第25話 不穏な知らせが飛んできた!
「ガバネロッ! 上!」
ミランダが突然大きな声を出した。
「あ!?」
ガバネロが空を見上げ、釣られるようにあたしも見上げると。
「な、な、な……!?」
ガバネロが目を見開いている。
「ゼファー!?」
裏庭の上空に漆黒の飛竜、あたしの友達のゼファーがそこにいた。
「な、なんでここにボス飛竜が!?」
ガバネロたちが怯えているとゼファーはゆっくりと高度を下げ、あたしの頭上近くで止まった。
「どうしたのさゼファー? またあたしの為に来てくれたの?」
『そうだ。貴様はすぐ誰かと揉めているからな。手助けが必要かと思った』
「別にこんなカスども相手にゼファーの力なんかいらないよ。あたし一人で十分だ」
『そうもいかんな。貴様のことを見守るようにあの男に言われている』
「まさか殿下に?」
『そうだ』
「そっか、殿下に指示されてここに来たのか」
『それだけではない。一応我も貴様の身を案じてきた。貴様はそんな感じでも一応、雌なわけだからな』
「ははッ! あんがとねゼファー! ま、とりあえずはあたしの喧嘩っぷりをそこで見ててよ」
『……ま、もはやそんな必要もなさそうだがな』
「?」
ゼファーのその言葉通り、あたしがガバネロたちの方を見ると。
「や、やべえ。もしかしてこの女、あの有名な竜騎士団、紅一点の……!?」
「絶対そうだよ! 私も聞いてる! 唯一ボス竜と仲良くなったって噂の、あのやばい女だよ!」
「し、しかも殿下のお気に入りだって噂の……」
へえ……なんかあたしって、王宮内でそんなことになってるんだ。
「ねえ、喧嘩の続きは……」
「ひ、ひい!?」
「ねえ、やろうよ。あたしはやる気まんまんなんだけど……」
「す、すすす、すみませんでしたぁあーッ!」
と言いながらガバネロとミランダの二人はまるでスライディングするかのように、あたしの目の前で座り込んで頭を下げてきた。
「お、おお、俺たち、まだ騎士になったばかりで金があんまなくて……それでつい、給金の多い竜騎士の奴らが羨ましくて……で、出来心だったんです! 勘弁してください!」
「そうなんです! 私も貧乏でつい魔が刺したっていうか……。本当にすみません!」
こいつら身代わりの速さ、やばすぎじゃないかしら。
と思いつつも普通に謝罪してきたことになんだか毒気が抜かされてしまった。
「じゃあ今までカノッサさんから取ってきた金は返しなさいよ? いくら取ったのよ?」
「せ、先月と先々月の二回だけです。合わせて100ジルド銀貨を……」
「すぐ返せんの?」
「そ、それが……」
「だと思った。じゃあカノッサさん、どうする?」
あたしが振るとカノッサさんは、
「……す、少しずつでも、いいので」
と言ったのでそれで丸く収めることにした。
「じゃああんたら、もう二度とこんな真似しないでよ。今回だけは多めに見てやるから」
「え!? そ、それじゃあこのことを殿下には……」
「言わないでいてあげるわよ。その代わり、もしまた同じような素行の悪いことをしていたら、次は許さないわ。わかった?」
「「わかりました、姉御!」」
あ、あねご……!?
「と、とにかくもう二度と悪さするんじゃないわよ? 騎士なんだから清く正しく生きなさい。それにカノッサさんにもきちんと謝りなさい」
「「はい、姉御!!」」
っく、最悪。
「それとその姉御っていうのは……」
「カノッサ、今まで本当にすまなかった!」
「ごめんねカノッサ! お金は必ず返すわ!」
「「それじゃあ俺たちはこれで失礼します!」」
そう言い残し、ガバネロとミランダは逃げるようにその場から走り去って行った。
「……まあ、いっか。カノッサさん、勝手な真似してごめん。でもあたし、ああいうの本当に許せなくて」
「い、いえ、ほ、本当に助かりました。僕の方こそ、今までごめんなさい。ロクに挨拶もしないで……。実はもう竜騎士をやめようと思っていたんです」
「え?」
「ガバネロたちに目をつけられてお金を取られるし、飛竜との相性もそんなに良くないからドラゴンライドもさせてもらえないし……」
「カノッサさんはなんで竜騎士になったの?」
「……ぼ、僕も弱い者の味方になりたいって、思って。竜に乗れれば貧弱な僕でも弱い人たちを守れるかなって……でも、こんな僕じゃダメダメですよね」
「ううん、そんなことないわ。その気持ちだけでも十分に竜騎士としてやっていくに値するとあたしは思うわ」
「……そ、そうでしょうか」
「そうよ! ラルフさんもカノッサさんも、みんな立派だわ! だから、めげずに頑張りましょうよ!」
「は、はい。あの、リアナさんには本当に助けられました。ありがとう、ございます……」
そんな風にしてあたしとカノッサさんはこの件をきっかけに、すっかり打ち解けていったのだった。
●○●○●
「え? 手紙、ですか?」
それから特に何事もなく二週間ほどが過ぎ、あたしもすっかりほとんどの飛竜たちと打ち解け始めた頃。
突然、厩舎小屋にやってきたアヴィン副団長から一通の手紙を手渡された。
「ああ。どうやらキミの故郷のメヴィウス領からのようだ。キミのご両親からではないか?」
「ッ!」
あたしがリンドバーグ家と絶縁し、王宮で働いていることをディセイヤお父様とキャスティお母様には連絡していない。
無駄な心配をかけさせまいと思っていて、そのうち連絡すればいいかなどと気楽に考えていたからだ。
「あたしがリンドバーグと絶縁になったことがバレちゃったのかしら……?」
と、あたしは軽い気持ちで手紙の封を切って内容を確認する。
しかしそこに書いてあった事実はとんでもないことだった。
「んな、なな、何よコレぇ!?」
あたしがあまりに素っ頓狂な声を出したものだからその付近にいたラルフさんとカノッサさんもびっくりして、近寄ってきた。
「ど、どうしたんですかリアナさん!?」
「メヴィウス領が……いえ、メヴィウス家がなくなりそう!」




