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第百十一話

 「全員集合とは、壮観だな」


 取り囲まれたギースは額に汗を浮べながらそう言った。

 それは彼が初めて余裕が消えた瞬間。


 「もう逃げられると思うなよ。お前にはたっぷりとお返しをしてやる」

 

 「エルフリーナの仇だ」


 「裏切りの代価を」


 その場にいる全員がギースに対して殺意を向けていた。


 「だがいいのか?俺だけに構っていて」


 彼が視線を向ける先にいるのはゆらりと幽鬼の如く迫りくるキマイラの群れ、


 それに…


 「奴らを黙らせろ!!撃て!!」


 銃火器で武装し隊長の指揮で突撃するサマラス兵達がいた。

 再びキマイラ達がいる場所が銃弾と砲声につつまれる。


 「じゃあな。間抜け共」


 「待て!貴様ァッ!!」


 「危ないですキマイラさん!」


 どさくさ紛れに走って逃げるギース。

 魔術を使って身体能力を上げ、あっという間に見えなくなってしまった。


 「クソッ!また逃がした!」


 「追え。今ならまだ間に合う。雑魚は私に任せろ」


 名乗り出たのはエイラだ。

 迫り来るキマイラ達に向かって、炎の弾を多数展開しだした。


 「恩にきる」


 「キマイラ!」


 そう言って走り出そうとした瞬間、エイラに呼び止められた。


 「なんだ?」


 顔だけ向ける。


 「…恨み。晴らしてこい」


 「ああ」






 「クソ!クソ!どうしてこうなった!?あれはベルガー家最強の兵器じゃないのか!?」


 木陰から戦場を見守るベッファがいた。

 悔しさを表すように地団駄を踏みながら、砲声鳴り響く場所を見つめている。


 (ギースの野郎!あいつさえ居なければ!)


 ベッファの怒りの元は主にギースへ向けられているもの。

 突然現れた彼がキマイラの群れの大半を殺してしまったのだ。

 怒りのあまりベッファは近くにあった木を殴りつけ、痛みに悶えた。


 「な、なんだ?」


 「よう糞野郎」


 不意に背後に人の気配を感じ振り向いた瞬間、頬を殴られ思わずその場に倒れ込むベッファ。


 「ぎ、ギース!?なぜここに!?」


 情けなく地べたを這いながら見上げると、そこには黒髪の青年、ギースがいた。

 挑発的な笑みを浮かべながら、彼を見下ろしている。


 「ひっ!?た、助け…」


 耳を貸すことなく、ギースは彼の腹に短剣を突き立てた。


 「がああッ痛い、痛いい」


 「安心しろ大事な血管を切ったからな。致命傷だ」


 「は、はは…舐めるな。こんな傷回復魔術で…」


 「出来るかな?」


 ベッファは急いで自分の腹に突き立った短剣を抜き、回復の魔術をかけようとする。

 だが…


 「ッ!?な、何故だ!効かない!?」


 「魔術を阻害する術式を組み込んである。そんなものいくらかけようが無駄だ」


 「助けてくれ…」


 「一人だけ解除できる奴がいたな」


 「だ、誰だ?」


 情けなくギースに縋りつくベッファ。


 「エルフリーナ・ベルガー…ああ、もう死んでいたか」


 「そ、そん……な…」


 「あばよ。地獄に落ちな」


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