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第27話 殿下が何かを言いかける!

 マデューラ・フェスタロッサ。


 あたしとラルフさんに嫌がらせをしてきて、殿下から独房入りを命じられたクズ男。


 そいつが何故!?


「マデューラ第二星団員には私とリアナくんの護衛を命じている。奴は剣術、体術は少し乏しいが魔術についてはかなり優れているからな。おい、こっちへきてきちんと挨拶をしろ」


 殿下がそういうとマデューラはあたしとラルフさんの前までやってきた。


「……マデューラ、だ。よろしく」


 ぶすっとした表情であたしたちには目も合わさずにそう挨拶をしてきたマデューラだったが。


「貴様、まだ自分の立場が理解できていないのか? 次は降格だけでなく貴様の父の爵位を強引に剥奪してやってもいいんだぞ?」


「ぅ……す、すみません殿下」


「あまり私を舐めるな。やり直せ。二度目はない」


 あたしに対するいつもの態度とは正反対に、殿下はマデューラへと冷酷に言い放つ。

 殿下って怒ると本当は怖いのね……。


 ギリっと苦虫を噛み潰したような表情でマデューラはあたしたちの前へと向き直した。


「この度、リアナ様とアルファリオ殿下の護衛を務めさせていただきます、マデューラ・フェスタロッサです。あなたがたをお守りするだけでなく、様々な雑用も全て遠慮なくお申し付けください」


 マデューラはそう言って、ビシッと敬礼をした。


「よし、挨拶はそれでいい。で?」


 殿下はまだ物足りない、と言わんばかりの冷酷な声色と薄暗い瞳をマデューラへと向けている。


「……そ、その節はリアナ様とラルフさんに大変な失礼、無礼、ご迷惑を働き、ま、まことに申し訳ございませんでした」


 そう言ってマデューラは命令されながらもあたしたちに謝罪した。


「まあいいだろう。リアナくん、そういうわけだ」


「は、はあ……。しかし何故この男をわざわざ護衛に……?」


「マデューラは私の大切なリアナくんに手を出そうとした。それが一体どんな大変な重罪であったのかを思い知らしてやる為だ」


「……?」


 ちょっと殿下の言いたいことが、今のあたしには伝わらなかった。


「ま、まあそれはわかりました。それより……」


「ああ、メヴィウス領へ急ごう。ラルフ第()星団員、リアナくんはしばらくここを離れるから、あとのことはよろしく頼む」


「か、かしこまりました殿下」


 こうしてあたしと殿下とマデューラ、それと二名の御者さんでメヴィウス領へと向かうこととなった。



        ●○●○●



 王宮からメヴィウス領までは最短の街道を使っても五日ほどはかかる。

 王宮を出てしばらくは竜騎士団の警備も行き届いている為、治安は安定しているが、問題なのはメヴィウス領付近にまで近づいた辺りだ。


 人里がほとんど無くあまり整備のされていない林道、通称魔の道(まのみち)を通り抜けなければならないのだが、そこでは野生の魔物や害獣、更には野盗などもチラホラ出現する。


 特に貴族などは野盗に狙われやすい。


 なので基本、そこを通る時は大人数で通るか腕の立つ護衛をつけるのだ。


 その為にマデューラを連れてきたのだろうけど。


「……そういえば殿下。ラルフさんは第四星に格上げされたんですね?」


 王宮から出立し、数時間ほど経った馬車の中。あたしはふと、王宮を出る直前に言っていた殿下の言葉を思い出していた。


「ああ、うむ。彼の日頃からの仕事ぶりを見返してみて、昇格にあたいすると判断した。竜騎士としての価値は何も魔力だけでは決まらないからな」


 ジロリ、と同じ馬車内にいるマデューラを睨みながら殿下はそう答えた。


「……も、申し訳ございません」


 マデューラはバツの悪そうな顔で頭を下げている。


「ちょうどいい機会だから話しておく。リアナくん、このマデューラという男は性格はどうあれ高い潜在魔力があってな。飛竜の扱いや魔術にも非常に長けている。だから今回の護衛を頼んだ」


「え、ええ、はい。それは王宮で聞きましたけど」


「だが私のリアナくんに行なったあの時の行動は、私個人的に到底許しがたい」


 ひい。

 で、殿下はまたあたしのことを「私の」って……。

 ふ、深い意味はない、よね?


「だから、マデューラには名誉挽回のチャンスと、自分のしでかした罪の重さを知ってもらう為に、今回同行させることにしたのだ」


「それがちょっと意味がよくわからないのですが……」


 と、あたしが困惑していると。


「おい、マデューラ・フェスタロッサ」


「は、はいっ!?」


「もう理解しているか?」


「そ、それはもう……」


「嘘だな。マデューラ、貴様はまだ朧げにしか理解していない。だからこの際、ハッキリと伝えてやる」


 殿下は一体何を……?


 と、あたしが完全にはてな顔をし、


「リアナくんは……」


 殿下がそこまで言いかけたその時。


 ガタガタガタッ! と馬車がふらつき、馬のいななく声が轟くと同時に馬車が急停止した。

 

「どうした? 何事だ?」


 殿下が御者に尋ねる。


「た、大変です殿下。街道に人が倒れています!」



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