにしたことが皆無だったのである。


 メヴィウス家で生を受け、貴族として過ごしてきたこの18年間、あたしは本当に『リアナ』というごく普通の貴族令嬢でいられたのだ。


 つまり『私』が前世の『あたし』の中身をこんなにも取り戻してしまったのは、全てあのリンドバーグ家のせいなのである。


 でも大切な家族に嘘はつきたくない。


「……ごめんなさい、キャスティお母様、ディセイヤお父様。それについてだけは本当なの」


「えっ!?」


「あたしは……アマンダお義母様もルドルフ様もぶっ飛ばしたわ」


「ぶ、ぶっと……リ、リアナ、ちゃん……?」


「ルドルフやあの義母……アマンダお義母様の仕打ちに我慢ならなくて、手をあげた。手を出したことは悪いことだとは思う。けれど、あたしは間違ったことをしたつもりはないわ」


 あたしは包み隠さずに話した。


「そんな……リアナちゃんが……」


「リアナ……お前……」


 キャスティお母様とディセイヤお父様が目を丸くして震えている。


 もしかしたらこれでメヴィウスのみんなからも嫌われてしまうかもしれない。

 そんな不安がよぎったが。


「そうだったんだ! あはは、良かったー!」


 声を大にして笑ったのは、二つ下の弟であるルキアだった。


「姉様、ちゃんと本当の自分を出せたんじゃん! 俺はホッとしたよ」



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