27 【大失恋】
聖都ヤシュロク。ここでは朝夕2回、鐘が鳴らされていた。僕がふくれっ面で勇者様を睨みつけていたのは、夕方の鐘が鳴らされた時のことだった。
「何なんですか、これは?」
「しゅ、修道服」
勇者様は僕が着ていた服の名称をそのまま口にした。もちろん僕が聞きたかったのは、そういう事ではなかった。
「そうじゃなくて、どうして僕が、こんな格好をしなくちゃならないんですか?」
「アリーには修道女として、ここで……暮らしてもらおうと思って」
ここでようやく勇者様は聖都までやって来た目的を明かした。僕はそれまで彼と過ごしてきた日々を頭の中でグルグルと回想しながら、彼がどこかでそんなことを少しでも口にしたか考えていた。記憶の限りを尽くしても、彼は絶対にそんな説明をしていなかった。
「聞いてないです。本気ですか?」
「……うん」
彼は目を合わせないで答えた。
「僕の気持ちは……どうなるんですか?」
「心配しなくても、大丈夫だぁ。ここなら安全だし、雨風も凌げて、ご飯だって」
「違いますよ!! そんなの、僕には何の価値もありません!! もうそういうの、やめてください!! 本当は、わかってますよね!? 僕の……本当の、気持ちが」
彼に心を奪われて1年が経とうとしていた。その間にいくら行動を起こしても、彼が1度もかけてくれなかった言葉を僕は求めた。
「……」
「なんで……どうして、何も言ってくれないんですか? 言ってくださいよ、僕の答えは決まっていますから。こんな……こんな服、僕には似合いません。ノト君だって、知っているでしょう? 僕みたいな女が、そんな生活を送れるわけがないじゃないですか……」
「……ごめん」
僕の魂の叫びもむなしく、勇者様はそれだけ言って部屋から出て行ってしまった。
わけがわからなかった。相思相愛だと思っていた彼に振られたショックで、僕は泣きながらその場にへたり込んだ。
「その……わかってやってくれ」
僕たちがいた部屋にはハンスさんもいた。とても失礼な言い方になるけれど、当時の僕の視界には、それまで彼の姿がまったく入っていなかった。
「出ていってください」
これも失礼な態度だった。だけど、この時の僕は誰とも一緒にいたくなかった。ハンスさんは小さく深呼吸をして、僕の失礼な要求に応じてくれた。
「その服、自分で思ってるよりも似合ってるよ」
僕にとって最悪な誉め言葉をかけてハンスさんも部屋を出て行った。修道服に身を包んだ僕は、勇者様に与えられたゴージャスな部屋の中で三日三晩泣き明かした。




