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第21話 ギリギリ瀬戸際ぶっ放す!

 あたしは赤竜の口の中へと強引に入りこんでいった。


 這いつくばれば、人ひとりはなんとか入り込める飛竜の口腔内の広さは圧巻だった。それにラルフさんから事前に聞かされていた通り、ニオイもあまり感じられない。


 ラルフさんの飛竜に関する話によれば、竜族は常に高い新陳代謝と体内の特殊な炎のおかげで口臭がほとんどないらしい。

 糞尿に関してはそれなりに臭うけれど。


「けど、どうしても唾液は凄いわね……」


 べたべたになりながら、飛竜の舌の上を這いつくばって、生々しい肉の壁を奥へと向かって進む。

 何度か足を滑らせながらも、奥へ奥へと進んでいくと、やがていくつかの別れ道が見えてきた。


「確か炎道は食道付近って言ってたわよね。でもこれ、どっちが炎道なのかしら?」


 あたしが困っていると。


『リアナさん、キミがまっすぐ進んで行ったのなら炎道はキミから見て右側の道だよ』


 赤竜がそう教えてくれた。


「そっか、ありがと! それよりあなた、あたしを口に入れても違和感とかないの?」


『うん、全然平気』


「それもそっか。ご飯の時、大きなお肉とかもひと口で丸呑みしちゃうものね」


 なんてことを話していると、肉の道が続く奥の方に何かが窺える。


「あれは……な、何よこれ!? クワじゃない!?」


 道を塞ぐようにクワが横向きになって肉の壁に突き刺さっていたのだ。

 しかもそれも何本も幾重にもなっており、そのせいで色々なものが引っかかっている。


「そうか、わかったわ。この何本ものクワが炎道を塞いでいたのね。しかも横向きに刺さっているから、肉の壁が伸縮できなくなっているわ」


『そっか。それでうまく吐き出せなくなっちゃったんだ』


「……あなた、今度から丸呑みしちゃダメよ。ご飯の時、勢い良く丸呑みばかりするからクワまでたくさん飲み込んじゃったんじゃない」


『あはは……ごめんなさい……』


「さて、今から取り除くけれど、炎は我慢できそう?」


『わからないけれど……やってみるよ』


「お願いね。でないとあたし、死んじゃうから」


 あたしはそう言って、横向きに突き刺さっているクワに手を伸ばす。


『っいっつ!』


 あたしがクワを引っ張ると赤竜が痛みに声をあげた。


「ちょっと我慢して、ね!」


 あたしはまず一本、クワを取り除く。


「大丈夫?」


『うん、なんとか。ちょっとピリッとしたくらい』


「なら良かったわ。続けてクワを抜いていくから、なんとか頑張って炎を我慢してね」


 あたしはそういうと、クワやその他の異物を取り除いていく。


『取り外したクワや異物は食道の方に流してくれれば、詰まらなくなると思う』


「そう、わかったわ」


 あたしはいくつか異物を除去したあと、言われた通り食道に続く道へとそれらを放る。

 そしてクワや異物のほとんどを取り除き、一際大きめなクワが残り最後の一本だけとなった。


「さて、これから最後のクワを外すわね」


『うん、わかった。なんとか堪えてみるけど、リアナさんもすぐに出てきてね』


「もちろん。できるなら生きたまま焼かれたくはないからね」


 あたしは覚悟を決める。


「せぇー、の!」


 あたしは力一杯にクワを引っ張ると、ジュポン! という音と共にクワは抜けた。

 と、同時に肉の壁がグググっと、奇妙な動きと共に伸縮し始めた。


『うっ! や、やばい。思ったより反動がすごい! 思いっきり堪えてみるけどリアナさんも早く出てきて!』


「わかってる! もう逃げてるわ!」


 あたしは来た道を急いで戻る。

 すると、背後から熱気を感じてきた。


『う、う、だ、駄目だ……も、もう吐きそう……』


「ええ!? もうちょっと堪えて!」


『う、ぐ、ぐ……うぇ……』


 これはもう余裕がなさそうだわ。

 あたしは必死に口の出口へと向かって必死にほふく前進を続ける。


「見えた! 外だわ!」


『だ、駄目だ! も、もう堪えきれない!』


 出口はすでに見えている。


「もうちょっと……!」


 足の方からはすでにジリジリと焼けるような熱気が迫ってきた。


『リアナさん、ごめん! 本当に限界!』


 出口は見えているけど、間に合うかどうか。


 こうなったら……。


「赤竜、喉を持ち上げて舌を下げて!」


『わ、わかった!』


「う、お、おおおりゃあああーッ!」


 あたしは赤竜の舌からヘッドスライディングするかのように滑空する。


 そして。


「ぃやったぁーッ! 出れた! 間に合ったわ! さあ赤竜、上よ!」


 あたしが勢いよくスポーン! と赤竜の口から吐き出され、それとほぼ同時に、


『グルァーーアッ!』


 赤竜は叫びながら口をすぐさま上空へと向け、そして盛大に炎を吐き出した。


 ゴォオオオオーッという轟音と共に凄まじい熱量の炎柱が、夕闇の迫り始めた茜色の空に放たれる。

 その炎は本当に凄くて、あたしは思わず見惚れてしまった。


「リアナくんッ!!」


「で、殿下……」


 そんなあたしへと向かってもの凄い剣幕でアルファリオ殿下が駆け寄ってきた。


「無事か、リアナくん!?」


「あ、はい。あたしは全然……」


「この大馬鹿者ッ!」



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