第22話 唐突な言葉に、きょどる!
「この大馬鹿者ッ!」
ビクッと、あたしは思わず身体を硬直させた。
殿下はこれまで見せたことのないような表情であたしを睨み、激昂している。
それもそうか。
あたしは殿下の命令なんか完全に無視して、身勝手な真似をしちゃったんだもんね。
さすがの優しい殿下もあたしに呆れたかしら。
「一体どういうつもりだ!?」
「ご、ごめんなさい殿下。命令を無視してしまったあたしのことは好きなように罰を与えてくださってよろしいです」
「そんなことを言っているんじゃない! もう少しでキミは……リアナくんは焼け死ぬところだったんだぞ!?」
「そうですけれど、でもこうするしかなかったです」
「キミがやる必要はなかったと言っているんだ!」
「ですが、そうしなければこの子は助からなかった!」
「キミが行くくらいなら私がやっていた!」
「殿下では赤竜の明確な声までも聞き取れないのよね? だからあたしがやるほかないと思ったの! 殿下だって、あたしならできると最初に言っていたじゃない!」
「ぐ……そ、それはそうだが、それはあくまでキミなら火炎焼けしている飛竜の言うことを聞かせられるという意味で言っただけだ! まさか飛竜の中にまで無謀にも突入してしまうなどとは思ってもいなかったのだ!」
無謀にも、か。
……あたしはふと前世の記憶を思い返してしまう。
「理亜奈、テメェざけてんじゃねーよ!」
「いって!」
あれはまだあたしがレディースのチームに入って一年目の、十六歳の夏の夜のことだ――。
「無謀と勇気を履き違えてんじゃねーぞ! このクソ馬鹿やろう!」
あたしはそんな風に、親友から怒られ、殴られたことがあった。
その理由はあたしの無茶な行動のせいだ。
チーム内の二つ先輩の奴らがあたしの一番の親友である恵梨のバイクをイタズラでわざとオシャカにしやがった。
あたしはそれが許せなくて単身でその先輩ら三人組に喧嘩を吹っかけたのだ。
あたしはそいつら全員をボコボコにして、恵梨の前で頭を下げさせることには成功したが、そうしたら逆に恵梨に怒られたのである。
「あたしがいつ、理亜奈にそいつらをボコしてくれって頼んだんだ!?」
「別にいいだろうが! あたしが勝手にやっただけだ!」
「そうじゃねえ! あたしに話してくれれば良かっただろ!」
「恵梨にまで危険な目に合わせたくなかったんだよ!」
「だからって無謀な真似すんな! そんなのはただの無謀なカッコつけなんだよ! 理亜奈、テメェが逆の立場だったらあたしにも同じように怒んだろうが!?」
「そ、それは……」
「理亜奈! 頼むから仲間を……あたしを信じてくれよ。話してくれよ。頼ってくれよ! ひとりで勝手に無謀な真似はしないでくれよ!」
――そんな風に説教されたことがあったことを、思い返してしまっていたのだ。
「リアナくん。頼む。私のこと、少しは信用してくれないか? そしてキミの考えを私に話してくれないか?」
今、目の前でアルファリオ殿下からも似たようなことを言われている。
「私は本当にキミのことを案じているのだ。無謀なことをする前に必ず私に話して、相談してほしい」
「……うん、ごめん」
あたしは思わず、かつての親友に返した時のように本音の言葉でそう返した。
「……って、ぇ、ええ!?」
すると、殿下があたしをふわり、と優しく抱きしめてきたのである。
「リアナくん。こう見えて私はキミが想像しているよりも、キミのことを気にかけているつもりだ。キミにとってはただの王子かもしれないが、私にとってキミはとても大切な……」
え、ええ!?
きゅ、急に何を言い出すのこの殿下は!?
「ちょーーーーちょちょちょ! ででで、殿下!? んなな、何を仰って……!?」
「聞いてくれリアナくん。私はキミのことが」
と、アルファリオ殿下がそこまで言いかけた時。
「おおーーーい! 殿下ぁー! リアナー! 無事かあー!?」
空の向こうで飛竜に跨っているアヴィン副団長の声が響き渡る。
その瞬間、パッと殿下はあたしから離れた。
「アヴィン副団長か。……思ったよりも早かったな」
殿下は口惜しそうにそう呟きながら手を振っている。
「……リアナくん。キミは私にとって大切なジルドワール王国の民のひとりだ」
アルファリオ殿下はあたしに背を向けて、そう言い直した。
でも、殿下は本当は一体なんて言おうとしていたんだろう。
まさかあたしに……あたしなんかに?
いやいや、そんなまさか。
そんなのないない。
……ない、よね?




