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第百五話

 「後ろに回り込むぞ」


 「はい!」


 サマラス軍の後方まで飛んだキマイラ達、翼を折りたたんだ二人はすさまじい速度で落下しながら変化をしていく。


 「司令官は何処だ!!」


 「戦闘を止めなさい。この行為に意味は無い」


 地上に降り立った巨大な獅子と半人半蛇の魔人はサマラス兵達に呼びかけた。

 その威容な姿に、兵士たちは恐れながらも抵抗する意思を見せた。

 二人目掛けて銃を撃ち、大砲の弾を浴びせようとする。


 「…駄目のようです。私は三号兵器を片付けます。貴方は人間を止めてください」


 「ああ」


 残念そうにそう言うとテュポーンは敵のキマイラ目掛け突進。


 「止まらんというなら…仕方ない」


 開かれた巨大な口から霧状にした毒を吐き、人間達を攻撃するキマイラ。

 浴びた者は血を吐き体を溶かし、苦悶の表情を浮べながら息絶えた。

 だがサマラス兵達も、黙ってみているだけではない。

 

 「ガァッ!?」


 大砲の弾が毒霧を抜けて飛来、彼に直撃し下顎が吹き飛んだ。


 (人間の武器で俺の身体に傷を付けるか)


 内心驚きつつ、出来る限り狙いが付けにくくなるように縦横無尽に動き回り毒霧を吐き続ける。

 だが…


 (来たか…)


 自分と同じ姿をした人間…いや人間に見える者達が現れる。

 本から生み出された、自分と同じ名を冠する存在、三号兵器…

 キマイラの群れ。


 「お前達には俺の毒は効かないか」


 「…………」


 「言葉は喋れないみたいだな」


 皮肉を込めてそう言った。


 「ガァアアアアアアッ!!」


 獣のように吠えながら変化し、猛進してきた。


 (下顎が無い状態でどこまでやれるか…)


 キマイラはすぐに無数の彼らに囲まれ、攻撃を受けた。


 「生まれたばかりの赤ん坊に、負けてたまるか!!」


 爪で目を潰し、腹を裂き、繰り出される攻撃を避けていく。


 (おかしい…)


 戦っている最中、キマイラの頭の中で疑問が生まれた。

 敵が脆すぎるのだ。


 「ガ………ヒュッ…」


 腕を千切られて倒れている者、殴り倒されて、そのまま起き上がらない者など様々だがキマイラ自身はこうなったとしても逃げたりあるいは無理やり体を動かすこともできる。

 例外ももちろんある、メリザンドに攻撃された時などがいい例、雷によって体が痺れたりするときなどだ。

 

 「俺と同じ体にも関わらず、力も耐久力も劣るのはどういうことだ…」


 「生まれたばかりだから…だろうな」


 「…ッ!?」


 ひどく小さく低い声が聞こえた。

 銃声響く戦場の只中であっても、彼にはとてもよく聞こえた。

 何故か?


 「貴様…」


 戦うのを止めて立ち止まり、敵に攻撃されながらも彼はある一点に視線が釘付けになった。


 「ギース……」


 「やあ、久しぶりだな」


 銃弾飛び交う戦場の中心で、微笑みながらその男は佇んでいた。

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