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第16話 変態ではないが、突っ走る!【アルファリオ視点②】

「な、なに? それはまことか!?」


 私は突如訪れた報告にひとつの、微かな予感を感じていた。


 それはとある伯爵家に嫁いだ令嬢の噂話である。


 我が父、エルドラドと旧知の仲であったその伯爵は、我が子の問題について頭を悩ませていた。

 成人したというのに領地経営の勉強など一切せず、ずっと女遊びばかりにあけくれているのだという。


 その息子を落ち着かせる為に、結婚を勧め、そしてようやく結婚したまでは良かったのだが、それでもその息子は女遊びを繰り返した。


 呆れた伯爵はいい加減お灸をすえようと考えていたところ、結婚相手の令嬢が豹変した。


 その様子を見ていた伯爵はすぐにその令嬢の違和感に気づいた。


「その娘が特質系の魔力持ちだというのは本当なのか?」


「はい、殿下。エルドラド陛下とラファエル卿がそのような会話をしておりました」


「その娘がこの宮廷裁判所にくるのだな?」


「はい。なんでも息子のルドルフ様が騒ぎ立てたそうで。しかしラファエル卿はその娘を無罪として欲しいと陛下に陳情しているようです」


「ふむ。ここ数年、特質系の魔力持ちの令嬢は聞いたことがなかったな。その裁判、私も密かに立ち会うとしよう」


 私はこの目で確かめようと考えた。


 そして宮廷裁判所にて、彼女を見たあの日から私はすでに心奪われていた。


 その美しき容姿も去ることながら、裁判所においてもまるで臆することなく威風堂々と構え、そして裁判官に対しても自身の保身など考えず率直な心からの言葉をひと目を憚らずに吐き出す。


『ぁあ? なんだぁテメェ? あたしは今気が立ってんだ。馴れ馴れしく近寄って来てんじゃねーよ!』


 私に初めてリアナ・メヴィウスくんから投げかけられた言葉がそれだった。

 衝撃的な発言に戦慄が走った。


 キッと鋭く睨まれた瞬間、ゾクゾクっときちゃったのだ。


 まさに私の理想通りの女性だった。


 最近、薄っすらとわかってきている。

 私はおそらく、若干のマゾヒストなのだ。


 私にはそういう性癖があるのだ。


 もうこればかりはどうしようもない。私は(かしず)かれるより、蔑まれる方が私の心を揺さぶるのだ!


 ……まあ、それはひとまずおいておき。


 想定外だったのは裁判官のガベルトが、まさかの判決を出しそうになったことだ。


 本来の予定ではラファエル卿が我が父に依頼したのは、その令嬢の判決を無罪とするように宮廷貴族らへと話が通っていたはずなのに、何故かガベルトは彼女に極刑をくだそうとした。


 なので彼女は私が奪い去った。


 後でガベルトに話を聞いたところ、どうやらラファエル卿からは「彼女の言葉と態度を見て、正しく裁いて欲しい」という風に伝令がなされていたようで、リアナくんのあの態度を見てガベルト裁判官は彼女の方が悪と勝手に判断してしまったようだ。


 まあ、それはある意味当然ではあるのだが。


「んで、あんたはなんなのさ?」


 リアナくんを無事奪い去った私は彼女に名を名乗り、王子であることも明かした。


 が、それにもかかわらず彼女の態度は全く変わらない。その強気な姿勢に私は惹かれていた。


 言っておくが私は変態ではない。

 

 私は芯の通った女性が好きなだけなのである。


 そうして彼女に出会い、彼女を黒竜に合わせてみたところ想像以上の結果となった。


 まさか、あの黒竜と意思疎通できるだけでなく言葉まで理解できると彼女は言った。


 私はこの時、本当に跪いて竜の神様に感謝しようと思ったくらい心が踊った。


「竜騎士団になってほしい。この通りだ」 


 この時、私は久方ぶりに他者へと頭を下げた。

 これは言うなれば、むしろ求婚だ。


 彼女を私の妻にしたかった。その為の竜騎士団への勧誘でもあった。


 彼女は戸惑いながらも了承してくれた。


 それから私はことあるごとに、陰ながら彼女を見守っていた。


 副団長のアヴィンの話ではどうやら馬に乗れなかった為、まずは竜騎士見習い作業から任せたと言っていたので少し心配だった。


 そうしたら勘違いした団員の数名が、なんと彼女を襲っているではないか。


 竜騎士団は人手不足だ。

 多少性格や人間性に難があろうと、ある程度は許容してしまっている。


 その弊害で彼女をあんな目に合わせてしまった。


 だから私は決めた。


 彼女を振り向かせる為に、私は身近なところから彼女を見守る、と。


 心持ちの強い彼女のことだ。もしかしたら私からのフォローや援助を煩わしく思うこともあるかもしれない。

 なんなら私を罵倒するかもしれない。

 ビンタされちゃうかもしれない。


 だがそれはそれで、ごほう……いや、私との距離感が縮まっていると考えられるのでオッケーだろう。


 うむ。


 大事なことなので重ねて言う。私は変態ではない。



 そんなわけで私は王太子としての執務など、多少捨て置いてでも彼女を攻略することに決めたのである。


 

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