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第32話 ゾクの女をぶっ飛ばす!

「さぁて、馬車の中にはどんなお宝があんのかなあ?」


 賊どもが馬車の扉に手をかけて、勢いよく開いた。


「リアナくん……!」


 殿下があたしの身を案じるようにあたしの名を呟いている。


「……ん? おかしいな。ボス、馬車ん中ぁ、誰もいやしやせんぜ!?」


 と、賊が言うのと同時に。


「ぐあッ!?」


 人質を取っていたニックという男が、ドサっとその場に倒れる。


「後ろには気をつけないと駄目ね」


 あたしは賊どもが馬車に近づく前に、すでにこっそりと抜け出し、木々の影からこの男の背後に忍び寄っていたのだ。

 そして背後から頭に一撃、である。


 更についでに。 


「キャアッ!?」


 女の悲鳴も響く。


 何故なら、あたしが()()()()()()()()()()()からだ。


「リ、リアナくんいつの間に!? そ、それに何故その女性までを……」


「殿下ぁ! 人質なんか元からいないわ! さっさと周りの賊ども全員、動けなくしちゃって!」


 あたしの言葉に反応して、殿下は頷きすぐに行動に移した。すぐさま再び魔法を詠唱し、残った賊たちへと撃ち放つ。

 そして馬車の周りと馬車の中に入り込もうとして来た賊もあっという間に、倒された。


「ぐっ!?」


 残されたボスだけが、あたしたちから少し離れた場所で狼狽している。


「く、くそ! な、なんでわかった……?」


 ボスの男はあたしの方を睨みつけながら、そう問いかけてきた。


「そのニックって男が人質の女性とコソコソ内輪話しているのを聞いてたのよ。ま、それにこんな状況でいきなり人質の女が現れるなんておかしいからね」


 あたしはそう答えたが、実は前世でも同じ様なことがあったのである。


 レディースのチーム同士の抗争があった時、相手のチームが不利になると卑怯にも無関係の人間を捕まえて人質にしたことがあった。

 その時はそれに気づかなくて、あたしたちはそのチームに良い様に殴られて惨敗した。そして後からあの人質もグルだったことが判明したのだ。


 今回の件がまさにその状況だったのである。


「まさかそんな小賢しい手を……。なんて賊どもだ」


 マデューラが呆れる様に呟いていたが、あたしはあんたも同じ様なことしてたでしょって薄ら思った。


「そうだったのか。リアナくん、よくやってくれた!」


 殿下が安堵した顔で頷く。


「殿下、そいつはもう逃さない方がいい。捕えてここらの騎士団に引き渡しましょう」


「そうだな」


 あたしの言葉に殿下がそう答える。


「ぐ……ッ!」


 ついに追い込まれた賊のボスだった、が。


「待ちなッ! 動くんじゃないよ!」


 あたしの横で顔を殴られて倒れていた女が声を荒げる。


「こいつが目に入るかい? 特性の魔石爆弾さ。私らを捕まえるってんなら、ここでこいつを起爆させて全員一緒に自滅してやる」


 本性を現した賊の仲間の女が、懐から取り出した手のひらサイズの石を見せながら、今度はそう脅してきた。


「おっと、魔法の類いを私に撃つのも控えなよ? この魔石爆弾は僅かな衝撃で起爆するからね。私も当然死ぬけど、あんたらも全員仲良くあの世行きさ」


「そ、そんなものはハッタリだろう!?」


 マデューラは強気に言うが、


「いいや。私らはいつでもこういう事態に備えて、こいつを持ってんだよ。捕まってむごい罰を受けるくらいならいつでも死んでやるってね!」


 賊の女の勝ち気な態度にマデューラは気圧されている。


「く、くく。ジョアンナ、よくやったぞ。とまあ、そういうわけだ。俺様たちを見逃すんだな?」


 ボスの男も再びしたり顔をして見せた。


 が、あたしはそんなものに臆したりしなかった。


「な、なんだよお前!? 近づくんじゃねーよ!」


 あたしは賊の女に歩み寄る。


「おい、てめぇ。それが爆弾の魔石だろうがなんだろうが知ったこっちゃねぇんだよ。いい加減しつけぇんだよ」


 あたしはあまりに食い下がる賊どもに苛立ちを隠せずにいた。


「な、なんだあ!? お前、死にたいのかよ!?」


「ぉお、上等だ。やってみろや! あたしはあんたと一緒に逝ってやっからよぉ? さっさとソレ爆発させてみろや? ああ!?」


「ひ……」


「こんぐれぇの胆を飛ばされたぐれぇでビビってんじゃねえよ! それでも女の端くれかよ!?」


「う、うるせぇ! 来るな来るな! 私はやるって言ったら本気でやるよ! 賊の中でも私はねぇ……」


「てめぇはッ! はなっからッ! なんもかんもがハッタリなんだってバレバレなんだよぉッ!」


「ギャアッ!」


 あたしは問答無用でその女を再び殴り倒した。


「馬鹿女が。()()を名乗んなら、ハッタリじゃなくて、こっちで来やがれ」


 あたしはぶっ倒れて気絶した賊の女に、握り拳を見せつけながらそう言い捨てる。


 そして、それを見た殿下たちもボスの男を魔法で倒し、そうしてようやくその場は制圧されたのであった。



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