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第28話 謎の美少女を拾った!

 ジルドワール王宮は他国にはない竜騎士団という特殊な部隊をもっていて、この武力は実に優れている。

 何せたった16頭に加え漆黒の飛竜を合わせた計17頭しかいないというのに、王国の守りは実に堅牢で、更には敵対する周辺国への大きな威圧とやっているからだ。


 しかし現状、飛竜17頭に対し、正式な竜騎士団員は殿下を含めたったの16名しかいない。(この中には当然ラルフさんも含まれている)


 無論、竜騎士以外にジルドワール騎士団もあり、そちらは1000名近くの騎士たちもいるが、その誰もが竜騎士としての素質はほぼ皆無だった。(普通の騎士団も、くらいは第◯星団員と称されるが、竜騎士団員と違い、くらいの最低は第十星団から始まる)


 ゆえに竜騎士というのは実に貴重な人材であり、マデューラのような人間性の男でもそう簡単に処分するのは惜しいのである。


「……どうだ? マデューラ・フェスタロッサ。その娘は回復しそうか?」


「はい。足の骨が折れているようですが、それ以外の外傷はかすり傷です。これなら俺……あ、いや、私の治癒魔法で、ものの数分で全快するかと。意識はすぐ戻るかわかりませんが」


 マデューラは魔術に関してはエキスパートであり、戦闘系魔法の他、治癒系の魔法まで扱える。だからこそ、今回の護衛にはうってつけだったらしい。


「それにしてもこの娘は一体……」


 街道に倒れていたのはあたしと同じくらいの歳の少女。長い黒髪にスレンダーな体型の美少女だ。

 純白のドレスやたくさんの装飾品はそのどれもが一級品のように窺える。お召し物から察するに高位貴族のご令嬢だろうか。


「殿下、このご令嬢のここをご覧になられてください」


 マデューラは言いつつ、少女のドレスに付いているボタンを指差す。


「これは……グラドニアの紋章。まさかこの娘はグラドニアから渡航してきた娘なのか。ともかく治癒がある程度施せたら、馬車に乗せて次の宿がある場所まで街道を進もう」


「はい」


 あたしは気絶しているその娘をジッと見据えていた。


 ……なんだろう。

 なんだか嫌な予感がする。


 別にこのご令嬢から魔物や魔族のような邪気が放たれているわけではない。

 ただ、なんとなく、そう感じただけだ。




        ●○●○●




「……ん、あれ、ここは……? わたくしは一体……?」


 馬車の中。

 先ほど、街道のど真ん中で倒れていた黒髪の少女が目を覚ます。


「目覚めたかお嬢さん。ここはジルドワール王宮が所有する馬車の中だよ。キミはジルドワール王都とカタシナ町を繋ぐ街道で倒れていたんだ」


 殿下の答えた通り、あたしたちの馬車は王都の隣領、マデューラの父、侯爵様が治めるフェスタロッサ領内にあるカタシナ町に向かう道中であった。


「ジルドワール! そうですわ、思い出しましたわ! わたくしはジルドワール王宮に行かなくてはなりませんの!」


 黒髪の少女は慌てるようなそぶりを見せる。


「まあ、落ち着きなさい。まずあなたは誰で、何故あんなところで倒れていたのか教えてくれないだろうか?」


「落ち着いてなんていられませんわ! わたくしは一刻も早くジルドワール王宮に行かないと……この馬車で今から向かっていただけないでしょうか!?」


「それは無理な話だ。私たちも急ぎの用事があり今からメヴィウス領へ行かねばならない。だが、ジルドワールへは数日後には戻ることにはなるがね」


「そうなのですか……数日後……」


「それより先にお嬢さんのことをお教え願えないだろうか?」


「はい。わたくしはゲ……あ、いえ。ケルト、と言うしがない平民ですわ」


 黒髪のケルト、と名乗った美少女のそれは、どこからどう見ても嘘でしかない。何故なら平民が身に付けるような衣装や装飾品ではないからだ。


「……それでケルトくん。あなたは何故あんなところで倒れていたのか?」


「え、えっと……あの……あ、そうそう! 眠くて、ちょっと寝ちゃったんですの!」


「「……」」


 あたしたち全員は呆れた顔ですぐに返事を返さずにいた。


「そんな馬鹿なことがあるか。お前は足の骨を折る怪我をしていたんだぞ。下手な嘘はよせ」


 マデューラが呆れるように尋ねるが、そこは確かにマデューラの言う通りだと思った。


「あ、あ……でも、今はほら、なんともないですし」


「それはこの俺が魔法でお前を治癒したからだ」


「そ、そうだったんですのね。ありがとうございますわ。あなた、性格の悪そうなお顔の割には腕の良い魔術師なのですね」


「ぐ……き、貴様、失礼だぞ……」


 マデューラは顔を真っ赤にしていたが、殿下は微かに笑っていた。ついでにあたしも。


「と、とにかく停めてください! わたくしはジルドワール王宮に行かないと!」


「だから落ち着きなさいケルトくん。こんな町から離れた街道でのひとり歩きは大変だ。せめて次の町のカタシナで降ろしてあげよう」


「わ、わかりましたわ」


 ケルトと名乗った少女は渋々と納得し、ようやく大人しくなった。


 謎多き旅の仲間が増えたのである。



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